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X-2の洗礼 買ったその日では上手く乗れない。「乗り込むだけで、ひと苦労」なジェットスキーがあったんです (水上バイク)ジェットスキー コラム

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初心者が一度転んだら、再度、乗り込めないジェットスキーがあった

「慣れないうちは、沖で転ぶと乗り込むのが大変だから頑張ってね」

十数年前、私が生まれて初めて「650 X-2」というジェットスキー(以下、ジェット)に乗ろうとしたとき、友人から言われた言葉がこれである。

当時、スタンドアップのカワサキJS 440に乗っていた私は、「X-2は誰でも簡単に乗れる乗り物だ」と、信じて疑わなかった。
だから、X-2の持ち主である友人のアドバイスも聞かぬまま、沖に向かって颯爽と走り出したのである。ちなみに、そのときに乗った場所は「海」。波は結構高く、うねりもある。友人のX-2は、バリバリのモディファイ仕様であった。

エンジンをかけるときはセルを長めに回して、その間はアクセルを開けない。エンジンがかかり始めたら、ハーフスロットルで軽くあおって始動させるのがコツだという。
とまあ、たかがエンジンをかけるのに、まるで何かの「儀式」のような行いが必要な状態であった。

そういう借り物のX-2に乗って沖に出た私は、気分良く“X-2ライディング”を楽しんでいた。シートをまたぐようにして、両脇でステップする独特なライディング姿勢は、見た目から想像していたよりも遥かに自然だった。
スタンドアップに慣れている私からすれば、低い姿勢で持つ上下に可動しない「固定型のハンドル」も新鮮で、素直に楽しかった。


こんな素敵な笑顔で2人乗りできるのは、よほどの上級者だけだった。私なんて、1人で乗り込むこともできないのだから、これができるようになるのは、ずっと先の話だった……。


これ、どうやって乗り込むの? そもそもハンドルに片手しか届かないんだけど……!?

ただひとつ、実際に乗る前の印象と違ったのは、「オートバイを運転しているような感覚にはならなかったこと」だ。650 X-2に、バイクのイメージを重ね合わせる人は業界内でも多かった。昔、中型バイクに乗っていた私も、そういう印象を持っていた。
しかし、それは間違っていた。シートに腰かけて乗るオートバイに対して、X-2は基本的に立って乗る乗り物である。
その乗り味は、当然、「まぎれもなくジェットそのもの」であり、道路を走るオートバイとは相反するものだった。

X-2のほうが、数段どころか比較にならないほど爽快だったのである。それはまさに「ハンドル固定型のスタンドアップ」と呼べるほどのジェットスキーだった。

そんなことを考えながら、波がうねる海でX-2に乗っていた。慣れてくると、高い波でジャンプしたり、波間でテールスライドさせたりと、最初の大人しいライディングはどこへやら。すっかりその気になっていた。
そして、さらに調子に乗って転倒した私。「あーあ、やっちゃったよ」と思いながら、再びX-2に乗り込むことになった。
うねる波のなかで、スタータースイッチの位置を確認して愕然とした。

「これ、どうやって乗り込んだらいいんだろう?」
最初は、膝くらいの浅瀬から乗ったので何の問題もなかった。だが、足の着かない深いところで、プカプカ浮きながらX-2を見上げると、ハンドルはかなり高い位置にあるのだ。

この状態で手を伸ばしても、ハンドルバーの左右どちらか一方にしか手が届かない。
……これは困った。この波の中、乗り込むのと同時にハンドルを両手で掴んで、エンジンをかけることができるのだろうか? とりあえず後ろから乗り込むと、船体はゆらゆらと左右に大きく揺れ出して安定しない。

思いっ切り左腕を伸ばし、スタータースイッチが親指に触れた瞬間、大きな波を受けてあえなく落水……。
根性で乗り込んでセルを回したが、友人がいじり倒したモディファイ艇のエンジンは始動性が悪い。おまけに「儀式」のようなコツもいる。そうこうしているうちに、バランスを崩して再び落水。もうお手上げだ。

私は結局、このX-2に乗り込むことが出来なかった。両手でハンドルに掴まって、ぶら下がり健康器のような体勢でジェットに引きずられているところを、ランナバウトで駆けつけてくれた友人にレスキューされたのである。

「だから最初に言ったでしょ。乗り込むのが大変だって!」
そう言った友人の笑顔は、明らかに勝ち誇っていた。その後、私が人知れずX-2の乗り込みを猛特訓したんは言うまでもない。

X-2というのは、たいへん不思議な機種で、2021年の今でも、650X-2は熱狂的な愛好家が存在する。冬も元気に乗っているゲレンデには、大抵、X-2を持っている人が1人くらいいるはずだ。

今のスタンドアップやランナバウトは、「誰でも簡単に乗れますよ」というのが、売り文句ひとつである。でも、もし乗る機会があったら、ぜひとも一度、X-2に乗ってもらいたい。「ものすごく爽快なんだけど、沖で転んだら、簡単に乗り込めない乗り物」に。

水の上を走るのは、どのジェットに乗ってもいつだって楽しいけれど、そこに「悔しい」が加わったら、もっと夢中になれる。
そして、乗れるようになったら、初めてX-2に乗る人に、
ドヤ顔で言ってあげてほしい。「だから最初に言ったでしょ。乗り込むのが大変だって!」と。


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