私がゲレンデでブイを回っているとき、そのエンジン音は聞こえてきた。突然現れ、後ろから私を猛追してきたのは、旧型の黒いX-2。「追い抜かれてなるものか!」と、自分のライディングに集中し、必死で走った。そして、気がついたときにはX-2はコースアウトして、遠くの水面を走っていた。
この乱入の一部始終を、仲間が陸上から見ていた。「何とか抜かされずにすんだ。ドンナモンダイ! 俺もなかなかヤルだろう」という気分で、「ビックリした!!」と仲間に言うと、「あの旧ペケ(X-2)、カッケェー!」と一言。……納得いかない言葉。
よく聞いてみると、後ろから追いかけてきた旧型の黒いX-2は、ブイごとに迫力満点の「渾身のレッグターン」を披露し、私との「格の違い」を見せつけながら周回して去っていったという。抜かれまいと目を三角にしながら、前しか見ていなかった私。そんなことになっているとは露知らず、抜かされなかった事実だけを噛みしめ、1人、悦に入っていた……という、間抜けな話なのだ。
そのX-2は、ブラックを基調に凝ったペイントが施されていた。持ち主が大事に乗っていることがよく分かる、どこもかしこもキレイなマシンだ。あとからオーナー氏に尋ねたら、「エンジンだけは750、あとはノーマルのまま」と言う。
車でも何でも、自分が「本当に好きだ」と思っている乗り物に乗っている人は格好いい。「話題性が高いから」とか、「人に褒められたり、羨んでもらえるから」という理由で選んでいる人が、最近は多いような気がする。
乗り心地は極めて悪い、よく故障するが、その車を心底愛している。 運転するのは楽しいが、彼女にはとても評判が悪い。そんな車を大事に乗っている人のほうが、私は好きである。まして、それが古いヴィンテージカーなら、なおさらだ。自分も、いつまでもそんなカーオーナーでありたいと思う。
人がどう思うかより、「自分がどうなのか」のほうがとても重要なのだ。「自分が好きなもの」と一緒にいる時間は素晴らしい。ジェットも少しだけ歴史が積み重なり、そんな時代になってきたのかもしれない。
旧型の黒いX-2のオーナー氏は55歳。「自分に正直」に、「好きなジェット」で、「遊び方にこだわり」ながら、大事に乗っている。
そんなジェット乗りが増えると素敵だ。
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