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レースには「夢とロマン」が必要だ

このところ、プロランナバウトクラスの人気に、少しばかり陰りが見えている。昨年から、エントリー数が極端に減少しているのだ。今大会、スターティンググリッドには7台しか並んでいなかった。プロスキーモディファイクラスの20台に比べて、寂しい感じが否めない。

どうやら、「速いマシンに乗った人が勝つ」という事実と、「マシン開発に資金がかかり過ぎる」ことが、減少の原因のようだ。ライダーのテクニックがモノをいうレースのほうが、見ているほうも盛り上がる。モータースポーツである以上、多額の資金を投入したチームが勝つのは、ある意味、当然だ。しかし、「それだけ」が重要になったら、夢やロマンがなくなる。

プロランナバウトクラスは、ジェットスポーツにおけるF1(フォーミュラーワン)である。我々の想像を超えるスピードでレースコースを走り、曲がる。そんな、夢のマシンが走るクラスなのだ。

Pro Runabout Result

1位 Mohammad Albaz(Kuwait)

2位 Mohammed Burbayea(Kuwait)

3位 Marcus Jorgensen(Graested)

4位 James Bushell(USA)

 

メーカーが動けば、簡単にレースは変わる

今から8年前の2011年、BRP社は、SEA-DOOニューモデル「RXP-X 300」の発表と、ほぼ同時期に開催されたワールドファイナルのプロランナバウトクラスに、RXP-Xベースのレース艇を投入した。ニューモデルの販売促進の場として、ワールドファイナルを選んだのである。

このとき、レース仕様のRXP-Xに乗ったのが、SEA-DOOのテストライダーであり、当時、全くの無名だったイギリスのジェームズ・ブッシェル。結果は、ぶっちぎりで優勝という、マシンもライダーもセンセーショナルなデビューとなった。

「RXP-X 300」のセールスポイントが、「市販艇最強のレースマシン」であったから、このプロモーションは大成功だったといえよう。その証拠に、翌年から、プロランナバウトクラスのグリッドは、ごく一部を除いて「RXP-X」一色になったのだから。

このように、メーカーがポテンシャルの高いジェットを発売すると、数年はマシンがイコール条件になりやすい。ライダーの腕が、勝敗を分けることになり、「金持ちが勝つ割合」が減少するのだ。そのような状況であれば、レースは盛り上がる。

そのRXP-Xも、発売からすでに8年が経過し、どのチームもRXP-Xを進化させたオリジナルマシンを開発し続けてきた。結果、マシンに開発費用をかけたチームと、そうでないチームの差が驚くほど開き、結果、少々、資金投入したくらいでは、全く歯が立たなくなった。このクラスは、2015年、2016年の2年連続、ハンガリーのジョージ・カスザが圧倒的な強さを見せていたが、その彼を破って勝利したのが、モハメド・アルバである。アルバと2位のモハメド・ブバイエアは、兄弟である。クウェート出身の彼らには、「多額のオイルマネーが注ぎ込まれている」と、もっぱらの噂であった。これが、現在のランナバウトクラスの現状なのだ。


それでも、「夢のような速さのマシンが1台走っているだけで、オーディエンスは盛り上がるのでは?」と考える人もいるだろう。しかし、それも違った。優勝した、クウェートのモハメド・アルバは、1位を独走中、他のマシンがマシントラブルで相次いでリタイヤしていくのを見て、マシンを労わるために極端に減速したのだ。残り10周近く、ゆっくりと走るレーシングマシンを見て、喜ぶオーディエンスなど誰もいない。しかし、勝負である以上、モハメドの判断も正しいといえる。

レースとは、「勝負か? ショーか?」。その答えが問われる、深い問題なのである。



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