世界を目指す20歳のライダー・片野丈一郎選手。彼は、父親である片野宣之氏の全面サポートのもと、二人三脚で戦っています。宣之氏は45歳で、現役バリバリのレーサー。息子である丈一郎選手を非常に可愛がっています。また、丈一郎選手は父親を尊敬しながら、とても好いているのが分かります。理想的な親子の関係が、当たり前のようにできあがっているのです。
今回、「2人並んだ写真を撮りたいので、肩を組んでください」とお願いをしたところ、少しハニカミながらも、笑顔でガッチリと肩を組んでくれました。普通、この年代の親子に同じお願いをすると、たいてい子供のほうが照れて、嫌がられることが多いのです。でも、片野父子は、そんな素振りもありません。これは、お互いを認め、信頼し合っている証拠です。見ていて、何だか気持ちが嬉しくなったし、少しうらやましくもありました。
父・宣之氏は、「超」が付くほどの「SEA-DOO HX大好きレーサー」です。「部品取り艇」、「お宝艇」を含め、計11台のHXを所有しています。事前に「お持ちのHXを撮影させていただきたい」とお願いしたところ、「レース本番艇やお宝艇の保管場所と、部品取り用やストック艇では置き場所が違います」と言われていました。
最初に、レース本番艇を保管してあるガレージに行きました。そこは、かなり専門的な工具が揃っていて、エンジンの積み替えなど、大がかりな修理もできる本格的なレーシングピットのようでした。 宣之氏に、このガレージについて質問をしました。
WJS ずいぶん、立派なファクトリーですね。
片野(父) ええ。でも私一人で借りているわけではありません。他のレーサーの方と一緒に借りているんで安いんですよ。
WJS 何人くらいで共同で借りているのですか?
片野(父) 一緒にレースに出ている林口忠雄選手と落合英友選手、それとジョー(丈一郎選手)。あとはウチの会社が2口と私です。だから、負担は1/6ですね。
WJS ちょっと確認させてください。丈一郎選手はまだ学生だし、会社は宣之さんの会社ですよね?
片野(父) そうです。
WJS それって、計算が合わないような……? 確かに、林口選手と落合選手は1/6ずつですが、宣之さんが残りの4/6を払っていることになりませんか?
片野(父) ははは。そうですね(笑)。
最初のファクトリーから、車で走ること20分弱。もう1カ所のガレージに到着。「ここは、会社の敷地内なのでタダなんです(宣之氏談)」。会社も部門ごとに場所が分かれている。ここはあまり人が行き来しないセクションなので、誰も何も言わないから、都合がいいという不思議な説明……。
取材に来るまで「現在、HXが何台あるのか数えたことがなかった」と言い、11台という数に、本人が一番驚いていた。
下の埃にまみれた「33」のゼッケンが付いたフードは、3歳のとき父・宣之氏に連れられて行ったレースの思い出。
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