本物のレース艇に乗せてくれるというけれど、嬉しさ半分、怖さ半分……。
「藤江さん、本当に乗っていいの?(編集部A)」。
「絶対壊れないから、好きなだけ走っていいよ。ただし、アクセルを緩めちゃダメだよ(藤江)」
今回は、「番外編」。編集部AのHX試乗体験記です。乗る前に、片野丈一郎選手から、「とても乗りやすい」と聞いていました。片野選手のマシンにまたがると、エンジンをかける前から、心臓がバクバクと音を立てているのが分かりました。
一流のコンストラクターが、精魂込めて造ったマシンというのは、何ともいえないオーラがあります。私ごときが言うのも不謹慎ではありますが、言いようのない快適さを感じます。アクセルレバーを握ったときの感覚は、「本物」以外のナニモノでもありません。
スタートした瞬間、思いました。「イケる! 平気だ」と。この4ストローク1,500ccの爽やかなエンジンサウンドに包まれ、気が付いたらずっとアクセル全開で走っていました。
速いのに、全く怖さを感じません。理由は、思い通りに走れるからです。アクセルレスポンスの良さも、ノーマル艇とは比べものになりません。
特筆すべきは、コーナリング性能です。SEA-DOO RXP-X 300と同じようにバンクして、簡単に曲がれます。もう少し言えば、船体が小さい分、このHXのほうが簡単です。試しに、船体をバンクさせず、下半身で踏ん張って水平のまま曲がってみると、簡単にスパッと曲がれました。
これ楽しい。片野選手の本番艇だから、すぐに返さなければならないのですが、壊れそうな気配がみじんも感じられない。ついつい、時間を忘れて堪能しました。
大興奮で戻ってくると、私(編集部A)の顔を見た片野選手が大笑い。私の心の内が、手に取るように分かるのでしょう。
私(編集部A)が感激の声を上げるたびに、我が事のように喜ぶ2人。
褒めているのはマシンなのに、自分が褒められるよりも嬉しそうな藤江氏と片野選手。
このマシンに難点があるとすれば、コーナリング時、水しぶきが顔に直撃すること。曲がっている最中、バシャバシャバシャと、ずっと水しぶきを浴び続けるので不快です。
そのことを、藤江氏と片野選手に言うと、「しぶきを浴びながらでも、ギリで視界は確保できる。すぐにスパッと曲がれるから良いでしょう」と、まともに取り合ってもらえなかった。彼らには、「快適さ」より「旋回性能」のほうが大切なのだと知り、改めてレーサーという生き物を不思議に感じました。
ずっと「楽しい、乗りやすい、楽」と言い続けていると、片野選手がだんだん不機嫌になって、「波が出たら、大変な思いをするんです」と、たしなめられた。
シリーズ20歳の夏 第1回「ジェットスキーに懸ける青春」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第2回「世界と戦うマシン」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第3回「最強のライバルたち」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第4回「片野丈一郎・最大の理解者」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第5回「HXに対するこだわり」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第7回「津ベース潜入取材」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第8回「世界へのチャレンジ・ベルギー国 参戦記・その1」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第9回「世界へのチャレンジ・ベルギー国 参戦記・その2」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第10回「世界へのチャレンジ・ベルギー国 参戦記・その3」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第11回「世界へのチャレンジ・ベルギー国 参戦記・その4」はコチラをクリック