古き良きアメリカのサーフィンの世界では、ボロボロのクルマのルーフにボードを載せて、波を求めて旅する「サーフトリップ」という文化が当たり前のように存在している。
それを今、サーフボードの代わりにヴィンテージ・ジェットを牽き、クルマで日本中の水辺へ行こうとしている男がいた。
彼、「村尾“DEVIL”高明氏」が見る「夢」は、『日本中のあらゆる水面を楽しむ』ことだと言う。村尾氏は、国内のフリーライド第一人者で、フリースタイルの元全日本チャンピオン。現在は、ヴィンテージマシンによるスラロームイベントなどを精力的に行っている。
どんな波でも乗りこなすだけの技量を持っている彼だからこそ、通いなれた場所とは違った、その土地ならではの波を楽しみたくなる気持ちが分かる。
競技ではなく、アメリカのサーファーのように、「ゆるい時間を楽しむ」。「今の時代『時間の制約がない』ことが『最高の贅沢』だ」と考えているという。
「僕、昔から地図を見るのが好きなんです」と村尾氏は語り出した。今ならグーグルマップで航空写真まで見られる。そうすると「ここで乗ってみたいな」といった場所が数多く見つかるという。
長い間、第一線で活躍している村尾氏は、日本中にジェット仲間がいる。「四国にも淡路島にも、乗るときには誰かしら仲間が集まってくれる。地元の人がいれば、ローカルルールや決まりごとも教えてもらえるので心配はありません」。
夜は、現地のジェット仲間とグルメを味わい、語る時間も楽しみにしているという。
村尾氏の本拠地は千葉県の九十九里浜。東京オリンピックが開催されたほどの日本有数のサーフスポットである。
「デカい波を求めて旅をしたいわけではありません。いろんな場所で乗りたいんです」(村尾)
今、「クルマで旅する企画」を練っている真っ最中だという。ヴィンテージの550をトレーラーに載せ、日本各地へ行き、良い水辺、良い波があったらそこで乗る。アメリカのサーファーが良い波を追いかけて旅するのに似ている。
旅の「相棒」として選んだのは、ホンダ・エレメント。サーファーやモトクロス乗りのような「X系スポーツ」を愛する人向けに作られたクルマである。
「これだけ扉があって、ネオプレーン素材のシートカバーもオプションで売られているんです。サーファーやジェット乗りには超便利で快適。アウトドアライフに最適なんです」と村尾氏。
便利なオプションが豊富。ネオプレーン素材のシートカバー
エレメントというクルマは、海岸にある「ライフガード・ステーション(監視台)」をモチーフにアメリカで開発・生産されたSUV。日本では逆輸入車として2003年から売り出されたが人気が出ず、国内では2年ほどで販売終了となった。
本家・アメリカでは2011年まで販売され、30万台以上も売れている。「両側観音開き」のサイドドアや、車内のシートや床は防水仕様など、アウトドアにピッタリの装備を持っている。
海岸にある「ライフガード・ステーション(監視台)」をモチーフにして開発された。車内のシートや床は防水仕様!
「アメリカでこの『エレメント』というクルマを使って行う『マイクロキャンパー』っていうのが流行っているんです。コロナ渦で車中泊、1人キャンプってブームじゃないですか。今はベッドも何も作っていないんですが、出発するまでには作ります」(村尾)
もし、今の時代にこのエレメントがあったら、アウトドアスポーツを楽しむ層にヒットしたかもしれない。国内で販売するには時期が早すぎた。時代を先取りしすぎたクルマなのである。
『マイクロキャンパー』って言葉の響きが「今」の時代ですね。
このクルマの楽しみのひとつは、カスタムにある。
「オプションやカスタムパーツもエレメントは半端ないくらいあるんです。ただし、ほとんどが輸入の左ハンドル仕様。僕のは右ハンドルです。なので日本でオーダーし直しています」(村尾)
今はまだエレメントの荷室には何も入っていないが、これからオプションで快適な装備を増やしていくのだという。
「ベッドというよりはソファーベッド。下に物を収納できるようにして、棚も別に作ります。そういうのを全部ひっくるめて『マイクロキャンパー』っていう文化なんです。これだけの広さがあれば何にもなくても寝られるんですが、やっぱカッコつけたい部分もあるじゃないですか」(村尾)
アメリカでは、このエレメントをキャンパー仕様にカスタムするユーザーも多いのだ。後部座席を両サイドに跳ね上げると、フラットな床面になり、大人が楽に寝られるスペースとなる。
「キャンピングカーもいいのですが、少し大げさですよね。日本でエアストリーム(キャンピングトレーラー)だと移動が大変。これ(エレメント)だと、ピックアップトラックよりも手軽なサイズです。宿泊って、旅で一番お金がかかる。でも、こうやって車内で寝られれば、非常に気軽に旅を続けて行けますから」(村尾)
何日泊まるとか、いつ帰ってくるというのを一切決めず、思うままに旅をするにも、こういった「ベースキャンプ」の存在は不可欠だ。
「なんの予定も立てず、雨が降ったら“今日は休もう”みたいなことをやってみたかったんです。実際やってみて、ワールドジェットや、ユーチューブで皆さんに報告します。時代も時代ですし『ひとりでゆったり』というのがテーマです」(村尾)
男が1人旅をするなら、そこに「ロマン」がなければいけない。ジェットに乗るための良質な波を求めて、クルマで日本中を旅する。目的地は特に決めない。
地図を見て、良さそうな水辺をおおまかに決めて、そこを目指す。途中で、もっといい波があったらそこで乗る。そんな自由が必要だ。村尾氏からの「旅の報告」が今から楽しみだ。
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