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生き残れるのか…? 国から史上初のペナルティーを受けた「データ不正問題の日野自動車」企業としての存続が危うい状況に、経営陣が辞めただけで終わりなら、永久に問題は解決しない!

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「日野自動車・データ不正問題」とは。不正が発覚した理由・北米の「法規に対応できていない」

日野自動車の日本市場向け車両用エンジンの認証申請で、排出ガスおよび燃費性能を偽っていたことが今月初旬に発覚した。データの改ざんは少なくとも「2003年から行われていた」と発表している。
約20年前から不正行為が行われていたため、対象となる台数は累計7万6694台にも及んでいる。

さらに8月22日、データ不正が行われていたのは、同社が現在生産する“すべてのエンジン機種”に拡大された。このため、大半の車種が国内での販売を停止する異例の事態となっている。
今回の問題が発覚したのは、外部調査や内部告発ではなく、日野自動車の「社内調査」によるものだという。

2018年11月に、北米市場向けのエンジンがアメリカの法規に対応できていないことが発覚したため、社内で調査を開始した。
その調査対象を「日本市場の現行エンジン」にまで広げたことで、今回の不正が明るみに出たのだ。

メーカーにとっては死活問題! 厳罰ともいえる「型式指定の取消し処分」

日野自動車の「エンジン試験における不正」が明らかとなったのは今年3月4日のこと。同月29日には、国土交通省によって該当する車種の「型式指定の取消し処分」が下された。

「型式指定」とは、大企業が製造する量産車が、ナンバーをつけるたびに一台ごとに“車検”や“排ガスの検査”を受けなくてもいいように、「型式指定」によって保安基準を満たしていることを証明しているものである。

日野自動車は「型式指定の取消し処分」を受け、当面は新型車の販売が出来なくなった。 当面、トヨタ製エンジンを搭載した小型トラックや海外向けなどを除き、国内生産の約6割、国内販売の99%を停止するとの見通しを示している。

「型式指定の取消し処分」は、実質、クルマが量産できないこと

今回問題となっているのは2トンクラスのトラックに搭載するエンジンで、トヨタ製のエンジンを搭載している1.5トンクラスのトラックや、いすゞ自動車との合弁で手掛ける日野ブランドのバスなどは継続販売するという。

この影響で、昨年度の連結決算で純損益が847億円と、過去最大の赤字になった。不正のあった車種の出荷再開が見通せないため、今期の業績予想は開示していない。
今の最大の問題は、「生産を再開できる見通し」が立たないことである。

今回のように、「型式指定」を取り消されてしまった車種は、仮に量産したとしても今まで通りには登録ができない。一台一台、個別に排ガス検査を受け、車検を通す必要がある。
「型式指定の取消し」は、事実上、「量産・販売」が出来なくなるという意味なのだ。
「型式指定の取消し処分」は、日本で初となる厳しい処分だ。

法律を改正させるきっかけとなった「2016年の三菱自動車のデータ改ざん」事件

自動車業界のデータ改ざん事件は、過去にもいくつもある。
最近の大きなものでは、三菱自動車の事件だろう。

2016年4月、三菱自動車が軽自動車4車種の燃費試験に使うデータを、「燃費を実際より良く見せる」ため、恣意的に改ざんしていたことが明らかになった。これによって経営陣が退陣するなど、世間的にもかなり大きな事件となった。

不正が発覚するまでは、国は「メーカーの申告する数値は正しい」という“性善説”で対応していたが、この不祥事のあと、道路運送車両法が改正された。
『自動車の量産に必要な「型式指定」の審査で、メーカーが不正をした際の罰則強化』が柱で、燃費データの改ざんなどの不正があった場合、「当該車種の型式を取り消す」ことが新たに追加された。
生産停止処分に加え、メーカーへの罰金も最大で2億円に引き上げた。経営者らに対する懲役刑も導入する内容が盛り込まれている。

生産を再開するには、「型式」を取り直す必要があので、メーカーにとっては、かなり厳しい処分となる。

日野自動車の存続の危機か?

日野自動車は、排出ガス劣化耐久試験に関して不正行為が判明したエンジンを搭載するすべての製品の「出荷を停止する」と発表した。

他社のエンジンを搭載した自動車を作るにしても、再認証が取れるまでには最低でも半年以上は必要だ。
2021年度の年間売上が1兆4984億4200万円。国内販売車種の99%を停止するのだから、国内販売の数字が丸一年以上なくなる計算となる。
その間も、従業員の人件費や設備費、維持費などの必要経費はかかる。従業員数3万3850人分の給料を払い続けることになるのだから、それだけでも莫大な赤字となるはずだ。

純資産4000億円といわれているが、主力事業であるトラックの販売がいつ再開できるか分からない今、会社の存続が危ぶまれる可能性は十分にあるのではないだろうか。
現段階では全く先が見えない状況だ。

日野自動車は「トヨタ自動車」の子会社となっている

32001年、日野自動車は、第三者割当増資を引き受ける形で、50.14%の株式を所有するトヨタ自動車の子会社となった。
トヨタ自動車の子会社になって、役員の多くはトヨタ自動車から出向することから「トヨタの天下り先」と揶揄されることもあったという。社長の小木曽氏も、トヨタ自動車出身だ。

今回の不正問題について、親会社であるトヨタ自動車は「キャッシュフローを含めて、日野自が経営的にどこまで厳しいのか、トヨタとしてはまだ把握していない」とした上で、「関係者の理解を得ながら、まずは日野自動車が自ら再建策について考えていく必要がある」との考えを示した。

株主からも厳しい意見

6月に行われた定時株主総会の冒頭で、エンジンの排出ガスや燃費性能のデータ改ざん問題について「多大なご迷惑とご心配をおかけし、心より深くおわび申し上げる」と同社小木曽社長が陳謝した。

総会には、前年の3倍以上の127人が出席。総会開始前からやじが飛び、一部の株主からは小木曽氏らに怒声が飛んだ。昨年は1時間で終わった総会も、今回は質問も多かったため2倍の2時間7分となった。

国内販売の3割を占める大型トラックで出荷再開が見通せないことなどから、日野自動車の株価は不正公表前から4割安い600円台で低迷が続く。

具体的な出荷再開時期を問う質問に対しては「まだ見通せず申し訳ない」と述べ、「型式指定を再取得した後に、工場ではすぐ車両の組み立てに着手できる状態だ」とも説明している。

総会に出席した株主からは「今後の見通しを聞くために足を運んだが、今期業績について具体的な説明はなかった」「早く信頼を回復して正常な生産体制に戻ってほしい」「期末配当が無配となった責任も大きい」「トヨタ自動車の連結子会社になったが、トヨタ流の品質管理が根付かなかった。不正を機に今一度、品質が最優先のものづくりをすべきだ」など、厳しい声も聞かれた。

エンジンの排出ガスや燃費性能のデータ改ざんの原因については「夏ごろに(特別調査委員会の報告が)いただける」と説明している。
経営陣が退陣して、なんとなくうやむやのまま終わりにしてほしくない。「経営としての責任は重い。責任の所在を明らかにし、厳正に対処する」と言った小木曽社長の言葉通り、とことん「原因の究明」をしてほしい。経営陣の「本気と覚悟」が問われる。

商用事業会社「CJPT」から、日野自動車を除名

また8月24日、トヨタ自動車、日野自動車、いすゞ自動車、スズキ、ダイハツ工業が共同出資する商用事業会社のCommercial Japan Partnership Technologies(CJPT)から、日野自動車を除名すると発表した。
同社の不正は「CJPTが共有する思いや目指す道と相いれないもの」として、トヨタ社長の豊田章男氏からの指摘もあり、除名に至ったという。

豊田氏は「日野自が起こした認証試験不正は、顧客をはじめ全てのステークホルダーの信頼を大きく損なうもの。同社の親会社、株主として、極めて残念。長期間にわたって不正を続けてきた同社は(自動車産業に関わる)550万人の仲間として認めてもらえない状況にある。CJPTは日本のCASE技術をベースに皆で未来をつくるプロジェクトだが、現状では日野自がいることで迷惑をかけると考え、除名するのが適当と判断した」とのコメントを発表した。

責任はトップにあるが「辞めたら終わり」では、そこから先の責任は追及できない

今回の「日野自動車のデータ不正問題」のニュースを調べていくと、「パワハラ体質の企業で、上にモノが言えない」という風潮があったそうだ。最終的には「エンジンのテストをする部門が悪い」ということも書かれている。
しかし、一部の部署の不正だけで、これほどの企業が存続の危機に追い込まれることなど、あってはならないのではないだろうか。

もちろん、最終的な責任はトップにある。しかし、小木曽社長は昨年末に就任したばかり。2017年~2020年まで代表取締役、2021年から会長となった下義生氏は、株主総会の終了をもって退任した。

株主にとって、「日野自動車」の資産価値は「風前の灯」といわれても不思議ではない。誰に責任を追及すれば良いのかすら分かりにくい状況になっている。
親会社であるトヨタ自動車は、しっかりと「立ち直って欲しい」と、いかにも「別会社」といわんばかりの突き放したコメントをしている。
しかしアメリカでは、日野自動車とトヨタを「同じ法人」と捉えて両社に損害賠償の請求をしている。
責任の所在が明らかにならない限り、本当の解決にはならないと思う。

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