
現在、世界のトップを狙えるマシンは「4機種」である。
ブレット「V4」コンプリート艇、コマンダー「GP1」コンプリート艇、カワサキ「SX-R」、そしてこの「プロフォース」コンプリート艇だ。
プロフォースは、プロウォータークラフトが開発したマシンである。オーナーは、過去にUSチームカワサキに在籍し、ハイドロスペース社でもマシン開発に関わっていたクリス・ハゲス氏である。
今回、プロフォース2.0の開発にも携わり、2016年のワールドファイナルGPクラスでプロフォースに乗って、世界2位となった小原聡将選手と、コンストラクターの藤江功一氏が、今季、タッグを組み「世界を狙う」という。
プロフォースの走行。国内だけでなく、世界的にGP SKIクラスの選手は、こぞってコマンダーGP1に乗っている。現在、プロフォースで参戦しているメジャーなライダーは、この小原聡将選手くらいなものだ。
今季のスキークラスの展望を、コンストラクターの藤江功一氏に聞くと「現状、カワサキSX-Rでは、もうこのクラスでは戦えない」と話す。コマンダーGP1は、軽量で、スタートでも前に出られるし、ワイドハルなので安定性も抜群だ。
現在、世界のトップレーサーは最高速110~120km/h前後で戦っている。おそらく本戦では最高速125km/h前後の戦いになる」という。スタンドアップも、驚異的なスピード域の戦いとなるのだろう。
ライダーの小原聡将選手。今年、世界タイトルを狙うという。プロフォースの優れた点は、「コーナリング性能」である。現時点でも、小原選手のコーナリングスピードは、世界最高峰のレベルに達していると藤江氏は分析する。
現在のプロフォースの最高時速は115km/hというが、「これを、あと10km/hほど速くし、125km/hまで上げたい」そうだ。
ちなみに昨年の夏、小原選手がこのマシンでホールトゥフィニッシュの勝利を収めたときの最高速が100km/h。他のライダーのマシンのほうが速かった。
いくらコーナリング性能に優れたマシンで、ライダーの技量があっても、世界で戦うには今のままでは、とても太刀打ちできないと感じたという。
世界最高峰のコーナリング性能といわれるスタンドアップ。昨年、小原選手は、最高速が100km/hしか出ないマシンで後続を引き離し、ホールトゥフィニッシュの勝利を飾りました。 それができた理由は、プロフォースの類まれなるコーナリングスピードと、小原選手の卓越したライディングスキルによる部分が大きいです。
現在は、コマンダーGP1でもプロフォースでも、最高速が115km/h程度。世界戦で勝利するためには、小原選手のライディングスキルとコーナリングスピードに加えて、「最高時速125km」が必要となるでしょうね。
ただし、エンジンチューンはこのレベルで抑えておかないと壊れます。あとは細かな調整を積み重ねて、スピード領域を上げていくことが必要です。(藤江氏談)
小原選手のプロフォースを手掛ける藤江功一氏(K1 Racing Service)。僕にとって、プロフォースほど乗りやすいマシンはありません。現在、世界のトップ3の実力を「100」とするなら、僕は「70」くらい。今、藤江さんにお願いして、最高速が100km/hだったマシンを、115km/hまで上げてもらいました。
でも、スピードが上がれば、乗りやすさが犠牲になります。もっともっとこのマシンに乗り込んで実力を上げ、自分が進化できれば、世界のトップと、互角に戦えると思います。彼らを凌駕したいです。(小原選手談)
ライダーの小原聡将選手。現在、プロの競艇選手としても活躍している。
フロントには、スプラッシュガードが3本もある。現在販売されているスタンドアップの船底で、プロフォースほど凝った形状のものはない。例えるなら、SEA-DOO RXP-Xの「T3-Rハル」のようだ。スタンドアップの船底形状がこのプロフォースによって、科学的にますます進化していくと考えている。
スコープゲートの両サイドに、大きな切れ込みがある。これは、ライダーのスキル ではなく「マシン性能」で曲がることを考えているのだ。まるで高性能ランナバウトの最新モデルの船底を見ているようだ。
船体は、赤色のハルと黒色のハルの2枚重ねになっている。上の写真を見てもらえば分かるが、アッパーハルの下に黒いハルを一層挟み、その下に赤いハルがある。開発当初は、中間の黒いハルはなかった。そのころは、水面状況によってはフロントが刺さるという欠点があった。そこで、アッパーハルとアンダーハルの間に黒いハルを増やすことで厚みを増した。
厚みを増したおかげで、優れたコーナリング性能はそのままに、全くフロントが刺さらないハルに進化した。
スコープゲートの両サイド部分にある大きな切れ込みのおかげで、優れたコーナリング性能は残したまま、水の抵抗を減らしてくれる。
ライダーが低重心で乗れるように、デッキマットが低い位置に設計されている。デッキの中央の盛り上がっている部分がドライブシャフト。それよりも足を置く位置が低い。
エンジンは高さがあるので、エンジンルームから一部が飛び出している。ガソリンタンクは船体の中央に設置されているので、他のマシンと違って、ガソリン量によって船体バランスが変わることがない。プロフォースは、世界最強のコーナリングマシンと言われている。スタンドアップでありながら、SEA-DOO RXP-X 300のように、ハンドルを切るだけでプロライダーのようなコーナリングができてしまうというのだ。
マシンが水を捉えてくれるので「フロントに加重してコーナリングのきっかけを作る」という作業が省ける。その場で低くしゃがんでハンドルを切ると、Gに耐えられるように少しだけマシンが傾く。その状態でアクセルを開ければ、世界最速のコーナリングが実現できるのだ。
すごくライディングが上手くなったような気がするが、これはマシンの性能のおかげだ。
ハンドルを切るだけでプロライダーのようなコーナリングができてしまうそうだ。
その場で低くしゃがんでハンドルを切ると、Gに耐えられるように少しだけマシンが傾いてくれる。
このように、少しだけマシンが傾く。
× コーナリング時、このように体を前に入れる必要がない。
○ 体を真横に出すだけでOK!! 常にフロントが水を捕えているので、体重移動でフロントを噛ませる動作が不要である。
1 コーナーに入る前、そのポジションでハンドルを切ると、少しだけ傾く。
2 コーナリングの最中は、Gに耐えるため内側に体を入れる。
3 アクセルを開けるだけで曲がり始める。 今、ほとんどのトップライダーは、コマンダーGP1に乗っている。それが世界の主流である。
しかし、「プロフォースの戦闘能力が理解されていない」と藤江氏は言う。プロフォースは、「体重移動でコーナリングのきっかけを作る」という作業をなくした優位性がある。
これは、ランナバウトにおけるSEA-DOO RXP-X 300の「T3-Rハル」と同じだ。
コースが直線だけなら関係ないが、コーナーが増えるほど、この特性はアドバンテージとなる。マシンの操作が簡略化されれば、結果としてラップタイムは上がるのは当然のことだ。
例えスタートからファーストブイまでは、コマンダーGP1に負けたとしても、コーナーごとにその差を縮めていけば、十分、勝機はある。
さらに小原プロには、マシンのポテンシャルを引き出すだけのスキルがある。「プロフォースと藤江氏と、小原プロ」。このパッケージなら、世界を獲る勝算があるというから楽しみだ。
今年は「プロフォース&小原選手」で世界タイトルを目指す。【関連記事】
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