「マスタング(Mustang)」とは、アメリカのフォード・モーター社が製造販売している車。マスタングには、「野性の馬」という意味があります。1964年に初めて発表されました。低価格にもかかわらず、「フルチョイスシステム」と呼ばれる多彩なオプションシステムが評価され、1960年代、アメリカの好景気と重なって爆発的ヒットとなりました。
マスタングには、大まかに分けて7世代のモデルが存在します。ここでは、初代と2代目の説明をしましょう。
※「フルチョイスシステム」とは、標準装備を簡素にして、本体価格を抑える代わりに、オートマチックトランスミッションや、ビニールレザーシート、ホワイトリボンタイヤなど、多くのオプションを用意し、自分の欲しい車に仕上げること。
スポーティな外観と充分な性能、「フルチョイスシステム」が受け、アメリカ自動車史に残る大ベストセラーとなりました。1968年モデルは、スティーブ・マックィーン主演の映画「ブリット」に使われ、今でも強烈に人気があります。
1969年に「BOSS429 Mach1(マッハ1)」が登場。初代に比べて大型化し、価格も上がりました。BOSS429は、ビッグブロックのヘミエンジンを搭載。カタログスペックでは375馬力となっていますが、実際には600馬力近くあったと言われています。1971年モデルが、映画「007 ダイヤモンドは永遠に」のボンドカーに採用。日本でも、1973年モデルのマッハ1が、高速取締用車両として栃木県警察に導入され、現在、鹿沼市の免許センターに展示されています。
古いマスタングを見た。マスタングといえば、スティーブ・マックィーンが愛した車として有名ですが、美しさと同時に、男らしさを感じるのが不思議です。この車をひと目見て、思わず胸がときめいた。女性がこの車を見ても、あまり感激しないかもしれません。古い車だし、たいして綺麗なカラーリングでもない。ましてや、自分で運転してみたいなどとは思わないでしょう。
しかし、男ならこのマスタングを走らせている自分の姿を、想像せずにはいられません。「たかが、クルマ」と思う人は乗らなければいい。この車、結構、乗る人を選ぶ車だと思います。モチロン、乗ろうと思えば、免許があれば誰でも乗れます。しかし、「似合うのか?」と聞かれたら、ハードルはかなり高い。個人差は大きいでしょう。
この車には、大人の男が乗ってほしい。しかも、ジェントルマン然としている人よりは、ブルーカラー風で「普通の感じで、なぜかカッコいい人」が良い。そう考えたとき、私の脳裏には、映画「ブリット」のなかで、マスタングの運転席からカメラを見つめるマックィーンの姿が思い浮かびます。
不思議なものです。高額なスーパーカーから変な人が降りてきても何とも思わないのに……。古いアメ車には、金だけでは解決できない、「何か」があるのかもしれません。