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なぜホールショットが取れるのか。ホールショットキングが語る「ホールショットの取り方」

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アクアバイク第5戦。ホールショットを獲得し、竹野下正治の前で戻ってきて、バックストレートを抜けていく平阪勇助。

ホールショットを連発している平阪勇助選手

国内のaquabike GP SKIクラスで、最もホールショットを獲得する確率が高いライダーが平阪勇助選手である。彼は、ライダーでありながら、レース艇も製作するマシンコンストラクターでもある。高いライディングスキルを持ち、彼のブロックは、追い抜こうとする者の走行ラインを見事に殺す。まるで、頭の後ろにも目が付いているようである。

平阪選手の弱点は「体力」。いわゆる「スタミナ切れ」だと本人は言う。彼のレースは、大変興味深い。全て自分で決めているように見えるからだ。

レース中に抜かれるときも、「抜かれてもいいライダー」と、「ブロックして絶対に前に行かせないライダー」とが、見ていて明確に分かる。これほどレースを「自分で」決めているライダーを他に知らない。一般的なライダーは、もっとあがくし、往生際も悪い。

今回、平阪選手にきちんと聞ける機会があったので、全ての疑問を、当の本人にぶつけてみた。


ホールショットキング・平阪勇助選手が語った「ホールショットを取るためにしていること」

WJS 失礼な質問ですが、レース中、抜かせるのも、抜かせないのも、全て自分で決めているように見えます。「ベストを尽くす」とか、「諦めが早い」というのではなく、A選手は絶対に抜かさせないが、B選手ならあえて先に行かせるといったことを、自らの意思でやっているように思えるのですが?
平阪 それはあるかもしれません。この選手のペースなら、自分が頑張れば最後まで抑えきれると判断したらそうしますし、この選手は、あと3つのブイぐらいで「やられる」と判断すれば、あえてすぐに抜かせて、自分のペースを乱されないようにします。

WJS それはなかなかできることではありませんよね。他のライダーだったら、抜かれないようにあがきますよね?
平阪 レース全体をトータルで考えて判断します。今、この瞬間だけ考えて、体力を使い果たしてしまうのは、大変なリスクです。自分のペースを守りながら、最終的に高順位でゴールすることのほうが重要だからです。最後までのレースを考えながら、その瞬間で判断しています。

WJS 確かに、そう言われれば理解はできますが、実際にやるとなるとなかなかできません。
平阪 僕なんかは、本当のトップライダーに比べて、技術的に劣ってると思っていますので……。

WJS 技術は申し分ないと思います。不安材料があるとすれば、体力的な部分だけではないのですか?
平阪 いや、そんなことはないです。「技術」には、体力的なことも含まれていると考えています。


竹野下選手や倉橋選手、片山選手がどの位置にいるかで、僕の勝機は大きく変わります

WJS プラクティクスランでは派手なクラッシュもたまにありますが、レース本番ではしませんよね。
平阪 はい、絶対にしません。経験だけは長いんで。

WJS 見ていて不思議なのは、「ブロックが上手い」と思って見てたら、いきなりブロックするのをやめて、先に行かせることがありますよね。あれはどうしてですか?
平阪 そのときの、自分の体力的な部分で判断しています。抑えきれると思って走っていても、これでは最後までもたないと判断したら、瞬時に切り替えます。トータルで、そのレースを考えて判断しています。

WJS レース中に、自分にとってベストな選択をして、最良の結果を求める姿勢なのですね?
平阪 そうです。今シーズンでいうと、ほぼ上位を独占している竹野下選手や倉橋選手、最近では片山選手がレース序盤にどの位置にいるかで、勝機は大きく変わります。僕は、スタートではほとんどトップ集団にいますが、彼らが出遅れて後方にいる場合、大きなチャンスです。上位陣に誰がいるかが、重要なのです。

WJS 具体的にはどういうことですか?
平阪 たとえば、僕がトップでA選手、B選手、C選手が後ろにいたら、前半は飛ばして、2位との距離をできるだけ離しておいたほうが良いとか、後ろがD選手、E選手、F選手なら、それほど引き離さず、むしろ自分の引き波をあえて踏ませて、少し疲れさせたほうが良いというようなことは、いつも考えて走っています。

WJS レース中に、他の選手の順位まで把握して走っているのは本当にすごいことだと思います。失礼ですが、今まで、平阪選手の走りに対して、「諦めが早い」とか、「余力を残して、ベストを尽くしていない」というふうに見えていたところがあります。今回、お話を聞いて考えが変わりました。
平阪 相手によって、必ず抑え込むという話ではなく、「逃げ切れるようなレース展開」を作ります。先ほど話したように、序盤で引き離しにかかるとか、あえて引き離さないとか、戦略を考えながら最良の選択をしています。


僕のマシンはフロントが常に水に接しています。だから、いつでも瞬時に曲がれるのです

WJS 平阪選手は、必ずスタートで前に出ますよね。この錚々たるメンバーのなかで、ホールショットを獲得する確率はトップだと思います。平阪選手のマシンが、世界最速の2ストローク艇ではないのですか?
平阪 自分でも、そう思います。僕のマシンはBULLETT Racing(ブレットレーシング)のV3ハルですが、自分で少し形状を変更しています。世界のトップライダーが乗っているマシンと、僕のブレットは走行特性が違います。

WJS どのように違うのですか? V3ハルに乗るライダーといえば、元世界チャンピオンの、フランスのジェレミー・ポレット選手が真っ先に思い浮かびますが、彼のマシンと比べてどう違うのですか?
平阪 僕以外のブレットのコンプリートマシンは、スピードを落とさないためにフロントが浮いています。これは、水の抵抗を減らしてマシンのスピードを上げるためです。でも、僕のマシンはフロントが常に水に接しています。だから、いつでも瞬時に曲がれます。アクセレーションはすごく敏感なんです。アクセルを少し緩めただけで、強烈なブレーキがかかる。反面、フロントが絶えず水面に接しているので、細かな波の影響も常に受け続け、一瞬たりとも気が抜けません。体力的にもキツくなります。僕のマシンが速いのは、完璧な2ストロークエンジンのお陰です。

WJS マシンの速さに対して、ものすごくこだわりを持っているのですね?
平阪 そうであって、そうでない。今日のレースは二色の浜なので、水面が荒れることが予想されます。それに、1日にヒート1とヒート2の2回も走らなければなりません。この海面で、2ヒートを走るのは体力的に持たないと感じたので、速いほうのエンジンではなく、遅いほうのエンジンを搭載してきました。

WJS 平阪選手は、JJSBAのレースで何度も年間チャンピオンを獲得している大ベテランですよね。「体力が持たない」と言われても、信じがたい部分もあります。
平阪 他の皆と同じ4ストロークのSX-Rなら、僕もそれほど「体力が……」とは言いません。でも、小さな船体の2サイクルマシンでは、4ストの2倍以上の体力を奪われます。

WJS だったら、どうして疲れる2ストロークマシンを使うのですか? 4ストロークのほうに乗ればいいのではないですか?
平阪 速さに関しては、世界の中でも僕の2ストマシンが1番速いと感じています。トップスピードも115㎞/hは出ています。スタートから50mで、時速100㎞に達しますから。

WJS すごいですね。平阪選手が、国際大会で走っている姿も、国内でのレースもずって見ています。マシンの速さは、圧倒的だと思います。でも、国際大会だとコースは広くて長いので、2ストのマシンには不利ではないのですか?
平阪 僕のマシンに関しては、それはないです。巡航速度、例えば小さな波が当たっている状態でも、フロントが常に沈んでいるので時速105㎞なら、その速度をキープできます。4ストでも、少し跳ねただけでも約5㎞/hも減速してしまいます。僕のマシンは、減速幅が非常に少ない。だから、戦闘能力は僕のマシンのほうが高いと思います。


ホールショットが取れる理由は、「フロントが沈んでいて、減速幅が非常に少ない」という走行特性

WJS これだけホールショットを連発するので当然ですが、平阪プロのマシンの速さについては、他のライダーからも、よく話を聞きます。
平阪 まだ4ストのSX-Rが発売される前の時代、最高速が105㎞/hと言われているころ、よく「俺のマシンは105㎞/hだけど、平阪君のマシンは何㎞/h?」って聞かれることがありました。僕は正直に「90㎞/h」って答えていたんですけど、そのせいで、よく「嘘つき」呼ばわりされましたね。最高速90㎞のマシンが、105㎞/hと競い合って、ホールショットを連発していましたからね……。でも、ホールショットが取れる理由は、今話したように「フロントが沈んでいて、減速幅が非常に少ない」という走行特性のおかげです。スタートから1ブイまで、1度も跳ねないライダーはいません。パンッと跳ねた瞬間に5㎞/h減速するマシンと、水の抵抗はあっても巡航速度が変わらないマシンなら、そっちのほうが速いですよね。

WJS 確かにマシンの特性もあるのでしょうけど、ライダーのスキルが高いからではないですか?
平阪 いや、マシンです。テストでも、ロガーデータを確認して、瞬間だけ上がる最高速度は無視して、平均の巡航速度だけを意識しています。でないと、実戦では意味がありませんから。

WJS 何10年もトップレベルで戦ってきたからこそ造れる、「勝てるマシン」の結晶なのですね。このマシンで、体力的な部分以外で、気に入らない部分はあるのですか?
平阪 僕もプライドがあります。抜かれるのは嫌ですし、後ろから突かれるのは屈辱です。

WJS でも、いつもブロックしていますよね?
平阪 本当は、ブロックするんじゃなくて、ぶっちぎりたいんです。

WJS 自分のマシンの出来は、戦っていてリアルに体感できると思いますが、その部分は誇らしく感じたりしないのですか?
平阪 まあ2ストに関しては、4ストはまだまだです。

WJS 「理想のマシン」を造って戦う楽しさは何ですか?
平阪 この会場に、わざわざ足を運んでくださったギャラリーに、自分のスタートダッシュを見せつけて、この速さを目に焼き付けて帰って欲しいと思っています。だからこそ、「スタート」にこだわっています。


平阪勇助選手のホールショットの秘密は、二律背反のマシンだった

何10年もトップレベルで戦ってきたが平阪選手の「勝てるマシン」の結晶が、このマシンである。4ストロークのSX-Rと比べて、体力の消耗が2倍以上と話す2ストロークマシンで戦う理由は、このマシンが「レーサー・平阪勇助の理想形」だからだ。人一倍、体力に気を使う平阪選手なのだから、体に優しいマシンを作ろうと思えば簡単に作れるはずである。なのに、完成した「思い通りに走れる究極のマシン」は、ものすごく体力を消耗させるマシンだった……。

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