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シリーズ20歳の夏 第10回「世界へのチャレンジ・ベルギー国 参戦記 その3」

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「EURO JETSKI CHAMPIONSHIP」ベルギー参戦記

スタートは、僕のマシンのほうが速い。
ミラー選手の隣のグリッドに入って、プレッシャーをかける作戦です

7月6日(土)・MOTO2で、前日の挽回をしたいところです

結果から言ってしまえば、このレース、「ホール・トゥ・フィニッシュ」の1位です! 実は、レース前に、チームで「ああでもない、こうでもない」と、非常に長い作戦会議をしました。というのも、自分が今日と明日、1位でゴールしても、昨日の勝者・ミラー選手が2位を2回キープしたら、僕は勝てない。

何としても、今大会、総合優勝で帰国したい! だから、前日の4位という成績は、非常に具合が悪い……。作戦案としては、ミラー選手の前をワザとスローペースで走り、誰かほかの選手にミラーを抜いてもらう。もしくは、僕がワザとミラーの後ろを走って、プレッシャーをかけ続け、彼がミスするように働きかける……。とにかく、いろいろな作戦を検討しました。

グリッド決めは、昨日1位のミラー選手から選びます。彼は、当然、インを取ります。僕の順番で、ミラー選手の隣のグリッドが空いていたので、すかさずそこに決めました。スタートで、ミラー選手を1艇身ぐらい引き離して1ブイへ飛び込みます。そこに、強烈な勢いで突っ込んでくるミラー選手が、視界に入りました。自分が避けて、ブイと自分の間を広げないと、このままではぶつかると感じました。でも、「絶対にひかない」と、逆に、限りなくブイに近づいてターンしました。

予想通り、ミラー選手と軽く接触しました。気が付くと、無理に突っ込んで来たミラー選手が飛んでいきました。これで、「断然、総合優勝が見えた」と思ったのですが、結局、1ブイで吹っ飛んだミラー選手が、2番まで上がってゴールしました。……ガッカリ。



今大会のライバル、「ミラー選手」について語る

WJS ミラー選手は速いのですか?
片野 彼は、昨年のキングスカップで、僕に次いで6位でした。そのときは、ターボエンジンでしたが、この大会では、2サイクルエンジンで参戦しています。僕のターボ艇は、スタートで前に出られるくらい初速が速いです。でも、彼の2スト艇は、1ブイで僕と接触するくらい上が伸びてきます。

WJS 1ブイで接触して、マシンは大丈夫だったのですか?
片野 左のアッパーハルに少しヒビが入ったくらいで、他は何ともなかったです。



同行したコンストラクター・藤江功一氏のベルギー参戦記
今回、1ブイでジョーとミラー選手がぶつかりましたが、僕からすれば、「そんなところでムキになってぶつからならなくても、十分勝てるのに」と思っていました。

実はこのレース、見ているほうは、非常に疲れました……。ジョーとミラー選手がぶつかって、ミラー選手が吹っ飛んだので、「これは、ポイントが稼げる」と、ウキウキで見ていました。ジョーの後ろを走っていた青いTZ、おそらくブレット製のハルだと思いますが、マシンは速いです。ミラー選手が、最後尾からどんどん追い上げてきているのが見えたのですが、「さすがに、このTZは抜けないだろう」と、思っていました。

ところが、このTZライダーがイマイチで、途中で転んで落水したのです。それでも、ミラー選手との差は1周近くあったので、「まあ、これなら絶対、大丈夫だろう」と、高を括っていました。しかし、ライダーがTZに乗り込めない!? 恐らく、疲れて体力がなくなっていたのでしょう。それでも、十分、差が開いていたので、「まだ大丈夫……」と、少しハラハラしながら見ていました。ようやく、青いTZが乗り込みに成功。「さあ、走れ!」と、心の中で叫んだら、また落水したのです……。

乗り込みに2回も失敗している間に、まんまとミラー選手に抜かれてしまいました。敵チームの選手をこんなに応援したのに、青いTZのバカ。結局、ミラー選手は2位でゴール。

しかし、我々チーム員の、この「心底疲れた攻防戦」を、ジョーは全く知りません……。我々だけが、非常に疲れたレースとなりました。

ジョーは知らない。疲れた我々……。

「JETSKI WORLD Series 2019」とは

7月にベルギーで行われた「EURO JETSKI CHAMPIONSHIP(ユーロ・ジェットスキー・チャンピオンシップ)」、10月に、アメリカのレイクハバスで行われる「WORLD FINALS(ワールドファイナル)」、12月にタイで行われる「JET SKI WORLD CUP(ジェットスキー・ワールドカップ)」。この3つの大会を「THE TRIPLE CROWN(トリプル・クラウン)」と呼び、総合チャンピオンは、「世界チャンピオン」の名誉と、高額の賞金を手にすることができます。これは、今年から創設されたもので、タイトル獲得者は、「初代・JETSKI WORLD Seriesチャンピオン」として、長く歴史に刻まれることになります。

JETSKI WORLD Series 2019各クラスの賞金額

クラス名 賞金額
Pro Sports GP 10,000USドル
Pro Ski GP 30,000USドル
Pro Runabout GP 30,000USドル
Pro R/A 1100 Open 10,000USドル
Pro Free Style 10,000USドル
Pro-Am Endurance Open 10,000USドル

※2019年7月19日現在、1USドル107.649円。片野選手の出場するPro Sports GPクラスの賞金は10,000USドルなので、日本円に換算すると「1,076,490円」になります。

賞金額は、大会主催者によるカテゴリー別の格付けを意味します。販売台数の最も少ないスタンドアップ(スキー)クラスや、現在、販売されていないSportsクラスの金額が高額であることから、「ジェットスキーのカテゴリー別の販売台数と、ジェットスポーツとしての面白さは、必ずしも比例しない」ということを物語っています。

いつの時代も、オーディエンスを最も熱狂させるレースが、一番最後になると決まっています。そして、ジェットスポーツ界において、トリを飾るのがスキークラスなのです。

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