映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と聞けば、「あぁ、知っている」という人が大多数を占めるほどのタイムマシン映画の不朽の名作だ。
自動車型タイムマシン「デロリアン」は、ガルウィングとステンレスボディというクルマのデザインと相まって、作品に多大なインパクトを与えてくれた。
今回、国内のトップフリーライダー、村尾"DEVIL"高明氏が、「デロリアン」を模した「スーパージェット」を造ったという。「スーパージェット」は、ヤマハの1人乗りスタンドアップで、このデロリアン型は最初期の旧式スーパージェットをベースにしている。
細部に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」への愛に溢れた造形になっており、1985年~1990年代に青春を過ごした人なら、思わず映画を見返したくなる出来栄えだ。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の第1作目は、1985年に公開された。非常にざっくりあらすじをいえば、アメリカの高校生マーティ・マクフライ(マイケル・J・フォックス)が、彼の親友で科学者のエメット・ブラウン、通称ドク(クリストファー・ロイド)の愛車でありタイムマシンでもある「デロリアン」に乗り、30年前の1955年にタイムスリップして両親の恋路を助ける物語だ。
本作は全3作あり、Part.2では西暦2015年の未来に行き、Part.3では過去にタイムトラベルしている。第1作目から3作目まで、主人公をタイムスリップさせるのが、車型タイムマシンの「デロリアン」 だ。
取材当日、村尾氏が「デロリアン」のカラーリングを施したスーパージェットを運んできた。ひと目見た瞬間「本当にデロリアンじゃん!」と、言ってしまった。
シルバーカラーといい、船体の外側にわざと出しているホース類といい、あのクルマを彷彿とさせる要素が満載だ。
おまけに、青いLEDをバンパー付近に取り付けてあり、タイムスリップをする直前の青い光を発するデロリアンが見事に再現されている。
「船体にメタルのステッカーで青いラインを入れてありますが、それもタイプスリップをしたときに光るところをイメージしました」と村尾氏は言う。
今回、村尾氏がなぜこの「デロリアン」を模したスーパージェットを造ったのかを聞いてみた。
WJS ものすごく格好いいスーパージェットです。もし、デロリアンがクルマでなくてジェットだったら、きっとこんなデザインになっていたような感じです。どうして、このマシンを造ろうと思ったのですか?
村尾 本当は、今年のハバス(ワールドファイナル)に、JS 550をデロリアンカラーにして、バレルロールをやりに行こうと思ったんです。だけど、新型コロナで行くのを取りやめたから、それならと思って。それともうひとつ、映画のPart.2で、2015年に主人公のマーティが47歳だったんですよ。僕、今年47歳だから、今年中に造っておきたかった。
WJS でも、これはJS 550じゃなくて、スーパージェットですよね?
村尾 はい。一番、デロリアンっぽい形のジェットが旧型のSJでした。それで、旧型のSJをベースに造りました。
WJS どうして、ジェットをデロリアンにしようと思ったのですか?
村尾 僕が行っているヴィンテージイベントの名前が「OUT A TIME」なんですが、これは、デロリアンのナンバープレートと同じなんです。だから、造ってみたいなって。
WJS 「OUT A TIME」は、どういう意味なのですか? イベントも同じ名前を使っているので、思い入れがある言葉だと思うのですが?
村尾 ガキのころバック・トゥ・ザ・フューチャーをみて、「何だろうな」って気になって辞書で調べたんですよ。そうしたら、「時を超える」みたいな意味だった。それが、ずっと頭にありましたね。2年前にビンテージのショーをやることになったとき、ショーの名前を「ビンテージスキーなんたら」って付けるのも格好良くないなって考えていたら、そういえば「OUT A TIME」ってあったなって。それで、イベント名もそれにしました。イベント内容にもバッチリな名前で、浸透したし、いいかなって。
WJS このマシンを造るにあたって、苦労したことはありますか?
村尾 この船のベースは、白木さん(白木雄二選手)が、2015年にハバスに出たときのSJなんです。前に、「ハルだけいらない?」と聞かれて、レースハルだから勉強の意味も兼ねて譲ってもらったんです。ハンドルポールも最初からアルミが入っていたし、パーツを集める苦労がなかったですね。もともとレース用のハルだけど、フリースタイルもフリーライドもできるようにフットホールは付けました。
WJS ベースのシルバーは塗装ですよね? この色も、とてもデロリアンっぽいですが、何かリクエストはしたのですか?
村尾 デロリアンのステンレスっぽい感じを出したかったので、普通のシルバーでクリアを薄めに吹いてくれってお願いしました。いい感じに仕上がっていると思います。
WJS 船体の外側に、ホース類がいろいろと取り付けられていますが、これもメカニカルでいいですね。
村尾 意味なくホースを出すのも嫌だったんで、ちゃんと冷却水が通るようにしてあります。ハンドルポールに通っているホースは「ぬくぬくキット」です。それと、フードのラッチの上に3本、プラグの黄色いラインが出てるでしょ。あれも、プルトニウムを差し込む原子炉っぽく造りました。
WJS このマシンをお披露目したとき、まわりの反応はいかがでしたか?
村尾 ものすごいウケけるか、スベるかどっちかだと思っていました。今日、ジェットフィールド湘南で、メチャメチャ受けたんで良かったです。
WJS 今回のデロリアン・スーパージェットの出来は、村尾さん的にいかがですか?
村尾 出来栄えは100点! イベントもやっているし、ストーリーがある改造になってよかった。次の「OUT A TIME」のイベントで、これを使ってワンメイクのタイムアタックをしても面白いかなって思っています。
黄色い3本のプラグ
フードラッチの上に取り付けられた黄色い3本のプラグは、映画でデロリアンに取り付けられていた「原子炉」を模している。映画では、運転席の後ろに設置されたこのY字型の装置から強烈な光が出る。
「OUT A TIME」のナンバープレート
フードに付けられた「OUT A TIME」のナンバープレートは、デロリアンが付けているものと同じ。意味は「時を超える」だ。ヴィンテージマシンにピッタリのプレートである。映画のPart.1で、タイムマシンの実験時、このナンバープレートがくるくる取れたのは印象的なシーンだった。
ハンドルポールに這わせたホースは「ぬくぬくキット」。デザイン性だけでなく、実用性も兼ねている。ボディのシルバーは、わざと表面のクリアーを薄めに吹いて塗装してもらった。デロリアンのステンレス感を損なわないようにするためだ。
エンジンは、760LTD 程度の改造が施されている。
メタルの青いライン
メタルのステッカーで青いラインを入れた。タイプスリップのとき、デロリアンが青く光るシーンを想起させてくれる。
角度によって色が変わるキャップと、赤いライフジャケット
キャップは、バック・トゥ・ザ・フューチャー2でマーティが被っていたものと同型。赤いライフベストは、主人公のトレードマーク「赤いダウンベスト」をイメージした。映画の中でもマーティのベストは「救命胴衣」だと言われていたので、ある意味、ピッタリのチョイスだ。
このポーズでキメたい!!
ジェットフィールド湘南にいた全員で、主人公が時計を見るポーズで記念撮影。
船体に沿って、わざとホースは外に出した。「意味なく出すのも嫌だった」ので、冷却水が通るようにしてある。
映画に使われた「デロリアン」というクルマは、かつて存在した自動車製造会社「デロリアン・モーター・カンパニー」が、唯一、製造した「DMC-12」という車種を示す通称である。
このクルマを有名にしたのは、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で、タイムマシンのベースカーとして使用されている。
デザインは、イタリアを代表する工業デザイナー「ジョルジェット・ジウジアーロ」だ。メカニカル設計はロータス・カーズ。
外観上の特徴は、ボディ全体を無塗装ステンレスで覆っていることと、ガルウィング。表面は加工時のサンドペーパーの傷をそのまま残したヘアラインとなっている。アウターパネルはボルトによる固定部もあるが、FRP製のインナーボディにステンレスのアウターパネルで接着している。
プジョー・ルノー・ボルボが共同開発した排気量2,849cc、V型6気筒SOHCエンジンである。最高出力は130hpと、発売が開始された1981年当時としても、実用的なスペックだった。
映画では、時速88マイル(約142km)に達するとタイムスリップが可能となる。最高速は、公称209km/hだそうだが、「以前、一度乗ったことがあるけど、メチャメチャ遅かった」と村尾氏は言う。
デロリアンが販売されたのは約2年間。1981年~1982年12月24日までだ。発売価格は、25,000ドル(約1,600万円)。このデロリアン、2013年には電気自動車(EV)として、 世界限定30台発売されたこともある。
約9,000台生産されたが、初年度にエンジンのパワー不足が指摘され、「欠陥車」という烙印を押されてしまう。その結果、大量の事前予約キャンセルが発生し、3,000台しか売れなかった。
さらに、社長のジョン・ザッカリー・デロリアンが麻薬取引容疑で逮捕(のちに、無罪が証明された)と、あっという間に会社は経営不振に陥り、倒産に繋がった。
これらの逸話やスキャンダルを伴った希少性と、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」での活躍により、「DMC-12」は1980年代を代表するカルトカーとなり、21世紀初頭の現代でも、多くの自動車マニアのコレクション対象となっている。
デビル村尾氏と共に埼玉県のクルマショップ「AREA TEN-ONE」にお邪魔した。ここは、日本でも有数のデロリアンを取り扱うディーラーなのだ。
店内には、3台のデロリアンが飾られていた。見ていると欲しくなる不思議なクルマだ。
運転席の後ろ(後部部分)は、こうなっている。
AREA TEN-ONEの今井悠貴社長(写真左)と村尾氏(右)。このショップでは、デロリアンだけでなくナイトライダーなども取り扱っている。
当時のアメリカの速度規制は85マイル(約136キロ)まで。オリジナルのデロリアンは85マイルまでしかメーターの表示がないが、映画同様、別のスピードメーターがダッシュボードの上に付いている。
ショップの看板も「バック・トゥ・ザ・フューチャー」風だ。
映画のデロリアンを造った会社で作ってもらった本物のデモカー。
内装も、全て映画と同じに作ってもらったという。
名言復活!?
村尾氏「僕がマーティン、市川さんはドクをやってよ!」
市川氏「30年後にまた会おう」
村尾氏「待ってるよ、ドク」
こんなスーパージェットで時を超えてみたい。
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