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二度と見られないの? 1台で3種類の乗り方が楽しめるカラクリジェット BRP SEA-DOO(シードゥ)「3D」を覚えていますか? ジェットスキー(水上バイク)

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シードゥ唯一のスタンドアップ「3D」は、時代を先取りしすぎたモデルだった

誰でも立って乗る楽しさを味わえる、スポーツクラスの大きさを持った船体

皆さんは、「SEA-DOO 3D(スリーディー)」という機種を覚えているだろうか。BRP社が発売した1人乗りモデルで、今から17年前の2005年に発売開始され、2008年に国内販売が終了した。特異な形状ということもあり短命に終わったが、実にシードゥらしい遊び心に満ちた水上バイク(以下、ジェット)だった。
オプションも入れれば1台で5パターンの乗り方があったが、当時は「1台で3つのモードが楽しめる」というのが謳い文句だった。さまざまなギミックが付いているので「カラクリジェット」ともいわれた。

確か国内で販売されたのは、スタンドアップタイプの「バートモード」、ハンドルポールからシートが出る「モトモード」、付属のシートを装着する「カートモード」の3パターン。もともとオプション装備だった「ニーモード」と「ショックモード」は、最初から導入されなかったと記憶している。

なぜ、今ごろになって「3D」を思い出したかというと、2021年のニューモデル「RXP-X 300」が、3D以来の1人乗りだからだ。せっかくなので、今の時代なら絶対に作られることのない、シードゥの遊び心満載の「カラクリジェット」を紹介したいと思った次第である。

カラクリジェットの全モードを大紹介

バートモード(VERT Mode)

いわゆるスタンドアップ。アンダーハルがランナバウトのXPなので、想像以上に安定している。ハンドルポールも上下するし、「立ち乗り気分」も味わえる。しかし、スタンドアップと呼ぶには、あまりにもデカかった。


モトモード(MOTO Mode)

椅子に腰かけて乗る「MOTO Mode(モトモード)」。シートはハンドルポールの中に収納され、必要に応じて引っ張り出す。モトクロスバイクを彷彿させるライディングポジションだった。今から考えれば、これがスパークの原型なのかも知れない。試乗会では見るが、普段、このモードで乗る人はあまり見かけなかった。
ちなみにWJS編集部の女性スタッフは、取材でこのモードで釣りに行き、相模湾で転覆。カメラを水没させて大騒ぎになったことがある。重心が高いので、転びやすかったのだ。


カートモード(KART Mode)

試乗会では、最も人気があったのがこのモード。低い目線がゴーカートに乗っているようで、個人的には好きだった。ただ、あまりにも水面に近いせいか、船体形状のせいか分からないが、走行中にバチャバチャと顔に水がかかり続けるのが難点だった。シートは座り心地が良いので、取り外して、砂浜に置いて座っている人もいた。今から15年も前にこのシートを考案したBRPは、とても先見性があると思った。


国内未発売・ニーモード(KNEE Mode)

小さなシートに腰かけて、立ち膝で乗るタイプ。アメリカの試乗会で、乗ってる姿が一番格好悪いのもこれだった。どう見ても正座……。水の上を正座で走るのは、ちょっといただけない。


国内未発売・ショックモード(SHOQ Mode)

X-2のように、ハンドルが固定される。スタンドアップの場合、ハンドルを固定したほうがライディングが楽だ。だが「このジェットで、それは必要なの?」 と聞かれたら、明確な答えはないと思う。ハンドル固定だったら、モトモードだけで良かったのでは……と思う謎モード。


2004年のワールドファイナルの会場で、華々しくお披露目された「3D」

異端の発想がジェットの歴史を変える

3Dの発売前年(2004年)、ワールドファイナルの会場で、ライダーに向けて試乗会の時間を設けていた。世界のトップライダーたちが楽しそうに乗っている写真も残っている。

何パターンもの乗り方ができ、遊びの可能性に満ち溢れ、業界の期待を一身に集めてド派手なデビューを果たした3D。結果的にセールス的に振るわず、わずか4年の短命に終わった。

しかし私は、BRPのチャレンジ精神に脱帽する。「ジェット」という乗り物の固定観念にとらわれず、自由な発想で、ひたすらファントゥライドに答えようとする姿勢には、尊敬の念しかない。

発売当時も、3人乗りランナバウトしか売れないと言われていた時代だ。そこに1人乗りの3Dを投入するという選択肢は、なかなか出来ることではない。いずれにせよ、バリエーションが増えたことは素直に感心していた。5つのモードを考えた、シードゥのデザイナーの発想力が素晴らしいと今でも思う。

シードゥのマーケティングが編み出した、ランナバウト時代の「次の一手」と期待された。


何がウケるか、やってみなければ分からないというチャレンジ精神

この3Dと、この後に登場するサスペンション付きランナバウト「iS」シリーズは、発売当時は「画期的」といわれた。だが今となっては、不評なモデルというレッテルを貼られている。

しかし、同じく「画期的」と言われた、業界初のブレーキ&リバース「iBR」システムは、今や業界のスタンダードとなっている。セールス的に大ヒットするものもあれば、大失敗もある。それでも挑戦してみないと、何がいいか悪いのか分からないままだ。

そのおかげで、この後に発売され、世界的な大ヒットとなった「スパーク」には3Dの経験が生かされていると思う。

ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授の言葉に「9回失敗しないと、なかなか1回の成功が手に入らない」というのがある。大ヒットした機種の貯金は少ないが、大失敗から得られる 利益は無尽蔵ということかもしれない。

2006年ごろは、よく3Dに乗ってツーリングに出かけた。(横浜みなとみらい前)

最高速競争をしない限り、ランナバウトと一緒にツーリングに行っても、十分に一緒に走れた。(2006年撮影)


カラクリジェット「3D」は、本当に失敗作だったのか!?

発売前、世間の期待値だけが爆上がりしてしまった悲劇のモデル

セールス的には振るわなかったが、「3D」というジェットは失敗作だったのか!? と聞かれたら、私はそんなことはないと思う。何度か3Dでツーリングに出かけたが、楽しかった思い出しかない。

だが、編集部で3Dの話題が出ると、ネガティブな意見が多いのも事実だ。その最大の原因が「期待」であった。
ランナバウト「XP」のハルを使い、大きな安定性のあるスタイル。機能も申し分なく、乗り方が何パターンもあるわけだから、3Dくらい乗る前に、ユーザーやショップあらゆるジェット関係者に、多くの期待を抱かせたジェットはなかった。

当時のスタンドアップ、スーパージェットや800SX-Rといったバリバリの立ち乗りには乗れなくても、3Dならすぐに乗れるのでは? と期待した人も多かった。

さらに、800SX-Rが80馬力だったのに対し、3Dは110馬力(DIモデルに至っては130馬力)と、かなりのハイパワー。スタンドアップに乗れる人にしてみれば、「史上最速の立ち乗りか!?」と、ワクワクして発売を待っていたに違いない。
結果的にこの3Dは、皆の勝手な期待を数多く背負い過ぎてしまったのだ。前評判や、遊びのバリエーションの多さゆえに起こった不幸ともいえる。

発売後、スタンドアップに乗れる人からは、「こんなに安定感はいらない」と言われた。
乗れない人からは、「もっと安定してると思った。転ばず、安心して楽しめると思ったのに、バランスを崩すと結構転ぶ……」と言われる始末だった。

発売前と後でこんなに評価が変わったジェットは、後にも先にも3Dくらいだろう。多くのユーザーが「自分のためにあるようなジェット」と思い、期待値だけがグングン上がった末の悲劇だ。

BRPの挑戦的モデル「3D」が、「時代を先取りしすぎた」のか、「全く違う方向に突っ走っていた」のかは、今でも分からない。しかし、もう2度と現れるモデルでないことだけは確かだ。

3Dを「ゆるいジェット」と言う人は多いが、当時、フラッグシップと一緒に3Dでロングツーリングに出かけていた私は、スピードは出るし、ものすごい勢いで走って、荒れた海で吹っ飛んだ楽しい思い出しかない。今のテクノロジーでエンジンパワーや船体形状を改良して、新たな3Dが発売されることを切に願う。「もう1度、乗ってみたい」と、今さらながらに思っている機種である。

水路のようにアクセル全開で走れない場所は、3Dでも十分だった。(2006年撮影)

水に近いので、こうやって休憩していても気持ちがいい。(2006年撮影)

大きな声では言えないが、多分、編集部ほど「3D」で長距離を走った者はいないだろうと自負している。日本全国の海で、フラッグシップと一緒に長距離ツーリングを行った。その後に発売されたスパークでも同様にフラッグシップとツーリングに出かけたが、3Dのほうが数倍キツかった。海が荒れるたびに飛んでいたのも、今となっては楽しい思い出だ。

「3Dは、スポーツか?」と聞かれれば、少しラグジュアリーに寄り過ぎ。「快適か?」と聞かれれば、少しシンドかった。要するに中途半端だったのだ。

その反省を生かし、エンジンを1,630ccにして、船底を今のRXP-Xに採用されている「T3-Rハル」を装着したら、大ブレイクするかもしれない。そんな最強スペックのジェットができたらと考えるだけでワクワクする。その前に、過激すぎて乗れるのかな? とも思うが、そんな3Dができたら、ぜひとも乗ってみたいものである!


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