2020年11月、イギリス政府が「ガソリンとディーゼル車の新車販売を、2030年までに禁止する」と発表した。ジョンソン英首相は計画を10年前倒しし、アメリカや中国よりも5年早く、2030年にガソリン車の新車販売を禁止するというのだ。
中国でも、2035年までに、新車販売の全てを電気自動車やハイブリッド車(HV)にする方針を明らかにしている。
アメリカのカリフォルニア州でも、2035年には州内で販売される新車(乗用車、トラックなど)は、全て排ガスの出ない「ゼロエミッション車」にするという。温室効果ガス排出量の削減を図ることが狙いである。
「ゼロエミッション車」とは、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)のように、大気汚染物質や温室効果ガスを含む排気ガスを排出しない車のこと。ちなみにハイブリッド車は、排気ガスを排出するので、「ゼロエミッション車」ではない。
日本政府も12月2日、地球温暖化対策の一環として「ガソリン車の新車販売を、2030年代半ばに禁止する方向」で最終調整に入ったと発表があった。
このように、ガソリンエンジン車の新車販売を禁止する動きは、世界中で急速に広がっている。
先ごろ、ヤマハ発動機の日高祥博社長のインタビュー記事が掲載されていた。マリンジェットを造る会社のトップが、今、世の中の流れをどう見ているのか、非常に参考になる。
二酸化炭素の排出ゼロを目標に掲げる排出規制強化の動きは、自動車だけに限らない。当然それは、オートバイにも望まれている。
オートバイの販売台数が世界3位の「ヤマハ発動機」も例外ではない。日高氏も、「自動車だけでなく、2輪車も電動化が避けられません」、「電動化には2つの視点が必要だと思っている。1つが顧客のニーズ、もう1つは環境規制への対応だ。社会が電動化に向かうというコンセンサスができてきている以上、当社としてもこれに対応していく必要がある」と、公言している。下記がそのインタビュー記事だ。
――ヨーロッパ各国で排出規制の議論が高まっており、日本でも菅首相が2050年のカーボンニュートラル目標を掲げました。自動車だけでなく、2輪車も電動化が避けられません。
電動化には2つの視点が必要だと思っている。1つが顧客のニーズ、もう1つは環境規制への対応だ。これまでは環境規制で先行していたヨーロッパを見ながら対応してきた。だが、小池(百合子)東京都知事やバイデン次期アメリカ大統領の政策からしても、この部分がヨーロッパ以外の地域も含めて、急速に強まっていくと感じている。
――2輪車の電動化における難しさとは?
技術的にはできないわけではないが、コストや航続距離などの面で商品性がない。大型で100万円を超えるようなスポーツバイクは特に厳しい。
価格にして100万円から200万円程度上乗せすることになる。充電もこまめに必要になるし、航続距離を伸ばそうとバッテリーを増やせば車体が重くなりすぎる。
最初は原付といった日々の移動向けの2輪車から進めることになるだろう。スポーツタイプとは違って、100万円単位でコストが上がるわけではないので、補助金があれば普及する可能性はある。とはいえ、一民間企業のどうこうなるものではない。協調領域として自工会など業界団体を含めて働きかけていく。
――小池都知事は2035年に都内での内燃車(エンジンのみで走行する車)の販売を禁止すると掲げています。2輪車でこの目標達成は可能ですか。
地域別に規制をかけるというのは現実的ではなく、国全体での取り組みが必要だ。
日本全体で2035年までに販売するすべての2輪車を電動化させることは、技術的には可能。だが、売れるかどうかは、まったくの別問題だ。(出典:東洋経済オンライン、2020年12月29日付より抜粋)
この日高社長の発言を読んで、「EV化は、すでにここまで来ているのか!」という驚きがあった。今から15年以内に、全ての2輪車を電動化させることが技術的には可能なのだ。
電動バイクについては、エネルギー密度の問題もあり、ヤマハのE-Vinoだと29km走るごとに充電が必要になるという。加えて、コストも高い。
台湾では電動バイクが普及しているが、バッテリー交換式の場合、膨大な数のステーションの設置が必要となる。実際、台湾では政府が介入してステーションを設置している。
ヤマハでは、バッテリー交換式のEVバイクと、急速充電式のどちらも開発を進めているという。EVの課題は、値段が高くなってしまうこと。さらに、バイクの場合、重量が重くなりすぎてもいけない。バッテリーをたくさん積んだことにより、バイクらしさがなくなってしまうことも危惧している。
いずれにせよ、EV化の課題は「バッテリーに尽きる」のだと理解した。
解決すべきことは2つ。「走行距離を延ばす」ことと、「バッテリー自体の軽量化と小型化」だ。コストの問題もある。今のままでは、値段が高くなりすぎる。政府や自治体と協力してやっていかないと不可能である。
逆に言えば、「バッテリー自体の問題」が解決されれば、急速にEV社会に変わっていくのだろう。船舶の世界では、エンジンとバッテリーを統合した船舶用のハイブリッドシステムの開発がかなり進んでいる。2022年には、「EVタンカー船」が竣工されるというニュースもある。船のEV船化は、これからどんどん進んでいくことになる。
「ヤマハ発動機」という会社名からしても、ヤマハはエンジンの会社だ。モーターやバッテリーも自社で開発することを念頭に計画しているのであろう。
EV化の要「バッテリー」をいち早く開発することが、世界中の企業にとって、共通の課題といえよう。より軽量で高性能なバッテリーを開発した企業が、来るべき「EV社会」においてのリーディングカンパニーになることは、容易に予想できる。
世界の一流企業が本気で取り組んだら、新型コロナのワクチンのように、より短期間で開発が成功するような気がしている。
自動車・バイク業界、船業界のEV化が推進されるなか、我がジェット業界だけが、いつまでも化石燃料に頼っているとは考えにくい。ヤマハのバイクが100%EV化になったとき、マリンジェットが100%ガソリンエンジンのままだとは到底考えられない。
数年後の近い未来、ジェットも電気で動く時代になるのかもしれない。当面、ヤマハのEV開発の話題から目が離せない。
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