BRP社の水上バイクは、色、形ともに革新的なデザインが多い。
あらゆる面でユーザーの予想を超えたモデルを次々と発表し、一大ムーブメントを起こしている。
現代は、「デザインの時代」ともいえる。
なぜなら、技術的な面で企業は常に競い合っており、一社だけが特別なノウハウを有するといった製品がないからだ。
同じような商品であれば、ステキなデザインを選ぶ。
我が業界のデザインをけん引するBRP社のデザインのトップ、デニス・ラポイント氏(Senior Vice-Presidents Desing & Innovations)に話を聞いた。
WJS BRPのデザインは、非常に先進的です。
大企業でありながら、なぜこれほど革新的なモノを次々と世に送り出せるのですか?
デニス 私の肩書きが、「デザイン&イノベーション」となっているように、「イノベーション(革新)」というのが、BRPの企業文化だからです。
WJS デニスさんが、ある程度、独断でエッジの効いたデザインを出していける体制だということですか?
デニス そうです。私自身がCEO(Chief Executive Officer/最高経営責任者)と、直接、意見を交わせる立場にいます。
WJS デニスさんは、「デザイン」とはどのようなものだと考えていますか?
デニス デザインとは、「疑問」であり、「探求」であり、「創造」であり、「アイデア」をまとめること。
考えるだけでなく、新しい製品のR&D(Research & Development/研究開発)も、常に行っています。
WJS BRPという企業のデザインに対する理念を教えてください。
デニス 我社には、「Innovation」、「Functional」、「WOW! Factor」という3本の「デザイン哲学の柱」があります。1つめは「革新的なデザイン」であること。2つめは、「将来的に成功するために」という前置き付きで、「機能的なデザイン」であること。そして、これが一番重要ですが、人が見て「WOW!!(ワオッ!!)」と思えること。
同じ馬力、同じ燃料消費、同じ重量……。どのメーカーも、似たような製品になる。だから、革新的なデザインで他社を打ち負かす必要があります。
WJS 機能とデザインを融合させるのは、大変ではないのですか?
デニス 「バイオメカニクス」という役割がチームにいます。他にも、「エルゴノミクス」、「カラーリング」、「船体デザイン」など、ひとつのチームで、ひとつの製品を作り上げていくのです。
WJS チームに権限を持たされているのですね?
デニス はい。研究開発部やマーケティング部といった部署と同じく、デザインチームは独立した部署です。研究開発部の下とか、どこかの部署の下にいるわけではなく、チームには非常に権限があって、リーダーシップを発揮できる環境にいるのです。
WJS デザインとは直接関係ありませんが、今回、300馬力のニューモデルが発表されました。でも、アメリカでは「67マイル」という速度規制があるので、馬力を上げる意味があまりないように思いますが?
デニス 300とか400馬力とか、他がそうなったら我々も追従していくと思います。
WJS 馬力競争に、参加するということですか?
デニス もちろん。戦って馬力を上げていきます。
でも、それ以外のところ、例えば「iBR(インテリジェントブレーキ&リバース)」といった、馬力以外で差異が出せるところや、ライフスタイルを含めて、どんどん進化していきます。ただし、馬力競争にも負けるつもりはありません!
WJS 日本では、1年中、いろいろな場所でジェットに乗ります。体はドライスーツで暖かいのですが、手が冷たい。
「グリップヒーター」を付けてもらえたら、1年中楽しめると思うのですが?
デニス 日本では、冬でもジェットに乗るのですか?
それは、とても素晴らしく興味深い。グリップヒーターは初めて聞く意見なので、本社に戻ったら検討したいと思います。
WJS よろしくお願いします。
デニス 逆に聞きたいんですが、日本では、ベースとなる港から少し離れた遠くの港まで行き、そこで宿泊する。船のクルージングのように、何日もかけてツーリングに行くことはないのですか?
WJS ありません。朝出発して、日帰りで帰ってきます。
デニス じゃあ、「行った先で上陸して、レストランでランチ」ということはありますよね?
WJS それをやっているのは、一部のユーザーだけ。普通の人は、それほど遠くまで行きません。
デニス それはどうして?
WJS スタンドアップ全盛の時代、岸に近い場所で乗っていました。その影響で、ランナバウトでもあまり遠くに行かない遊び方が定着してしまったのです。デニスさんたちの「当たり前のツーリング」のように、遠くまで行って、泊まって帰ってくるような遊び方ができるようになれれば、ランナバウトの本当の楽しさを知ることができると思います。
デニス なるほど、それは良い考えですね。アリガトウ。
後日談:2020年SEA-DOO(シードゥ)ニューモデル「FISH PRO 170」にはグリップヒーターが標準装備され、それ以外の機種にもオプションで装着が可能となった。このインタビューのあと、すぐに検討し開発してくれたとしたら、BRPという会社の柔軟性につくづく驚かされる。
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