カテゴリ
タグ
  1. TOP
  2. RACE
  3. 2018 World Finals Pro SKI Modified

「マーケットシェア」という点からいえば、現代は完全にランナバウト全盛時代だ。しかし、ここワールドファイナルでは、大昔から、メインレースは「Pro Ski Modified」クラスである。ジェットは、「乗るのも見るのも、スタンドアップが最強で最高」だという証拠なのだ。

「カワサキ」vs「アフターパーツメーカー」の図式

2018年のプロスキークラスは、「カワサキSX-R」vs「アフターパーツメーカーのコンプリートマシン」の、マシン対決となった。アフターパーツメーカーのコンプリートマシンといっても、この最高峰の舞台に上がれるのは、ブレットレーシング、コマンダー、プロフォースの3メーカーだけだ。

レギュレーションで1500ccのエンジンを搭載できるのは、SX-Rの純正ハルだけと決められている。だから、アフターパーツメーカーのコンプリート艇に積めるのは、4サイクル3気筒エンジンか、2サイクル3気筒エンジン、2サイクル2気筒エンジンのいずれかである。

では一体、どのメーカーのマシンが強いのか?
水面が荒れたらSX-Rのモディファイ艇、ベタベタの平水面ならアフターパーツメーカーが勝つ。これが、レースを見ていた私の結論である。しかし、アフターパーツメーカー製のマシンも、水面が荒れた今大会は、メーカーごとに明暗が分かれた。

Pro Pro SKI Modified Result

1位 Quinten Bossche(Belgium)

2位 Maurin Raphael(France)

3位 Kevin Reiterer(Austria)

4位 Dustin Motzuris(USA)

 

ブレットレーシング(BULLETT Racing)

2016年から3年連続で、スキークラスの世界チャンピオンを獲得している、フランスのジェレミー・ポレット。彼が駆るブレット製コンプリートマシンが、今大会、敗北を喫した。

相変わらず、ポレットは上手くて速い。しかし、ブレットのV3ハルは、他メーカーのマシンに比べて、あまりにも船体が細い。プロスキークラスに参戦しているマシン全体が、エンジンのパワーアップに伴い、安定性を上げた船体に改良しているのだ。しかし、このマシンは、外観からも安定性が劣ることが判断できる。

ポレットという、稀有な才能を持つライダーのおかげで勝負できているが、今回のような荒れた水面になると、他のマシンに乗るライダーよりも、体力が要求される。逆にいえば、平水面で最もアドバンテージがあるのが、ブレットのマシンなのだろう。今大会、ポレットの結果は総合6位。そういった意味でも、ブレットレーシングでは、今後、マシンに何らかの改良を施してくる可能性が高い。

コマンダー(KOMMANDER)

コマンダーには、ヤマハ1050cc、4ストローク3気筒TR-1エンジンに、ターボチャージャーを装着したスペシャルエンジンが搭載されていた。

しかし、ハイドロスペース全盛の時代から、スタンドアップのターボ艇は、壊れやすいというイメージが強い。事実、2017年には、誰しも、クエンティン・ボッシュが勝つと思われた第3ヒートの終盤、エンジントラブルにより、優勝を逃したのだ。これにより、「ターボチャージャー装着艇だから壊れる」という悪いイメージが、より一層強くなった気がする。

スタンドアップは、エンジンルームが小さく、高速で、ほぼ水中を走っているような感もある。だから、ターボチャージャーが強烈に空気を送り込む際、一緒に水まで取り込んでしまうことは、決して珍しくない。水を吸い込んで壊れたエンジンは、機械的にも金銭的にも、ばく大な被害となる。だから、いくら戦闘能力が高いと分かっていても、ターボは敬遠されがちなのである。

今大会、TR-1エンジンにターボを装着したコマンダーのマシンが、ノートラブルで走り切った。しかも、優勝したボッシュだけではなく、同じマシンに乗るダスティン・モツリス、タイロン・モツリスも、それぞれ好成績を収めたのだ。コマンダー代表のダスティン・モツリス氏は、「TR-1ターボ装着艇が完成して、2年目の大会だ。対策はバッチリで、マシントラブルなど考えられない」と語った。コマンダーの速さは、疑う余地もない。トラブルもなく、ポテンシャルの高さも申し分ない。しかし、荒れた水面であのスピードを維持できるのは、ライダーがボッシュだからという気がしたのも事実である。

ライダーとマシンとも、今後、ますます活躍を予感させるようなレース内容であった。世界最速のレースマシンとしてのコマンダーの評価が、今大会で非常に高まったと思われる。

プロフォース(Pro Force)

今年、プロフォースでは新しいマシンが用意されていた。従来よりも船体が大きく、上下の厚みが増している。エンジンは、SX-Rの1500ccを搭載。大きくて重いエンジンを積むことを想定したモデルなのだ。しかし、レギュレーションでは、1500ccのエンジンを搭載できるのは、純正のSX-Rのハルと決められている。残念ながら、このマシンでのエントリーはなかったため、その走りは未知数だ。だが、このメーカーの開発能力の高さを考えても、相当な実力を備えていると考えるのが妥当だ。この先、ルールが改正される前提での開発なのだろう。

カワサキSX-R

今大会で、ほとんどの人が感じたのが、「SX-Rでいい」だろう。近年、レース業界での常識的な考えは、「ノーマルの船体より、アフターパーツメーカーの軽量ハルのほうが、戦闘能力が高い」である。事実、ここ数年、レースでノーマル船体は勝っていない。アフターパーツメーカーの軽量ハルと、純正品が同じポテンシャルなら、わざわざ高いお金を出してアフターパーツメーカー製を購入する者はいない。「レースに特化したマシン」だからこそのアドバンテージが欲しくて、アフターパーツメーカーにチェンジするのだ。かといって、今までの流れが急に変わるかといえば、ことはそれほど単純でもない。今回勝利したのは、コマンダーを駆るクエンティン・ボッシュなのだから。

しかし今回、「ラフウォーターでSX-Rが勝利」したことが大きい。スキークラスは3ヒート制で争われる。2ヒート目に強風が吹き、水面が荒れた。そのときは、SX-Rを駆るケヴィン・ライテラーが1位、同じくSX-Rのモラン・ラファエルが2位、3位にコマダーを駆るボッシュ。SX-Rのワンツーフィニュシュとなった。結果的には、第1ヒートと第3ヒートで勝利したボッシュが世界タイトルを獲得したが、モランが総合2位、ケヴィンが総合3位となっている。つまりSX-Rは、水面が荒れていないときでも好成績を残しているのだ。

水面の状況は毎回違う。ベタな水面でも相応のポテンシャルを発揮し、荒れたらアドバンテージが高いとなれば、わざわざアフターパーツメーカーのコンプリートマシンを購入する必要はないと感じた人も多いだろう。今回、総合的な戦闘能力の高さを証明したのはSX-Rであり、マシンの選択が明暗を分けた大会だと感じた。

 

ジェットスキー中古艇情報

月間アクセスランキング