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情熱の嵐! 2週間の完全隔離を含め、レースに費やす期間は約1カ月。それでもタイに行きますか? (水上バイク)ジェットスキー 

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14日間隔離されても、お金が倍かかってもタイに行く!!

チーム・Bell Factory、世界戦への参戦がブレない理由

コロナ渦の今、主なスポーツイベントがことごとく延期や中止に追い込まれている。
我がジェットスポーツ業界も、毎年12月に行われ、世界的に注目されている国際大会「JET SKI WORLD CUP」が昨年は開催できず、今年、3月に延期されるというアナウンスがあった。しかし、世界的にコロナの流行が認められ、再び4月に延期することが決まった。

タイのパタヤビーチで開催されるこの大会、今、タイに入国する場合、ホテルで14日間の完全隔離が義務付けられている。隔離期間終了後、陰性と認められたら、ようやく通常通りの行動ができるのだ。
先の状況が全く読めないなか、海外のトップライダーたちも参戦に二の足を踏んでいる。主催者も「エントリーを取り消してもノーペナルティー」という異例の声明を発表した。主催者側は「必ず開催する」と発表しているが、刻々と変わる世界情勢に運営側の困惑も感じられる。

レース期間は1週間、それ以外にマシンの調整などのために、何日か前から現地に入って準備をしたい。さらに隔離期間が2週間必要となる。このレースのためだけに、1カ月間程度の時間を作らなければならないのだ。

いくら大会参戦を決意して1カ月間の時間を確保しても、現地で関係者の感染が判明すれば、即中止、または延期ということも十分考えられる。すべて自己責任、自己判断なのである。

そんななか、一貫して参戦を表明しているチームがある。「Bell Factory(ベルファクトリー)」の片野丈一郎選手である。彼は一昨年のトリプルクラウンの初代チャンピオンであり、この大会に懸ける意気込みも並々ならぬものがある。
「何があっても絶対に参戦する」と決めて、一貫して参戦を公言してぶれない姿勢だ。
ベルファクトリーは、ライダーの片野丈一郎選手、片野選手の実父でチーム監督の片野宣之氏、マシンコンストラクターの藤江功一氏の3人で、世界戦2連覇を目指している。

チーム・ベルファクトリー。写真左から:コンストラクター・藤江功一氏、中央:ライダー・片野丈一郎選手、右:チーム監督・片野宣之氏


特別インタビュー・進化した自分とマシンを見てほしい!

チーム・ベルファクトリーが見る未来

WJS このコロナ禍で、昨年12月に行われるはずだった「JET SKI WORLD CUP」が2度も延期になりました。それでも参戦の意思は全く変わらないのですか?
片野宣之氏(以下、宣之) はい。ジョー(丈一郎選手)が行きたいというので、絶対に連れて行ってあげます。

WJS 丈一郎選手の「参戦したい」という意思が固いのですか?
片野丈一郎選手(以下、丈一郎) タイトルを獲得した一昨年と、今では全然違います。3カ国の合計ポイントで競うトリプルクラウンのタイトルは獲得しましたが、あのときの自分の実力では、真のチャンピオンだとは思っていません。

WJS トリプルクラウンのタイトルを獲得したことで、心情的に何が変わったのですか?
丈一郎 今だからこそ、(ダスティン・)ファージング選手や(クリス・)マックルゲージ選手、セッツーラ選手と、もう一度戦いたいのです。

WJS 今なら、彼らに勝てると思いますか?
丈一郎 はい。少なくともマックルゲージ選手とセッツーラ選手には勝てると思っています。

「今年は自信がある。自分が王者などとは思っていないが、今回はライバルを倒して堂々と勝つ」と片野丈一郎選手は語る。


体の一部になるほどアジャストできたニューマシン

WJS タイトルを獲得したときの大会と今年では、何が一番変わったのですか?
丈一郎 マシンと自分の両方です。昨年の春、タイのフリーダム製のドライカーボンハルを購入し、藤江さんにコンプリートマシンを製作してもらいました。慣れるまで最初は苦労しましたが、昨年末ぐらいからは、完全に乗りこなせるようになりました。今は、誰にも負ける気がしません。

WJS 22歳の伸び盛りの選手のライディングスキルが上がるのは理解できますが、マシンは何が変わったのですか?
藤江 前回のマシンはノーマルの純正ハルがベースでした。前付きでコーナリングは速かったのですが、その分、スタートではドライカーボンハルにかないません。今回はファージング選手、マックルゲージ選手、セッツーラ選手が乗っていたのと同じドライカーボンハルに、僕がチューンしたエンジンを搭載しています。

WJS 前回より戦闘能力が上ったのですか?
丈一郎 はい。格段に上です。その分、最初は乗りこなすのに苦労しました。速いのは良いのですが「どうやって曲がるの?」からスタートしました。そのかいあって、今では完全に体の一部です。世の中のジェットの中で、このマシンが1番好きです。

WJS 前回の大会ではノーマルハルで勝ちました、もし、前回も今のマシンだったらもっと楽に勝てたのですか?
藤江 それは何とも言えません。ノーマルハルは、皆さんが思っているよりも優秀なんです。特にレーシングハルはとんがっている部分が大きい。トータルバランスで言うと、ノーマルが最強なんです。

自分の体の一部のように動いてくれる。片野丈一郎選手の翼だ。

チーム監督の片野宣之氏。マシンやレースの話をしていると、メチャクチャ熱くなる。チームの強さの理由は氏にある。


自分は恵まれた環境にいる。だからこそ頑張りたい

WJS 前回の大会のとき、宣之氏が藤江氏に、走行中にマシンのフロント部分をもっと上げてほしいと指示していたのを覚えています。
宣之 他のビックネームのライダーは、トップスピードを上げるため、走行中にフロントが上っていました。ジョーだけが低い。低いとそれだけ抵抗がかかるので、体にくる負担が大きく、ダメージが残りやすいんです。

WJS それについて、藤江さんは何をされたのですか?
藤江 ライドプレートの角度など細かいセッティングで上げる対策をしました。でも、ノーマルハルのコーナリングスピードも捨てがたい。ノーマルハルの良い部分を殺してしまっては、このハルで参戦する意味がなくなる。他のライダーはドライカーボン製ですから、基本設計の違いからノーマルハルのフロントを上げる限界がありました。そういう部分のせめぎあいでマシンを開発していました。

WJS チーム監督の宣之さんから見て、丈一郎選手の走りをどう見ていますか?
宣之 ジョーは確実に成長してきましたが、若さゆえに経験が少ない。私自身も長い間レースをやっていますので、端から見ていたら分かることがあります。レース中のジョーに、他の選手の走行姿勢なんて見えるわけがありません。他の選手が、比較的、楽に走っている場面でジョーだけがキツそうだったら、その原因は限られる。そういう目でライバルとジョーを比較すれば一目瞭然です。

WJS ベルファクトリーは、ライダーだけでなく、チームで戦っているのがよく分かります。藤江さんがよく仰る「ライダー1人だけで戦っては、世界は獲れない」ということですね。
藤江 ライダー、メカニック、監督。その全てが機能してなければタイトルは獲れません。逆にチームとして機能していれば、どれかの一つがライバルに負けていても、総合力で逆転できます。

WJS そういう意味においては、タイトルを獲った一昨年はチームの勝利ですね。
丈一郎 だからこそ、今回は「ライダー」が頑張りたい。トリプルクラウンのチャンピオンというより、チャレンジャーとして、ガチでビックネームと戦って勝ちたいんです。

WJS それだけ勝算も感じているのですね。
丈一郎 はい。今、マシンも自分も十分に世界と戦えると思っています。だからこそ、ガチで戦って確認したい。父の惜しみない協力や、藤江氏に勝てるマシンを造ってもらい、自分は恵まれている環境にいることは十分理解して感謝しています。だからこそ、熱い走りで答えたいと思っています。

慢心することなく、環境に恵まれているという事実を強さに変えて、チームに報いたいと片野選手は言う。今は、一刻も早く戦いたいそうだ。

世界戦は何があるか分からない。「油断大敵」と藤江功一氏。

片野丈一郎選手、22歳。久しぶりに、世界を戦うイキのいい若いレーサーが育ってきました。応援、宜しくお願いします。


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