「日本のレース」 aquabike 2021「SKI DIVISION GP1」第 4 戦「宝達志水・千里浜大会」　ジェットスキー（水上バイク）

堅実な走りで総合優勝となった佐々木宏樹。

梅雨が明けた直後から、真夏となった「宝達志水・千里浜大会」

去る2021年7月17日（土）、18日（日）の2日間、石川県宝達志水町の千里浜において、「aquabike（アクアバイク）」と、JJSA 全日本選手権「ALL JAPAN JET SPORTS SERIES 2021 第4戦　宝達志水・千里浜大会」の2つの大会が併催された。

「アクアバイク」は「aquabike JAPAN」が主催し、「ALL JAPAN JET SPORTS SERIES 2021」は、「日本ジェットスポーツ協会（Japan Jet Sports Association、略称：JJSA）」が、それぞれ主催している。

梅雨が明け、両日ともに真夏の太陽が選手たちを迎えてくれた。土曜日と午後と日曜の午後は少し海面が荒れたが、それ以外はベタ凪のフラットウォーター。今大会、85名のエントリーがあり、各クラスとも熱い戦いが繰り広げられた。ここでは、aquabike　SKI DIVISION GP1クラスのレース結果を紹介する。

aquabike　SKI DIVISION GP1クラス

千里浜大会を制したのは、KOMMANDER GP1に乗る佐々木宏樹。「第１戦が１位」「第２戦が２位」「今大会も優勝」そろそろ、本気で誰かが止めないと…。

今季、好調の佐々木。初戦の二色の浜大会と今回で、2勝目を挙げているが、今年は「堅実な走り」が特徴。本人は体力的に問題があると話しているが、過酷なトレーニングも行っている。努力を積み重ねて結果を出している。昨年までとの大きな違いは、後ろから”攻め続け”られても、決して諦めないで、最後まで抜かれない。

第2戦の勝者・小原聡将は、今大会は出場せず

HEAT1

今大会、土曜日に1ヒート、日曜日に2ヒートの、全3ヒートで行われた。第1ヒートのホールショットを獲ったのは、KOMMANDER GP1（以下、GP1）を駆る伊東憲太郎だった。伊東は、第２戦でも佐々木に次いで3位と、今シーズン、好調だ。
スタートで飛び出した伊東は、２位の佐々木との差を徐々に広げて、そのままゴール。KOMMANDER勢がワンツーフィニッシュを飾った。3位はカワサキSX-Rを駆る桜井直樹。

HEAT2

アウトコースのホールショットは佐々木、インコースは伊東であった。合流で、僅差で前に出たのは佐々木である。
GP1に乗る２人は、スターティンググリッドでインとアウトに分かれ、全てのレースでGP1がホールショットを獲得するという作戦である。

2位の伊東が、トップの佐々木を果敢に攻めていたが、2周目の選択コースで伊東が痛恨のミスコース。失格となってしまった。この2人のバトルが見たかっただけに、非常に残念だった。

ルーキーらしく、ガンガン攻める伊東の走りは魅了されるものがある。今、必要なレーサーは、「吹っ飛べる」ような若手だと思っている。竹野下正治、片山司、桜井直樹、倉橋秀幸といった全日本の4強は、若手のころ、攻めた結果、よく吹っ飛んでいた。佐々木と伊東のバトルが「令和の名勝負」と言われるようになるのかもしれない。

HEAT3

HEAT2と同じく、アウトコースのホールショットは佐々木、インコースは伊東である。合流で前に出たのは伊東であった。HEAT2との違いは、1位の伊東と佐々木との間に、松浦章人がいたことだ。伊東の真後ろから、SX-Rに乗る松浦が、虎視眈々とトップをうかがう展開となった。
レース序盤で早くも伊東を捉え、松浦がトップに立つと、そのままゴール。2位には桜井が、3位には伊東が入った。

今年のレースを見て感じていたのは、「SX-Rでは勝てない」である。スピードの差が歴然で、KOMMANDERやPro Forceと全然違う。 SX-Rに乗るベテランの桜井や松浦が、新興勢力であるKOMMANDERに乗る佐々木や伊東に対し、「スタートから逃げられ、最後まで追い付けない」というレースばかりを見て来た。
しかし、このヒートでは、水面が荒れたことでマシンのアドバンテージがイーブンになった。

こういう水面では、ライダーの実力がモノをいう。松浦が1周目の途中で伊東を抜いてトップを走る。2周目に伊東がアタックをかけるが、見事なブロックで退け、そのまま後続を引き離して見事な勝利を掴んだ。荒れる海面で、松浦、桜井といった実力者が意地を見せる見事な戦いであった。
今後もSX-Rが勝つレースは、こういった荒れた海面でしかないような気がする。

SKI DIVISION GP1クラス表彰式

レースリザルト

順位	ライダー名（チーム名）
1位	佐々木宏樹（KOMMANDER JAPAN）
2位	桜井直樹（＃1 POUND ONE）
3位	伊東憲太郎（KOMMANDER JAPAN）

※上位3位まで掲載

写真で見る各ヒートダイジェスト

HEAT 1

ホール・トゥ・フィニッシュでHEAT1を制した伊東憲太郎。彼は、こういう勝ち方が得意だ。佐々木は、ミスをせず手堅く2位を死守する。途中、桜井に猛追されるも落ち着いて対処していた。チームKOMMANDER JAPANの、作戦どおりの勝利となった。

写真左が伊東憲太郎、右が佐々木宏樹。仲良しだが、最大のライバルでもある。この2人の戦いが面白い。ホールショットを獲ったほうが、そのヒートで勝っている。
今年に関しては、2人のどちらかがシリーズチャンピオンになりそうだ。今回、佐々木が今季2勝目を挙げたことで、タイトル争いで一歩リードした感がある。伊東は速いが経験が浅く、自滅するレースがある。レース序盤で焦らずに、じっくりと戦ってもらいたい。

HEAT 2

ホールショットは、インコースが佐々木、アウトコースが伊東。合流で佐々木が前に出た。

このHEAT２では、伊東が1周目から、先行する佐々木をガンガン攻めた。

伊東のアタックは見応えがあった。残念ながらこのヒートではミスコースとなって失格となったが、これに懲りず今後のレースでも攻め続けて欲しい。年間タイトルを目指して、冷静かつ堅実に戦う佐々木と、リスクを冒して攻め続ける伊藤の戦いが楽しみだ。伊藤が逆転で総合優勝を狙うには、攻め続けるしかない。

HEAT ３

佐々木（写真左）と伊東（右）のトップ争い。僅差で伊東が前に出た。

第3ヒートで、高いライディングテクニックを見せつけた松浦章人。「KOMMANDERなんて”聞いてない”」と、一番思っているのが松浦だろう。松浦にしてみれば、「他のベテランにヤラれるならまだしも、無名の若手2人なんかに負けてはいられない」と思ったことだろう。

大荒れの海面。マシンポテンシャルよりライダースキルが優るレースになれば、松浦のような実力者が本領を発揮する。

「海面が荒れて、マシンが前に進まない」。そんな状況でこそ、本当の実力が分かる。

第3ヒートを制した松浦。この面子なら、「自分が勝つのが当然」といったコメントを予想していたが、「応援し”続けて”くれる人に”報いる”ことができて、本当に”嬉しい”です」と感極まった様子で話してくれた。レースは残酷である。「勝者は1人しかいない」ことを思い出させてくれる。実力者も、日々、戦っているのだ。