このクラス、エントリー数が5台しかいません。タイのセッツーラ選手をはじめ、強敵、ライバルと考えていた選手たちが、軒並み出場しませんでした。練習走行(プラクティスラン)でも「速い」と思える選手がおらず、「これはイケるぞ!」と思いました。
木曜日のジュニアのレースが終わった段階で、ようやく正式なコースが発表されました。メチャクチャ複雑なコースでした。正式発表されるまで、自分の頭の中で「これで良いだろう」と考えていたコースと、正式発表されたコースが違っていた……。その2つが混ざり合って、頭の中で混乱し、パニック状態になっていました。自分もそうだけど、他の海外選手も、コースを間違いまくっていました。
慎重を期すために、スタートからレース序盤は、誰かの後ろを走ってコースを完全に理解してから、トップに立とうと考えていました。グリッド決めのクジ引きで「1番」を引いたので、あえてインを選択せず、アウトコースのアウト(大外)を選びました。1番後ろから、全員を抜き去るつもりでいたのです。
ところが、後ろを付いていったライダーが、まさかの「コース間違い」をしていたのです。当然、後ろを走っていた僕も、ミスコースです……。ルールでは、「ミスコースした周で、イレイザーブイをまわらなければならない」と決まっています。でも、そのときはミスコースした自覚がなかったので、そのまま走り続け、予定通りトップフィニッシュしました。
しかし、何らかのミスを犯している自覚はありました。すぐにピットに戻ってチーム員に確認すると、「ミスコース。前のライダーに付いていったから」と言われました。ペナルティは「1周減」です。僕が付いていったライダーも、当然、ミスコースです。でも、僕が先にゴールしていたので、結果、5人中4位……。この日は、2番でゴールしたミラー選手が1位でした。ガックリ……。
同行したコンストラクター・藤江功一氏のベルギー参戦記
ミスコースをしたのは見ていました。スタート前、ジョーは、マジックで書いたコース図をフードに張り付けて確認していました。僕は「そんな小さな図、レース中に走りながら見えるわけがない」と言ったんです。でも、書くことによってコースを覚えられるので、「それは、それでいい」と考えていました。しかし、やはりミスコースが不安でした……。
レース後、「とりあえず、あとの2つのレースを勝てばエエがや~」と励まし、翌日の作戦会議を始めました。レースは「14分+1周」と時間が長い。出場選手のなかで、一番実力があるジョーが勝てる確率が高いです。ただ、2位でゴールしたミラー選手は、ジョーの次に速いライダー。この日、ジョーは4位なので、明日と明後日の2ヒートを1位で、ミラー選手が2日間2位でも、ミラー選手の総合優勝になってしまいます。頭が痛いです……。
7月にベルギーで行われた「EURO JETSKI CHAMPIONSHIP(ユーロ・ジェットスキー・チャンピオンシップ)」、10月に、アメリカのレイクハバスで行われる「WORLD FINALS(ワールドファイナル)」、12月にタイで行われる「JET SKI WORLD CUP(ジェットスキー・ワールドカップ)」。この3つの大会を「THE TRIPLE CROWN(トリプル・クラウン)」と呼び、総合チャンピオンは、「世界チャンピオン」の名誉と、高額の賞金を手にすることができます。これは、今年から創設されたもので、タイトル獲得者は、「初代・JETSKI WORLD Seriesチャンピオン」として、長く歴史に刻まれることになります。
クラス名 | 賞金額 |
---|---|
Pro Sports GP | 10,000USドル |
Pro Ski GP | 30,000USドル |
Pro Runabout GP | 30,000USドル |
Pro R/A 1100 Open | 10,000USドル |
Pro Free Style | 10,000USドル |
Pro-Am Endurance Open | 10,000USドル |
※2019年7月19日現在、1USドル107.649円。片野選手の出場するPro Sports GPクラスの賞金は10,000USドルなので、日本円に換算すると「1,076,490円」になります。
賞金額は、大会主催者によるカテゴリー別の格付けを意味します。販売台数の最も少ないスタンドアップ(スキー)クラスや、現在、販売されていないSportsクラスの金額が高額であることから、「ジェットスキーのカテゴリー別の販売台数と、ジェットスポーツとしての面白さは、必ずしも比例しない」ということを物語っています。
いつの時代も、オーディエンスを最も熱狂させるレースが、一番最後になると決まっています。そして、ジェットスポーツ界において、トリを飾るのがスキークラスなのです。
シリーズ20歳の夏 第1回「ジェットスキーに懸ける青春」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第2回「世界と戦うマシン」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第3回「最強のライバルたち」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第4回「片野丈一郎・最大の理解者」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第5回「HXに対するこだわり」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第6回「HX試乗体験記」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第7回「津ベース潜入取材」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第8回「世界へのチャレンジ・ベルギー国 参戦記・その1」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第10回「世界へのチャレンジ・ベルギー国 参戦記・その3」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第11回「世界へのチャレンジ・ベルギー国 参戦記・その4」はコチラをクリック