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今、最も楽しいマシン ゴーちゃんの550 加藤 豪店長の『宝物』 ジェットスキー(水上バイク) コラム

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ゴーちゃんの550 「戦うために生まれた美しさ」

美しく手入れされ、何よりも大切にされていることが分かるこのJS550(以下、550)は、神奈川県のジェットショップ55HEAVENの加藤 豪店長の『宝物』である。このマシンは、アメリカのレイクハバスで行われるワールドファイナル(世界選手権)の「ヴィンテージ」で戦うために作ったものだ。

ひと口に「550だ」、「ヴィンテージだ」と言っても奥が深い。
このマシンの存在意義は「ワールドファイナルのヴィンテージクラスで戦うためのマシン」であるということ。
骨董品のような、『飾る』ためのマシンではなく、現在進行形で『戦う』ためのマシンなのだ。

この550は、『飾る』ためのヴィンテージマシンではなく、現在進行形で、『戦う』ために造られたマシンである。

世界的に熱く盛り上がる「550」というクラス

「JS550」は、今から37年前の1982年に販売を開始し、1998年に販売を終了。15年間の長きにわたって、販売され続けたロングセラーモデルである。日本だけでなく、ジェットスキーが世界的にブームになった火付け役である。

販売が終了してから22年経っているにも関わらず、近年、550によるレースが再び盛り上がりを見せている。アメリカで行われるワールドファイナルでも、ヴィンテージクラスは盛況だ。

加藤店長は、その日1日の仕事が終わると、慈しむようにこの550をいじり出す。まるで、宝物を扱うような姿がとても素敵に見えていたのだ。
今回の取材に際し、加藤店長に話を聞かせてほしいとお願いをしたところ、当初、「自慢していると思われるのが嫌」それに「特別なことはしていない」と固辞された。

店長にしてみれば、「自分の好きなもの」を大事にするという、至極当たり前のことをしているだけ。人に誇ることでも、自慢するものでもないという。しかし編集部は、この「自分の好きなものだから大切にしている」姿に惹かれたのだ。
無理を言って、加藤店長に「この550について」話を聞かせてもらうことにした。

「自分の好きなものを大事にする」という、至極当たり前のことをしているだけ。人に誇ることでも、自慢するものでもないと、加藤 豪店長(55HEAVEN)は言う。

唯一無二の宝物を造る「苦しみと楽しみ」

WJS 加藤店長は、常日ごろからこのJS550をとても大事にされています。普通の550と、何が違うのですか?
加藤 いろいろと違います。足まわりから、全部、いじっています。

WJS 550は絶版機種ですし、今、普通に550を購入したら、それほど高くはないと思います。でも、これだけ手がかかっているとなると、かなり金額になるのではないですか?
加藤 正直、新艇のSX-Rが買えるぐらいは必要です。

WJS 改造範囲がレギュレーションで決められているので、装着するパーツも決まってくる。それほどの金額はかからないと思っていました。
加藤 確かに他のカテゴリーよりはお金がかからないかもしれませんが、改造範囲が決められて、大した改造ができない分、やるべきことの奥が深い。必要な金額もパーツ代というよりは、マニアックな代金です。自分でやればタダです。

WJS 改造範囲が狭いといいますが、どれくらいの改造が許されているのですか?
加藤 今のSX-Rなどと比べて、550は船体の安定性が悪い。横幅が狭いので、当然フラつきます。その分、昔は禁止されていたワイドなスポンソンを装着できるので、トータルで考えて足まわりの完成度が格段に高められます。ただ、ライバルたちも同じようにやってくるので、マシンのアドバンテージは変わらない。レースではイコールコンディションですよね。

WJS ワイドなスポンソンが装着できることで、昔よりも楽に乗れるようになったことは大きいですね。
加藤 それも、どの部分にどの大きさのスポンソンを装着するかで、乗り味は全く変わります。僕は、足まわりを含めた操縦安定性が最も大切だと考えています。このマシンは苦労した分、かなり気に入っています。

トータルで考えて、今の550は足まわりの完成度が格段に高められます。

「自分の手足のように動くマシン」を作り出すために、目に見えない部分にこそこだわりたい

WJS 足まわりというと、フロントスポンソン、リアスポンソン、スコープゲート、ライドプレート、ポンプ、インペラーくらいですか?
加藤 それよりも、ベースとなる船体から手を入れる必要があります。古いマシンなので、歪みやヤレのない550はほどんどないので、その部分はプロに直してもらいます。

WJS アンダーハルの成型や、面出し(ゆがみやよじれを正しい形に整える)をするということですか?
加藤 そうです。ベースとなるハル本体がちゃんとしていないと、本当に欲しかった足まわりにはなりません。

WJS アンダーハル本体の成型や面出は、一体いくらかかるかのですか?
加藤 このあたりの金額は、お願いするクラフトマンによって違います。職人仕事ですから、ある意味、言い値のような部分もあります。一応、目安として、40万円くらいという話も聞きます。

WJS 今回、加藤店長にお話を伺いたかったのは、いつも、この550をとても大切に扱っているからです。見た目はもちろん素敵さですが、それ以上に、見た目には分からない部分、例えば足まわりにまで、しっかりと手が加えられていますね。
加藤 僕は、この550は足まわりが最も大切だと思っています。

WJS 足まわりを良くすることで、何が一番メリットがあるのですか?
加藤 自分の望むマシンで走ることができれば、それほど疲れない。「ここで踏ん張ればいい」と頭で考えた部分と、マシンの挙動が一致することです。

フロントスポンソンや、リアスポンソンが取り付けられている。これにより、格段にマシンの安定性が向上した。

「思い通りに操れるマシン」ができれば、エンジンパワーはさほど問題ではない

WJS ちなみに、エンジンは変更しているのですか?
加藤 レースのレギュレーションで「排気量は650ccまで」と決められていますが、このマシンは、PJSのサンダージェットに搭載されていた532ccのエンジンを、そのまま使っています。

WJS 上限で650ccまで上げられるのに、532ccで戦えるのですか?
加藤 嫌、これだと、難しい。もう少し上げていかないと苦しいと思います。でも、やみくもに仕上げるとすぐ壊れる。やれることは限られるし、やりすぎると壊れるから、難しいところですよね。

WJS 加藤店長は、エンジンパワーと足まわりでは、どちらを重要視していますか?
加藤 間違いなく足まわりです。思い通り走らせることができなければ、エンジンパワーなんて意味がないと思っています。「速いエンジンで悪い足まわり」と、「遅いエンジンで良い足まわり」だったら、後者のほうがいい結果が得られます。

WJS この550は、ものすごく試行錯誤して、「加藤店長が乗りやすい仕上がり」になっているから、宝物なのですね。
加藤 はい。でも「これで完璧か」と聞かれれば、「まだまだ」と言います。でも、これに代わるものはないと思っています。
WJS 550は、ライディングテクニックはもちろん、チューニング技術も大事。このマシンは、本当にピュアなモータースポーツですね。

PJSのサンダージェットに搭載されていた、532cc、50馬力のエンジン。

「まだまだ開発の途中」だという、唯一無二の加藤店長の宝物。

 

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