春は優しい季節。いつ冬が終わったのかは知らないが、春が来たことは感じる。
春になると、無性に琵琶湖を走りたくなる。何気ない風景が、とても優しく思えるからだ。
琵琶湖の景色は「優しい景色」。四季折々の季節の中でも、春の琵琶湖はとびきり素晴らしく感じる。厳しさが見えないのは、私が地元の人間ではないからだろう。それでも優しく目に映る、春の琵琶湖が大好きだ。
ツーリング当日、朝8時に滋賀県野洲市のジェットショップ、シードリームスカンパニー ヨシカワに集合。オーナーの吉川氏が水先案内人として同行してくれることになっている。
ショップに行くと、すでに我々が乗るジェットに「適合証」を貼ってくれていた。琵琶湖でジェットに乗るには、「適合証」と「ライセンス」の2つが必要である。適合証はジェットに貼り、ライセンスはドライバーが所持する。ライセンスは5年間有効だ。
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琵琶湖でジェットに乗るために、必ず取得しておかなければならないのが、「琵琶湖水上オートバイ安全講習終了証(ライセンス)」と、環境対応型ジェットであることを証明する「適合証」だ。
今回のツーリングのために吉川さんが用意してくれたのは、スパークとGTR215。相方はGTR215で、元気な私はスパークで出発した。風もないベタ凪の水面に繰り出す。遠く、比良山系の山々が、春霞の向こう側にうっすらと浮かんでいる。天気が良ければ、新緑の山が正面に望めるが、この日のように霞がかった景色も趣がある。
縦横無尽にスラロームしながら走る。小回りが効くスパークの、軽快な走りが大好きだ。
琵琶湖大橋を左手に見ながら、近江舞子方面へ向かう。近江舞子は、琵琶湖有数の美しい砂浜が続く。近江舞子を超えると、「白鬚神社」が見えてくる。
湖を走って白鬚神社に近づいて行くと、常に神様から見られている気する。全体を包む荘厳な雰囲気に、自然と身が引き締まる。
湖の中に鳥居が建ち、本殿と拝殿は国道161号線を挟んだ向こう側にある。いうなれば、神社の境内を、車がひっきりなしに往来しているような状態なのだ。
だが、なぜかその音が気にならないくらい、静けさを感じる。何度も来ているうちに、私はすっかり白鬚神社のファンになってしまっているようだ。
何年か前から、ジェットで鳥居をくぐる集団が増えているという。鳥居にぶつかって、破損させた不届きものもいる。
何年か前のニュースで宮司さんが仰っていた。「規制区域にするなら、何mかおきにブイを並べる。それがかえって景観を損ねるという不安がある。けれども、水上バイクで通ってほしくないという思いのほうが強い」と。
今はまだ規制はされていないが、このままいけば、白髭神社の近くにジェットが入れないような規制ができるかもしれない。今、ジェット乗りのモラルが試されているということを忘れないでほしいのだ。
湖から陸上に上がる階段で、我々をずっと眺めていた女性に声を掛けられた。「どこまで行くんですか?」と。彼女の目がハートマークだ。悔しいことに、その相手は私ではなくジェットに、だ。
女性は、自転車で琵琶湖を巡っていて、これから海津大崎方面に向かうという。
奇遇ですね。我々もこれからそこに行くんですと言いながら、笑顔で手を振ってお別れする。どう考えても、自転車よりもジェットのほうが速いから、もう会うこともないのだろうな。
数年前にも春に琵琶湖を走ったが、そのときは海津大崎では桜が満開だった。まだ新型コロナなど影も形もないころだったので、観光客を乗せたバスが、ひっきりなしにやって来ていたことを思い出す。少し前のことなのに、ずいぶん、昔に感じるものだ……。
前回はここで上陸して土手でお弁当を広げたが、今回はそのまま出発する。
琵琶湖のベタ凪の水面は快適だが、あまりに楽チンだと眠くなる。丸1日ジェットで遊ぶ日は、「ハードなくらい」でちょうど良い。
スパークでのツーリングは楽しい。水面が荒れると、皆から遅れないように走るのは至難の技だが、退屈することはない。他のジェットの引き波で、軽快なジャンプができるのはスパークだけ。フラッグシップはパワーと重量がありすぎて、波をつぶして走るので、ジェットの引き波程度ではジャンプできないのだ。
レギュラーガソリン仕様で、燃費が良いのも、スパークを気に入っている理由のひとつだ。ゆっくり走れば、給油なしで琵琶湖を1周できる。アクセル全開でぶっ飛ばしても、2タンクは要らないのも嬉しい。
竹生島からノンストップで走り続けて、長命寺に到着。淡々と走れば給油しなくてもいいことは分かっている。しかし長命寺に行けば、吉川さんの奥様がガソリンを持ってきてくれることになっていた。それなら「確信犯」的に、燃料のことは考えずにアグレッシブなスポーツ走行をする。案の定、長命寺に着くころには、イイ感じにガソリンがなくなった。
琵琶湖から、長命寺の808段の長い階段を登って参拝に行く。陸上から行く場合、山の中腹まで車で行けるので、我々のように一番下から登る人は少ない。
頂上の拝殿でお参りをしていると、住職さんが「今年も良く来たね」と、声を掛けてくれた。年に1度しか来ない我々のことをちゃんと覚えてくれているのだ。毎年歓迎してくれる住職さんに、感謝しかない。
ガソリンも入れてもらったし、南湖側の景勝地「浮御堂」へ向かう。浮御堂というのは通称で、正式には「満月寺」。湖に突き出した石橋の先に建つ様子から、そう呼ばれている。
戦国時代、琵琶湖は、「堅田衆」と呼ばれる湖賊が支配していた。琵琶湖の水運、漁業権を支配し、湖における圧倒的な力を持っていたという。その本拠地が、このあたりなのだ。湖の上から手を合わせてマリーナへ戻ことにした。
琵琶湖を走ると、いつも「懐かしい」と感じる。それは、風景であったり、人の優しさだったり、空気感だったり……。日本の古きよき時代の美しさが残るこの湖は、私にとって、心安らぐ場所である。
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