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20歳の夏 【第14回】2019年 中国レース ジェットスキーに懸ける青春

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柳州大会。スターティンググリッド。

片野丈一郎・レースに懸ける青春

皆さま、20歳のころは何をしていましたか?
ひとつのことに夢中になり、夢に向かって突き進む若者を、眩しくも、応援したくなることはありませんか?
この物語の主人公は、ジェットスポーツに青春を捧げている20歳の若者、片野丈一郎選手の話です。

現在、将来に向けて資格を取る勉強している学生であり、ジェットレース界では「中部地区の若手のホープ」と期待されています。片野選手は、16歳になったと同時に船舶免許を取得し、その年のシーズンからレースに参戦している生粋のレーサーです。片野選手の父・宣之氏も現役のレーサー。いわゆる「父子鷹」です。

「自分が乗るよりも、ジョー(丈一郎選手)のほうが勝てる」という宣之氏の英断により、所属チームの「Bell Factory」では、昨年から片野選手をエースライダーに据えました。それを、宣之氏が全面的にバックアップする態勢へと変えたのです。

今年、片野選手は学生として自由に時間が使える最後の年。「12月にタイで行われるKING'S CUPに向けて、全精力をレースに注ぎ込む」と話していました。

今回、片野選手が9月中旬~下旬にかけて、中国で行われたレースに参戦してきたというので、お話を伺いました。

柳州大会、レース会場。

日本ライダーのフラッグがありました。

2週連続で、別の都市でレースが行われた中国の大会

WJS 今回、中国にレースに行かれていたそうですが、いつから行ったのですか?
片野 2019年9月18日(金)に中国に行き、21日(土)、22日 (日)がレースです。中国の西安という都市で行われた国際レースに、招待選手として招かれました。

WJS 招待されたのですか?
片野 はい。申請して招待選手と認めていただきました。招待されると、旅費や宿泊費は一切かかりません。それにも関わらず、結構、大勢の選手が招待されていました。

WJS 何という名前の大会ですか?
片野「2019 LIUZHOU CHINA INTERNATIONAL RECREATION AQUATIC GAMES BAI LI LIU JIANG INTERNATIONAL JETSKI OPEN」です。

WJS 長い大会名で、覚えられません(笑)。
片野 でも、規模はすごいですよ。21日と22日が西安という都市でレースをして、翌週の28日(土)と29日(日)には柳州という都市で、もう1戦、大会が行われました。2週連続で行われたんです。

WJS それは、ハードなスケジュールですね。

西安大会、ライダースミーティング。

西安大会、スターティンググリッド。

ものすごい数のギャラリーです。ずっと向こうの方までギッシリ人がいます。

9月21日、22日は「西安大会」参戦

WJS 今回はHXで参戦していないのですか?
片野 はい。SPARKです。「1100ストック」というカテゴリーで、主にSEA-DOO SPARKと、YAMAHA EXがエントリーしているクラスです。

WJS 普段から練習で1,500ccのHXに乗っていると以前、伺いましたが、マシンの改造範囲の狭いストッククラスなら、体力的に余裕なのではないのですか?
片野 それが違うんですよ。僕も、最初はそう思っていました。でも、実際のレースでは、デッドヒートを繰り広げ、抜きつ抜かれつ、息つく暇もないくらい激しいレースでした。レース内容が濃密すぎて、翌日、ひどい筋肉痛になりました。

WJS 西安のレースと柳州のレースでは、戦うメンバーは同じなのですか?
片野 同じです。僕の参戦した1100ストッククラスは、最も人気があるカテゴリーで、エントリー数が30台くらいいました。そこから、予選で18人に絞ります。

WJS ライバルは、どの選手でしたか?
片野 速かったのはタイ人のプン選手です。

WJS プン選手というのは有名なライダーなのですか?
片野 彼は、タイの国内戦でランナバウトのシリーズチャンピオンを獲得したオラファン選手の弟です。SPARKに乗せたら、一番速い選手だと、僕は思っています。

WJS タイのセッツーラ選手も、速くて有名ですよね? 彼よりも上手いのですか?
片野 はい。SPARKならプン選手ですね。

WJS プン選手は、マシンが速いのですか?
片野 マシンも速いけど、やっぱりライディングが上手い。特に見習うのは、マシンを跳ねさせない技術ですね。ひたすら乗って、乗って、練習しているからこそできる細かな技術というのがたくさんあるんです。

WJS ライバルはプン選手だけですか?
片野 もう1人、マシンが異様に速い中国人選手がいて、彼に手こずりました。

WJS  そんなにマシンに違いがあるのですか?
片野 あります。タイ人の有名なメカニックのアダポン・オイル氏が、つきっきりで、ずっとECUとパソコンを繋いでやっていました。マシンは速かったです。中国人選手のマシンは、僕より2km/hは速かった。

WJS コースは広いのですか?
片野 長いです。周回数は6周なんですが、1ヒート18分ぐらい走ってます。だいたい、1周3分くらいのコースですね。そんなコースで、トップスピードが2km/h違うと苦しいです。

ポンツーンの上が、スターティンググリッドです。

スタートは、マシンホルダーがいないので、マシンの後ろにロープをひっかけて動かないようにします。

一斉にスタート。

WJS レースは土曜に2ヒート、日曜に2ヒートの4ヒート制で、その合計ポイントで優勝が決まるのですか?
片野 そうです。最初の西安のレースでは、マシンが全然敵わなくて、必死で3位争いをやっていたという感じでした。今回、コンストラクターの藤江(功一)さんがいなかったので、どうしようもなかったんです。

WJS 翌週の柳州のレースには、藤江さんが来てくれたのですか?
片野 はい。西安のレースが終わったあと合流して、マシンを速くしてもらいました。それでも、応急処置なので……。

WJS 応急処置で、どれくらい速くなったのですか?
片野 1.5km/h です。

WJS その1.5km/h で変わるのですね?
片野 全然、違います。西安のレースでは、いくらスタートがよくても、前に出られてドンドン引き離されてしまいました。コースも時間も長いので何とかなりましたが、4位になるのが精一杯でしたから。

西安大会。

西安大会で表彰台に上がれず、落ち込む僕……。

西安。兵馬俑。

西安。兵馬俑。

9月28日(土)、29日(日)は「柳州大会」

WJS そうしたら、今回は柳州が本命のレースですね?
片野 はい。柳州のレースは、いろいろなドラマがありました。

WJS どんなドラマですか?
片野 25日の金曜日の午前中にライダーズミーティングが行われ、午後から予選がありました。エントリーが30台以上あるので、翌日からの本戦に向けて18台に絞ります。2組に分けて予選を行ったのですが、僕の組にはプン選手や速いマシンの中国人ライダーがいて、強豪ばかりでした……。
アウトからスタートしたのですが、当然、ホールショットは取れません。1周目は5位で戻って、そこから1人ずつ根気よく抜いていきました。ラスト2周目で、ようやく2位にいたマシンの速い中国人選手をロックオン。ラストの最終コーナーからの立ち上がり、チェッカーフラッグの30cm前で追い付いて、20cmくらい前に出られてそのままゴール。会心の2位でした。最後の最後で抜いて2位になったのですから、ギャラリーは大いに沸きました。ちなみに1位は、やっぱりプン選手でした。

WJS 中国人選手のレベルは上がってますね。
片野 本当にそう思います。侮れないです。

藤江さんが来てくれたので、マシンのセッティングをお願いしました。

柳州のショッピングモール。

藤江さんと必要な物を買いに行きます。

柳州大会、ライダースミーティング。



中国人ライダーのマシンが、異様に速くてビックリです

WJS 土曜日の決勝はどうでしたか?
片野 予選の順位でスターティンググリッドを選べるので、インのインを取りました。プン選手とマシンの速い中国人選手は、アウトコースに行きました。

WJS 第1ヒートは何位だったのですか?
片野 2位です。アウトコースのホールショットがプン選手で、僕がインコースのホールショット。合流でプン選手が前に出ました。結局、最後までこのままの順位です。

WJS 午後からの第2ヒートはどうでしたか?
片野 またもや、アウトコースのホールショットがプン選手。僕がインコースのホールショットだったのですが、なぜかイン側が遅くて合流で3位でした。結構追いかけたけど、1位プン選手、2位が中国人選手、3位が僕でした。

WJS 初日はプン選手が2ヒートとも1位。片野選手は2位と3位。マシンの速い中国人選手が3位と2位という結果ですね。翌日の第3ヒートはどうでしたか?
片野 アウトコースのホールショットがプン選手で、僕が2位で、3位が中国人選手。第1ヒートと同じ展開でした。

WJS プン選手は完勝ですが、片野選手とマシンの速い中国人選手で、激しい2位争いを繰り広げていますね。ギャラリーも沸いたのではないですか?
片野 盛り上がりました。僕も、バンバンインタビューを受けたりして、すごかったですよ。

柳州大会、レース会場。

落合選手(写真右)と僕(左)。

ここでもやっぱり、スタートはポンツーンからです。

WJS 最終の第4ヒートはどうでしたか? やはり、熾烈な2位争いになったのですか?
片野 今までと同じように、僕がインコースのホールショット。違ったのは、アウト側のホールショットがマシンの速い中国人選手で、2位がプン選手だったこと。合流でその中国人選手が1位 で、僕が2位、3位がプン選手でした。そこから、三つ巴のサバイバルレースです。4周目のバックストレートで、プン選手に抜かれて僕が3位に後退。
このままでは終われないので、抜かれた直後の選択コースで、プン選手を抜き返しました。しばらくサイドバイサイドのバトルを続けて、またもやプン選手に抜かれてしまい、結果は3位でした……。1位は中国人ライダーです。三つ巴のレースを制して、地元の選手が1位でゴールしたので、本当に盛り上がっていました。

レース後、インタビューを受けました。

次のレースは、ワールドファイナル。そして12月にはKING'S CUP。頑張ります

WJS 総合順位は、片野選手が3位。マシンの速い中国人選手が2位。プン選手が1位ということですか?
片野 はい。プン選手がSPARKの最強ライダーだと思っているので、彼に負けたことは悔しいですけど、今の時点では仕方がないと思いました。

WJS タイのマシンも速いのですか?
片野 速いです。タイがすごいのは、メカニックが分業なんです。例えば、エンジンだけ、インペラーだけをトコトン開発しているメカニックがいるんです。ストッククラスの場合、ノーマルに近いパーツの精度が高ければ高いほど、マシンの速さに影響します。分業なので、ストックマシンは特にしっかりした良いマシンに仕上げてきます。

WJS お話をうかがっていると、片野選手が出場した「1100ストック」クラスはものすごく盛り上がったのですね?
片野 招待選手のほとんどが、このクラスにエントリーしていました。UIMのSPARKチャンピオンのドイツ人ライダーも参戦していましたし、KING’S CUPの上位に入賞できるようなライダーと一緒に戦えたことは、これからのレース人生の財産になりました。

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