「 WGP#1 WORLD CHAMPIONSHIP 2025 」の開催後に本誌が思った本音。
5月15日 ~18日まで、大阪府・二色の浜 海浜緑地で 行われていた「 WGP#1 WORLD CHAMPIONSHIP 2025( 以下、WGP#1 ) 」が、無事に 閉幕した 。
今回のWGP#1の 注目は、「 Pro Ski Grand Prixクラス( 以下、GPスキー ) 」だ。
GPスキークラスで 優勝したのは、Kawasaki Jet Ski Racingのエースライダーであるジミー・ウィルソン( Jimmy Wilson )選手である。
今大会、ジミー選手はホール・トゥ・フィニッシュを 連発し、圧倒的な 速さを 見せつけての 優勝である。
ジミー選手は、1989年4月生まれで 現在36歳。
非常に ナイスガイな 人物で、礼儀正しく、こちらからの 質問に 対しても 丁寧に答えてくれる。
多分、彼個人のことを 嫌う人はいないだろうと 思うほど、素晴らしい 人間性を 兼ね備えた選手である。
GPスキークラスで 優勝した、ジミー・ウィルソン( Jimmy Wilson )選手。
しかし、ジェットのレースにおいて、「 ジミー選手が 世界ナンバーワンの実力か? 」と 聞かれれば、今までは「 世界の トップ3に 入るほどではない 」と 思っていた。
彼よりも 先に、名前が 挙がる選手が 何人もいる。
そのうちの一人が、現世界チャンピオンであるKevin Reiterer( ケヴィン・レイタラー )選手だ。
だが、今大会 ケヴィン選手は 予選落ち。
日本最速レーサーである 小原 聡将 選手も、表彰台には 立てなかった。
小原 聡将 選手(写真左)とKevin Reiterer( ケヴィン・レイタラー )選手(右)。
ジミー選手が 所属しているのは、「 Kawasaki Jet Ski Racing 」。
メーカーの ファクトリーチームである。
「 さすが メーカー 」と 称賛するほど、マシンの 進化は 素晴らしかった。
本大会は、日本 で開催される 唯一の 国際大会なので、世界からも 注目されている。
カワサキが、この大会に どれほど 力を入れてきたのか、肌で 感じられる ほどであった。
ジミー選手が乗っていたカワサキのワークスマシン。
GPスキークラスの レースを 見ていて、本誌が 感じたことがある。
スタート時は、他の選手が ジミー選手より 先行しても、第1ブイに 到達するまでに 彼に 追い抜かれ、どんどん 引き離されていくのだ。
「 さすが メーカー・ワークス 」と 感じると 同時に、「 このあたりで やめて いただきたい 」と 思った。
ジェットは モータースポーツだ。
マシンと ライダー 双方の スキルが 噛み合ってこその「 勝利 」は 当然だ。
さらに、メーカーとして 出場する 以上、生半可な マシンを 持ってこない。
マシンの 仕上がりが 素晴らしいのは 当然のことだと 思うが、レースに対する“モヤモヤ”は 拭えない。
そう思うのには 理由がある。
スタートで前に出ても、1ブイ到達までにワークスマシンに追いつかれ抜かれる。
このGPスキークラスに参戦している 選手は、全員が カワサキのエンジンを ベースにしたマシンで戦っている。
船体は「 FAST POWER SPORTS 」だったり「 Pro force 」や「 インターセプター 」だが、“中身”はどれも 「 カワサキ エンジン 」なのだ。
そこにきて、エンジンを 知り尽くした 製造メーカーが本気で 勝ちにきたら、プライベーターでは とても 太刀打ちできない。
昨年に続き、2回目の開催となった「 WGP#1 WORLD CHAMPIONSHIP 2025 」。
◆
今大会の ジミー選手の 走りを見る限り、「 多少マシンが劣っていても、選手が 頑張れば 互角に 戦える 」というレベルの “差”では なかった。
大変に 失礼な 発言ではあるが、「 GPスキークラスで カワサキ の ワークスチームが 勝つこと 」に対して、本誌は 何の 感慨も 抱かないどころか、危惧しかない。
小原選手や、期待の若手である 佐藤 颯志 選手がスタートで 飛び出しても、第1ブイに 到達する前に ジミー選手に 追い抜かれる。
それほど「 Kawasaki Jet Ski Racing 」のマシンは圧倒的すぎた。
「 Kawasaki Jet Ski Racing 」が、これ以上GPスキークラスで 強さを 発揮すると、やめる選手が “続出”し、このクラス自体が “盛り下がる”。
プライベーターが あのレベルの エンジンを 仕上げようと 思ったら、資金が いくらあっても足りないし、無力感に 襲われる。
その結果、どうなるかといえば、「 レースをやめる 」のだ。
これは、過去の歴史からも明らかだ。
ジェット業界・レース業界 の 健全な 発展を願う 本誌として、「 Kawasaki Jet Ski Racing 」に お願いしたいことは“ひとつ”だけである。
皆が カワサキのエンジンで マシンを作り、プライベーターが しのぎを削り合うGPスキークラスではなく、
「 シードゥの ロータックスエンジンの 技術者 」が関係していると 言われるマシンで 勝ち続けている「 PRO RUNABOUT GPクラス 」のクウェート勢と、“真っ向 勝負”を してほしい。
そして、勝ってほしい。
◆
「 PRO RUNABOUT GPクラス 」では、今年も クウェート勢が「 ワンツー フィニッシュ 」で 完全勝利した。
再度書くが、彼らは「 プライベーター 」とは 言っているが、その実情は「 シードゥ・ファクトリー 」と言っても 過言ではない。
彼が 乗っているマシンは、シードゥのエンジンを 製作している「 ロータックス 」の関係者が 多数在籍していると言われる「 イージーライダー 」製の コンプリートマシンである。
現在、クウェート勢のマシンに 勝てる ランナバウトは いない。
プライベーターが メーカーファクトリーと “戦う”ことは 無理なのだ。
だからこそ、メーカーファクトリーの「 Kawasaki Jet Ski Racing 」には、「 PRO RUNABOUT GP クラス 」で 彼らとガチの勝負をしてほしい。
もし ジミー選手の マシンが、100% カワサキ製の「 SX-R 」だったら、「 さすが メーカー 」と 皆が賞賛しただろう。
しかし、この船体は「 ハイペリオン( HYPERION ) 」である。
「 HYPERION POWERED BY KAWASAKI 」といい、カワサキ と タイの「 RIVAL 」による、初のアフターマーケット ハル・コラボレーションだという。
このマシンが 勝っても、売れるのはカワサキの ジェットではなく、ハイペリオンだ。
“メーカーコラボ”というが、一体どこに 向かっているのか、正直、理解に苦しむ。
他の選手がレースをやめ、レース人口が 減ればカワサキにも 利益がない。
◆
私見だが、GPスキークラスで カワサキが すべきことは、「 ハイペリオン 」ではなく、「 SX-R 」を 勝たせることだと思う。
現在、「 FAST POWER SPORTS 」や「 Pro force 」の 後塵を 拝し、「 GPスキークラスでは 使い物にならない 」と 言われてきた「 SX-R 」が よみがえれば、断然 やる気が出るライダーが “続出する”だろう。
その方が、私も 含めて より多くの 人々が感謝する はずだ。
お金の 掛からない レースにしないと 明日がない。
それには、純正マシンで“戦える”ことが、必須 なのである。
ジェットスポーツの 黄金時代は、1990年代 前半だ。
衰退が 始まったターニングポイントは、「 1996年 」である。
この年、アメリカで ランナバウトクラスが メインレースとなった。
結果、大手スポンサーや テレビ放映が 無くなった。
「 観客が 見たいのは、マシンの“速さ”ではなく、レーサーの技量だった 」という証拠だ。
見たい人が いる限り、視聴率が大切な テレビ局は 絶対に 離れない。
ランナバウトは、選手の 高いスキルを 駆使した「 エキサイティングなレース 」だと 判断されなかったのである。
大手スポンサーが 離れてから 数年間は、ヤマハ、カワサキ、シードゥの 各メーカーが ファクトリーチーム態勢で、威信を 懸けて「 ランナバウト クラス 」で 戦い 始めた。
メーカーは、「 レースで 勝つことで、ランナバウトが 売れる 」と考えたからだ。
ランナバウトの プロクラスが 初めて 出来たのが「 1994年 」。
1994年、1995年、世界チャンピオンは USカワサキの 金森 稔 選手である。
「 1996年 」ヤマハ、カワサキ、シードゥの 3メーカーがファクトリーチーム体制で、「 ランナバウト クラス 」で 戦い 始めた。
メーカーが、同じ土俵に上がった 記念すべき 「 年 」となる。
まだ、レースと 販売が 密接に 結びついていた“最後”の 時代だ。
その記念すべき 1996年、テレビ局が離れていったのである。
この年のチャンピオンは、チームシードゥの クリス・フィッシェティ。
その後、ランナバウトは「 レジャー志向 」へと シフトしていき、メーカーは 次々と レースから 撤退していく。
チームシードゥは、1998年に ファクトリーチームを解散した。
ランナバウトの販売に、レースの勝敗が“影響しない”という、判断が下されたのだ。
そして、メーカーに“見捨てられた”レースはガレージ ビルダー たちによって 細々と 存続することになる。
ジェットが、かろうじて「 スポーツ 」と認識されているのは、「 レース 」が あるからだ。
それが なくなったら、世間一般が 思う「 輩( やから )の 乗り物 」に 成り下がってしまう。
そろそろ、レース関係者全員が本気で 危機感を持たないと、レースが 終わる。
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日本で行われた 国際大会【RACE】【 2nd STAGE 】「WGP#1 WORLD CHAMPIONSHIP 2025 」ジェットスポーツの最高峰『 レース・リザルト 』
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