「レースの楽しさは何ですか?」。「人生がレース」と思えるような、強烈なレースの虜たちに問いかけた。正直な答えの中に、それぞれの考え方が明確に表れている。
ジェットスキーには、これほどまでに人生を変える力があります。魅力に満ち溢れた、レーサーとコンストラクターたちの「生の考え」をお楽しみください。
WJS 日高選手にとって、「レースの楽しさ」とは何ですか?
日高 それは何と言っても、スタートラインに並んだときの「スリルと緊張感」です。
WJS 日高選手は、日本人初のキングスカップチャンピオンですよね。それほどの経歴の持ち主でも、スタートではドキドキするのですか?
日高 ものすごい緊張感で、ドキドキ・ワクワクしています。これは、スタートラインに並んだ人にしか味わえないスリルです。でも本当は、すごく「嫌」でもあるんです。
WJS スターティンググリッドでは、常に「勝てる」と思っているのですか?
日高 そりゃー、皆、勝てると思っていますよ。
WJS マシンや体調が不調なときも、そう思っているのですか?
日高 どれだけ自分のコンディションが悪いときでも、「あわよくば」って。
WJS 「あわよくば」?
日高 だから、「行けちゃったら、嬉しいな」「行っちゃおうかな」くらいは思っています。
WJS でも、レース前に日高選手にお話を伺うと、「今日はマシンの調子が悪くて……」と、正直に話してくれますよね。そういうときでもですか?
日高 口ではそう言ってても、腹の中では全然違います。
WJS 顔色が悪く、いかにも調子が悪そうで、キツそうなときでもですか?
日高 はい。「勝てちゃう」と思っています。「行っちゃおう」「これで1番取ったら、オレ、超カッコイイな」くらいは、いつも思ってますよ。
WJS 藤井選手にとって、「レースの楽しさ」とは何ですか?
藤井 多分、僕がマシンを造っている竹野下選手なら、「勝つこと」と答えるでしょう。でも、僕は違います。「レース会場で、皆と会えること」です。
WJS でも、スターティンググリッドに並んだときは、「勝てる」と思うのではないですか?
藤井 それは、ないですね。もちろん、チャンスがあれば「いつでも行ってやるぞ!」とは思ってます。でも、勝てるとまでは思っていません。
WJS 藤井選手は、JJSBAのA X-2クラスでシリーズチャンピオンを獲得しているほどのライダーですよね? マシンも、全部、自分で仕上げているわけですから、「勝てる」と思っていると来ていると思っていました。
藤井 そこは、自分の位置は分かってますから……。ただ、レースは「最良のマシンテストの場所」だとは考えています。他のマシンと比べて、「どの部分がアドバンテージで、どの部分が劣っているか」。そこは、実戦でしか分かりませんから。
WJS 大岡選手にとって、「レースの楽しさ」とは何ですか?
大岡 スターティンググリッドに並んだときの「ドキドキ感」。あれは、ある意味「麻薬」です。
WJS それは、勝てると思っているからですか?
大岡 いや、勝てるというよりも、「俺、死んじゃうかも?」「生きて帰って来れないのでは……」です。でも、やめないんです。
WJS 現SPARKクラスのチャンピオンであり、JJSF RUNABOUT 800クラス時代には、5連覇という偉業を成し遂げてます。だから、勝てると思ってドキドキするのではないですか?
大岡 違います。海外戦で、右の選手の殺気だらけの顔を見て、左の選手の顔を見て、「あっ、これ、オレ、死ぬかも……?」って、思うことが良くあります。それなのに、「死んだら死んだで、仕方ないや」って思えるんです。これ、何なんですかね?
WJS すみません。私には分かりません。
大岡 ですよね……。理由は自分でも分かっています。「馬鹿」なんです。でも、それがいい。死んでも、何でも……。スターティンググリッドで、いつもそう思っています。馬鹿なんです……。
WJS それが、先ほど言われた「麻薬」ですか?
大岡 善良な人間をレースの虜に変える「麻薬」です。これを知ったら「馬鹿」になります。
WJS それが、「レーサーの病」なのですね。
WJS 片野選手にとって、「レースの楽しさ」とは何ですか?
片野 駆け引きです。あとは勝つこと。
WJS 勝つのが1番楽しいですか?
片野 はい。自分が1番になりたいです。
WJS だけど、勝つのは1人だけですよね。
片野 だから、「どのようにしたら勝てるのか」を追求し続けるのが楽しいんです。
WJS その努力は、「勝てる」と思っているからこそですね。
片野 はい。勝てると思っています。
WJS 今崎さんにとって、「レースの楽しさ」とは何ですか?
今崎 「結果」です。レースに至るまでの苦しさや、辛さが一気に報われる瞬間なんで。「結果」を出せたときが、1番の喜びです。
WJS 苦労も喜びなのですか?
今崎 苦労が報われるのは、「レースの結果」じゃないですか。そこだけなんで。だからこそ、「結果」を出せたときが、最大の喜びです。楽してやってないですからね。
WJS 桜井選手にとって、「レースの楽しさ」とは何ですか?
桜井 うーん……。「それなりのメンバーと戦って勝つ」ことです。
WJS レベルが低ければつまらないのですか?
桜井 そうは言いませんが、やっぱり自分が認めているメンツに勝つことが喜びです。
WJS 桜井選手は、「全日本のミスター・スタンドアップ」と呼ばれるレジェンドです。これだけ長い間、トップライダーとして君臨している桜井選手が、「レースの楽しさ」をひと言で言うとしたら、何でしょうか?
桜井 もし、僕がその答えを、「ひと言」で言えるなら、とっくの昔にレースをやめていると思います。
WJS 桜井選手でも、明確に言えないんですね。
桜井 言えないです。それくらい奥が深い質問だと思います。
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