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  3. 20歳の夏 【第4回】片野丈一郎・最大の理解者

写真左:片野丈一郎選手、右:父・宣之氏。

第4回 片野丈一郎 「偉大な父の存在」

世界タイトルを目指して、挑戦を続ける片野丈一郎選手。現在、「プロスポーツGPクラス」というクラスに参戦している。片野選手を語るうえで、絶対に外せない存在が、父・宣之氏である。宣之氏は、1998年からスポーツクラスに参戦する現役ライダーだ。

現在、45歳。ジェットスポーツの世界では、技術、経験ともに、脂がのった世代である。宣之氏自身が「世界を獲りたい」と挑戦し続け、まだこれから獲れる可能性があるにもかかわらず、息子である丈一郎選手にその夢を託した。自身が息子の全面サポートにまわることを選択した。今回、宣之氏にその理由と、息子である「レーサー・片野丈一郎選手」について語ってもらった。

WJS 宣之さん自身も現役のレーサーで、もともと、宣之さんがタイで行われるキングスカップに出場して、タイトル獲得を目指していましたよね?
片野(父) はい。自分は「キングスカップで表彰台に上がる」ことを目標に、ずっとチャレンジしてきたのです。で、結局、4番が最高位でした。
WJS まだまだご自身がレースに出てもいいのに、どうして丈一郎選手のサポートにまわることにしたのですか?
片野(父) 2年前、キングスカップで、マシンが壊れました。メインメカニックの藤江さんに見てもらわないとどうしようもない状況でした。しかし、藤江さんが他にたくさんのライダーを担当していたので、自分のマシンを修理する時間がなかった。そのときに「俺、ここまできて何やってんだろう」と、テンションがすごく下がりました。根本的に、原因を考えるとライダー、マシン製作、ホテルの手配から、航空券の手配、エントリー、他のサポートの面倒や段取りなど、いろいろありますよね。以前は、ライダーをやりながら、全部、自分でやっていたんです。二度とこんな思いをしたくない。

WJS 海外のレースは大変ですね。キングスカップに行くにしても、すごく費用がかかるのではないですか?
片野(父) かかりますね。去年、マシンを2台運んで、荷物を積んで、コンテナの運搬費でだいたい30万くらい。それに、メカニック、サポート、自分らの分もあるので、それで50万くらい。最低100万円はいりますね。
WJS 何人で行くんですか?
片野(父) ライダー1人に対して、メカ2人、ホルダー2人、5~6人ですね。
WJS それだと、100万円じゃきかないですよね?
片野(父) メシ代とか入れずに、最低100万。
WJS 総額200万円くらいはいきそうですね?
片野(父) 自分とジョーが2人ともレーサーで参戦すると、この状況は変わらない。藤江さんには、根本的なマシンの製作をやってもらい、あとのメンテナンスや細かいことは自分がやる。そういう環境にすれば、こんな思いをせずにすむ。だから、ジョーにレーサーとしての夢の全てを託して、自分がサポートや環境整備にまわることにしました。

WJS 20年近く、追いかけてきた夢なのに、いくら大事な息子とはいえ、ずいぶん思い切った決断をしましたね。
片野(父) 彼は、ライダーとしてのセンスがあります。あとは経験値を増やすことでトップに上り詰めることができると思っています。それにはまず、レース環境を整えてあげること。自分が苦労しましたので、レースに専念させてあげたいと思いました。

WJS 宣之さんご自身がライダーだから、センスがあるかどうか、余計に分かるのですね。丈一郎選手のどんなところが一番そう思いますか?
片野(父) ジョーは、単車も好きで、エンジン系のものに大変興味があるっていうことがひとつ。もうひとつは、若いのに考えて走っている。勝てなかったときに「なんで勝てないんだろう」って。理由を自分なりに追及して、走り方に問題があると考えれば、「じゃあ、今度は前を抑えて前荷重にしてみよう」とか、「後ろ荷重にして乗ってみようか」とか、ずっとスタート練習をしたり、速いライダーの走り方を研究したりとかしています。結構、考えて走っているんですよ。そんなジョーを見ていて、2年ほど前から「彼に託そう」と決めていたのです。
WJS 若いので、どんどん成長される姿が分かるのですね。
片野(父) そうですね。海外のレースに出だしてから、すごく変わりました。去年から中国のレースに行ったり、タイのキングスカップに出て、「もう、負けたくない」みたいに、ごろっと変わりましたね。そこに行く人間なら、誰でも勝ちたいと思う。では、勝つためにどうしようかって考えたとき、環境が一番大事になってくるんで、それを僕が整えてあげようと思いました。
WJS 彼の「勝ちたい」という気持ちを、一番、感じているのが父である宣之さんなのですね。

(第5回 「HXに対するこだわり」へ続く)

 

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