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全国の優良ジェットショップと経営者の歴史を紹介するコーナー「シーゲッツ」「代表・西本茂隆」氏 No.2 ジェットスキー(水上バイク)

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前項からの続き

シーゲッツの礎を築いてくれた、「正規ディーラー」という権利

WJS シーゲッツは、オープン当初からシードゥ、カワサキ、ヤマハの3メーカーの正規代理店だったのですか?
西本 僕、すごくラッキーで、当初からカワサキとBRPの正規ディーラーとしてスタートできました。ヤマハだけ1年遅れです。

WJS 普通、そんなにすぐに正規販売店にはなれないですよね?,
西本 はい。最初はディーラー権なんて100%取れないと思ってオープンの準備をしていたら、たまたまカワサキの担当の方に「西本、何やってんだ?」って聞かれたので、「ジェット屋やろうと思って用意しています」って言ったら、「お前がやるんだったら、ARK(カワサキ正規取扱店)の看板やらなきゃいかんだろう」って。「本当にやるのか?」って聞かれたので、「やらせてくれるなら、絶対にやりたい」って言ったら、各方面に話を付けてくれたんです。

WJS それもすごい話です。シーゲッツはシードゥメインのショップだと思っていたのですが、カワサキが最初だったんですね? シードゥはどういうきっかけだったのですか?
西本 まだショップをオープンする前、名古屋ボートショーで「何日にオープンします。シーゲッツと申します」って、カワサキのブースでビラを配っていたんです。そうしたら顔見知りの西武マリン(当時のシードゥ総代理店)の人が、「ARKはいいけど、ウチのは売らないの?」って声をかけてくれました。そのとき、近所にもう1件、僕が一番世話になっていたジェットショップがあったんで、ボートショーの会場でその社長のところへ行って、「今、シードゥをやらせてくれるって言ってもらえたんですけど、どうしましょう?」って相談したら、最初は驚いていましたが「向こうからそう言ってもらえるのはありがたいことだから、やらせてもらえ」って、快くOKしてもらえました。そのおかげで、オープン前にカワサキとシードゥの正規代理店になれたんです。今考えても、正規の販売権もなく、こんな海もない場所でショップをやっていても長くはなかった。最初にディーラーになっていなかったら、今のシーゲッツという店はなかったって100%言い切れます。だから、今でもカワサキの方向に足を向けて寝るのはイカンって思います。

WJS 頑張っている西本社長の姿を見て、まわりが盛り立ててくれたのですね。
西本 本当に、ありがたいと思っています。オープンのときはシーゲッツという名前でしたが、一番最初はJSP瀬戸(JSP:ジェットスキープラザの略。当時、カワサキの正規販売店はJSP+地名が店名として付けられていた)で登録していたんですよ。オープン当初から5年間くらいは、カワサキがメインでやっていましたね。

シーゲッツ代表・西本茂隆氏。

購入してくれたユーザーが、幸せなジェットライフを送れるようにしたい

間違った使い方をしなければジェットは壊れないし、余計な修理代も使わなくていいんです

WJS シーゲッツのお客さんは、主にどこでジェットに乗っているのですか?
西本 ウチは内陸部で、水辺が近くにありません。でも、木曽川まで45分ぐらい。長良川、内海、南知多、琵琶湖も1時間〜1時間半くらいで行けます。少し足を伸ばすと日本海も遊ぶ範囲内です。

WJS メインゲレンデというのはないんですね?
西本 どこでも行けるのがジェットだと思っています。大きなクルーザーはマリーナに預けるしかない。けれど、ジェットを預けたら、ジェットのいいところが全部なくなっちゃう。自分の家の目の前に置いて、暇さえあれば可愛いがれる。今日は昼で仕事が終わったから、ちょっと木曽川へ行くか。夏休みに入ったから内海に行くか、琵琶湖に行くか、お盆は日本海に行くかって。どこでもトレーラーで引っ張って動けるのがジェットであって、だからこそ飽きないと思うんです。

WJS 西本さんが、初めてジェットを始めるお客さんに対して言っていることはありますか?
西本 そうですね……。これからジェットを始める人には、一番最初の納艇のとき30分くらい喋っています。

WJS それはすごいですね。何を話されるんですか?
西本 車を買い替える人って、はなから車の乗り方を知っているけど、ジェットに初めて乗る人って、何も分からないですよね。でも、乗り方次第で、何年経ってもキレイに乗れるんです。「これ10年も乗ってるの?」っていうくらいキレイなジェットもあれば、「これ、乗ってから5年くらい?」と聞くと、「いや、昨日、新艇で買った」って。「えー、こんなにボロいのー!?」っていうくらい、乗り方によって違いが出るんですよ。

WJS 大事にしていたかどうか、ひと目で分かりますよね。
西本 ジェットって、使い方を間違えると本当にお金のかかる乗り物になる。せっかく買っていただいたんだから、ずっとキレイな状態で乗ってもらえれば気持ちいいし、何年か先に買い換えるときに、キレイなら高く買ってあげられる。間違った使い方をしなければ、壊れないし、修理代も使わなくていいんです。

毎回大好評のシーゲッツ主催の琵琶湖ツーリング(2014年)。事前に琵琶湖講習を受講してもらうことを徹底している。西本氏は、ローカルルールの遵守に気を使い、出発前のミーティングでも、参加者にルールを徹底させている。

お客さんが次に買い換えるときまで、修理代を使わせたくないんです

WJS 先のことを考えて、最初に口が酸っぱくなるほど取り扱い方法を教えるわけですね?
西本 はい。買っていただいたお客さんに言うのは、「僕は修理屋ではありません。買っていただいたお客さんに満足していただくためのサービスをやっているだけで、修理で儲けようとは思っていないし、修理でメシを食っていこうとも思っていません」って。お客さんが次に買い換えるときまで、修理代を使わせたくないんです。ガソリン代だけで乗っていただけるっていうことは、満足してその遊びを続けてもらえるっていうことですよね。インペラーに石を噛ませて、毎回、5万、6万円もするインペラーを買って乗っている人もなかにはいます。でも、乗るたびにそんなにお金がかかるなら、そんな遊びはやめちゃいますよね。だから、最初に「絶対に腰よりも浅いところに行かないで」などと説明していると、すぐに30分以上経っちゃうんですよ。

WJS お客さんのなかには、ジェットをカスタムをされる方は多いのですか?
西本 基本的に、僕は推奨していません。改造するとツーリングにいけなくなる。遊べるところが狭くなっちゃうんですよ。100万円かけて改造してすぐに壊れたり、ツーリングにも行けないような乗り物だったら、1年待てば同じような値段で、ノーマルの300馬力が買えるよって。それに、改造したら後から売れないよって言います。

WJS それでも、カスタムをしたいという人はいらっしゃるわけですよね?
西本 それですね。僕がたまに、そういうお客さんの気持ちを忘れているなって思うところなんですけど、ジェットだったら、こんなところをグリーンのネジに換えて何が楽しいのって思うくせに、自分がオートバイを買ったら、そういうパーツを付けますもん。それがお客さんの気持ちです。だから従業員にも、「俺、今な、このオートバイのネジ買ってきて付けたら喜んでるだろう。そういうお客さんたちの気持ちを考えてみろ」って言ってます。

300馬力もする乗り物が、何もジェットのことを分かっていない店で買えるのって、すごく怖いことだと思います

WJS シーゲッツでは、他のお店への業販はされていないと聞いたのですが、何か理由があるのですか?
西本 僕は昔から業販が嫌いですけど、全くやらないわけでないんですけど、僕のなかの「業販のルール」があって、例えばカワサキ専売のお店があるとします。ずっとそこでカワサキの船を買っていたお客さんが、「今回だけシードゥが欲しい。でも、そのショップで買いたい」ということはあると思うんです。そのときに「西本、カワサキを3台も4台も乗り継いでもらっていたお客さんが、今回、シードゥが欲しいっていうから、お前のところから1台分けてもらってもいいか?」って言われたら、「もちろん、いいですよ」って言います。これが、僕は業販だと思うんですよね。

WJS それなら、売ったあとも安心ですよね。
西本 はい。お客さんを満足させられない、組み方も知らない、ハンドルの付け方も分からない業者がハンドルを付けて、説明もできない人が、何も知らない初心者にジェットを売る。それで間違った使い方したら、命も失くす危険性もあります。命を失くす事故が起きたら、今のオーナーさんたちの乗る場所も減っていく。業界が狭くなっていく、世間からも叩かれる。いいことはひとつも何もないです。

WJS その通りだと思います。
西本 僕のところは、これからお盆にかけて、「ジェットスキーの業販してもらえますか?」っていう電話が、何10件とかかってきます。「失礼ですが、何屋さんですか?」って聞くと、「うちは、しっかりした車屋です」。「そうですよね、しっかりした車屋さんですよね。ウチはジェット屋なんで、別に定価で売っているわけでもないし、乗れる状態にセットアップして乗り方も説明させていただきますので、普通に買いに来てください」って断わります。だけど、世の中のジェット業界の業販って、「○×モータースと申します。ジェットの業販してもらえますか?」、「ああ、いいですよ」って、それが業販になる。それっておかしいじゃないですか。僕は、それをやったらこの業界が終わると思っています。

WJS 海の上は自己責任の世界ですから、ジェットの取り扱いも分かっていないところで買うのは、本当は怖いことですよね。
西本 300馬力もする乗り物が、何もジェットのことを分かっていない店で買えるのって、ピストル買うようなものなんですよ。先日も、うちの従業員をメーカーのサービス講習会に行かせていますし、海外の研修も行かせます。どこでも買えるなら、そういったことは必要ないですよね。僕は、ディーラー権を持ってなくても、誰がどう見てもジェット屋で、一生懸命勉強して、それで飯を食っている人たちには業販します。それはアリです。壊れずに、ユーザーさんが満足して楽しんでもらうことが、一番だと思っていますから。

春に行っている名古屋ツーリング。上は名古屋港で記念撮影したもの、下はセントレア中部国際空港(2015年)。シーゲッツでは、年間を通じて、さまざまなショップイベントを行っている。

シーゲッツ。

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