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パルアップ・ダーさん 実録・沈没体験記! ジェットスキー(水上バイク)

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現代の「釣り糸」、恐るべし
極寒の大阪湾で、シードゥGTX Limited 300、沈没する!?

ツーリングの鉄人、パルアップの斉藤智祐社長の一番弟子、ダーさんから、「寒風吹きすさぶ12月の大阪湾で、愛艇の2018年モデルSEA-DOO GTX Limited 300(以下、ジェット)が沈没した」と、連絡がありました。沈没の原因は「釣り糸」だそうです。

※編集部注:このレポートはダーさんの体験記ですが、使われている写真のキャプションは、より内容が理解できるように編集部で補足しました。

スコープゲートから巻き込んだ「釣り糸」。これが沈没の原因だ。普通に走っていて、釣り糸を巻き込むことは、誰にでも起こり得る。

パルアップ・ダーさんレポート
―恥ずかしながら、ジェットが沈没しました―

いつもと変わらぬ「普通のツーリング」になるはずが……

12月5日土曜日、午後2時過ぎパルアップを出港し、須磨海岸に向けて出発しました。
寒くなってきたので、ハンドルカバーを付け、念のため厚着しておきます。

行きは順調。海釣り公園辺りでのんびりしてから、帰路につきました。
帰りは六甲アイランドの手前でクルーザーを追い抜く際、「釣りに使うオレンジ色のウキ」が見えましたが、巻き込むことなく航行できました。順調に行けば、15時30分までには、パルアップに帰れる見込みです。

神戸市の新明和の工場を越えて、芦屋川河口の手前でポンプに何か詰まったような感覚がありました。でも、時速100kmぐらい出ていたので自然に抜けるだろうと思い、少し減速して東→南→東に進路をとり、芦屋運河に入りました。

普段からダーさんは、週2回ほどのペースで、1人でツーリングを楽しんでいる。パルアップには、ダーさんと同じようにジェットを楽しむ常連客が何人もいるので、一緒に出掛けることもあるそうだ。斉藤鉄人をはじめ、この海を知り抜いた経験豊富なスタッフがいるショップなので、単身でも安心して遊べる。


エンジンが止まった!?

芦屋運河は、鏡のような水面が広がります。「アクセル全開で走って、詰まったゴミを吹き飛ばしてから上がろう」と思って、アクセルを全開にしました。しかし、なぜか60km/h・6,000回転ぐらいからエンジンが吹き上がりません。スーパーチャージャーに、穴が開いていたときのような症状が発生しました(※編集部注:このとき、水を吸っていたと考えられます)。

アクセル全開のまま待てばエンジンは吹き上がるはずなので、全開を維持しました。しかし80 km/h以上、スピートが上がりません……。
「アクセル全開で60 km/h??」と思った瞬間、エンジンがストップ。芦屋運河の西側の橋を越えたあたりで、止まってしまいました。

エンジン停止の原因は、エアクリーナーから水を吸い込んで、エンジン内部に浸入してしまったこと。


セルが回らない

エンジンが止まったので、スタートスイッチを押しましたが「セルモーター」が回らず、ウンともスンとも言いません。
バッテリーは少し前に充電していて、低電圧警告は出ていない。セルが回らない原因は不明でした(※編集部注:この時点で、ウォーターハンマー現象によりエンジンが損傷していたと考えられます)。

15時21分。どうすることもできないので、水密コンパートメントから携帯電話を取り出し、パルアップに電話をかけました。
スタッフの新上さんが「セルが回らないなら、バッテリーかな??」と言いながら、準備が出来次第、すぐにレスキューに来ていただけるそうです。
携帯電話は水密ケースに戻して、助けを待つことにしました。

エンジンが停止した時点で、エンジンルーム内には大量の海水で充満していたはずだが、ダーさん本人は気付いていなかった。初めての経験なので当然だ。


ウェイク艇の引き波で、私のジェットが沈没。そして落水……

この日は絶好の釣り日和。両岸壁には、たくさんの釣り人がいました。私が運河の真ん中に止まっているので、多くの釣り人から冷たい視線を感じながら救助を待ちます。
5分か10分経ったとき、運河の東側から波を立てて走る船舶が見えました。

「助かったー!」と思いましたが、近づいてくると全く知らないウェイク艇でした。ウェイク艇は減速することなく、私の方に向かってきます。
「気づいているのだろうか?」と、不安が頭をよぎります。このとき、発煙筒(信号紅炎)のことは頭にありませんでした(編集部注:非常信号灯は、停止しているときに使います)。

私が浮かんでいる場所は、運河の半分より北側です。ウェイク艇も、運河の北側を西向きに進んできます。広い南側ではなく、よりによって狭い北側を通らなくても……と、思っているうちに、どんどん近づいてきます。

ウェイク艇に乗っていた6人と、ウェイクボーダーから「なんでここにいるの?」的な冷たい視線を間近に浴びた直後、船の引き波がやってきました。通常なら多少の波でも沈むことはありません。ジェットに乗っていれば大丈夫だと安心していました。

ところが、引き波がジェットを持ち上げた直後、横に大きく傾き、あっけなく落水してしまいました。完全にひっくり返る前に落水したので、転覆は避けられました。

これはおかしいです。「ひょっとして、ビルジドレンプラグが開いている?」と思ってジェットのリア側に回り、ビルジプラグを確認しますが閉まっています。乗り込むためにボーディングステップに手をかけた瞬間、リアデッキが水没していくではないですか!!
完全沈没を防ぐため、フットレストにたまった水をかき出していると、先ほどのウェイク艇が戻ってきて再び引き波を立てるのです。せっかくかき出したフットレストの水が、またいっぱいになってしまいました。

ジェットへ乗り込みと、水のかき出しを諦めて船首側に回り、ステムのフロントアイレットを掴んで待つことにしました。ドライスーツの防水ファスナーをちゃんと閉めたはずなのに、ヒンヤリとした感覚が伝わってきます。
水温が15度あっても、冬の運河はとても冷たいです。待っている時間が、とても長~く感じられます。

このような状況での「1分」は「1時間」にも匹敵する。不安や不満、理不尽など、さまざまな思いでいっぱいだ。


こんなときに注目される出来事が!

ジェットをつかんで、浮いているだけの無力な自分。待っている間に、ひと際、釣り人から強烈に冷たい視線を浴びる瞬間がありました。見ると、私の周辺で「ナブラ」が立っているではないですか!!! ナブラとは、海面近くに浮上した魚の群れのこと。ナブラが発生しているときは、ここにルアーを投げるとよく釣れます。

よりによって、何でここで???
小魚を目がけて、カモメの水中突撃が始まります。もちろん、釣り人も集まって来ます。私が浮いているせいで、ルアーを投げられない釣り人の不満をひしひしと感じながら、長~い時間、ただただ待ち続けます……。自分も小魚になった気持ちで、食われてしまうような不安感がありました。

状況が変わったら、すぐに連絡を

ナブラが収まって、釣り人やカモメが退いたころ、待ちに待った新上さんのレスキュー艇が到着しました。
遠目から見ても、新上さんの顔が「???」なのが分かります。

じわりじわりと近づいて来たひと言目は「なんでジェットに乗ってへんで、沈んでんの???」でした。
そうなのです。最初に救援要請の電話をかけたとき「エンジンが停止して動けないので助けてください」と言っただけで、「沈没したから助けてください」とは言っていないのです。

最初は、ジェットの上で乗って待つつもりでした。それが、ウェイク艇のひき波を被って、落水して、携帯電話は水密ケースの中……。アップルウォッチは、周囲のギャラリーに聞こえてしまうではないか? と気になって、電話せずにいたのでした。
あとから考えれば、「落水」という状況が変わったときに、すぐに連絡すべきでした。レスキューする方も準備が変わっていたはずです。

写真右が、パルアップスタッフで、ランナバウトクラス元全日本チャンピオンの新上さん。こういう状況で現れたら、救世主に見える。


時速10kmでアクセル全開!? 水の入ったジェットは重い……

沈んだジェットに牽引ロープを結び付けてから、ようやく水から上がることができました。乗り込む際、危なくレスキュー艇をひっくり返しそうになりました。
長時間水に漬かっていたので、ライフジャケットやドライスーツが重くなっていたことを考えずに乗り込んだのが原因です。注意しないといけませんね。

新上さんが、アクセル全開でパルアップに向かって走り出します。しかし、スピードは10km/hくらいしか出ません。浸水したジェットには300Lぐらいの水が入っているのでしょうか? 単純計算で船体重量400kg+水300kg=700kg。これに加えて私の体重と浸水したライフジャケットなどが加わります。進まないはずです……。
近場だったので何とかなりましたが、連絡の重要性を再認識しました。

数分で行けるところなのに、通常の6~10倍の時間がかかります。パルアップまで牽引される時間が、とても長く感じられましたが、十分に感謝する時間を持つことができました。

最近の釣り糸は怖いです

パルアップに到着すると、先に上がったお客さんと教習艇に乗った教官がいました。
私のジェットの陸揚げ作業を行います。牽引ロープを短くしたり、沈んだジェットに捕まって、スリングの位置を調整しながら、無事に陸上に揚げることができました。

居合わせた教習艇に乗せてくれるとのことでしたが、重たいライフジャケットなどのせいで、体が持ち上がりません。
ジェットに捕まりますが、アクセルオンで、一度、手がすり抜けてしまいました。なんとか桟橋に連れて行ってもらい、そこから陸に上がることができました。

プロが見たら一目瞭然。カーボンリングとステンレスリングの間に、カラフルな釣り糸が見える。カーボンリングとステンレスリングは、ピッタリと隙間なしで接してなくてならないのに、隙間どころか、釣り糸で押されてこんなに隙間が開いていれば、ガバガバと大量の水が船内に流れ込むのは当然だ。
【関連記事】 カーボンリングとステンレスリングの問題に関して詳しく知りたい方は「シードゥ艇の弱点」へ


変な場所から流れ出る水

桟橋から陸に上がったとき、先に上がっていたサップの師匠が「シャフトから水が流れ出ている」と教えてくれました。
ビルジからも勢いよく水が流れ出しています。シートを外すと、エンジンルーム内には、なみなみと水が入っていました。一向に抜け切る気配がないので、エンジンルームからも水を抜きました。

水を抜き終えてから、フォークリフトで持ち上げてもらいました。まだ水が垂れていましたが、シャフトに釣り糸のPEラインが絡まっているのが見えました。PEラインとは、極細のポリエチレン素材の原糸を複数本、編み込んで1本にして作られるライン(釣り糸)です。同じ太さのナイロン糸の3倍近い強度があるといわれる釣り糸です。
下ろしてからエンジンカバーを外して見てみると、船内からからもPEラインが確認できます。カーボンリングの位置が少し前気味になっていました。

PEラインがカーボンリングを前に押し出し、そこから船内に浸水したことが沈没の原因だったのです。
斉藤鉄人がオイルを確認したところ、オイルゲージを抜いた1度目は正常な感じでしたが、2度3度と、ゲージを拭いて差してを繰り返すと乳化したオイルが付いてきました。オイルを触った感触は「ザラザラ感があり、クランクの破損が疑われる」と、斉藤鉄人に言われました。新上さんが確認したところ、オイルゲージの上の方まで乳化したオイルが付いてくるので、「3~4L程度、水が入っているのでないか?」とのことです。

「どうせ外すから、明日以降作業しよう!」と、とりあえず外側とエンジンルーム、インタークーラーを洗浄することになりました。
実際に作業に取りかかってみないと正確なことは分かりませんが、「エンジンオイルのフラッシングで直るかもしれないし、エンジンのスペアはあるので年内に修理は可能」との見込みでした。
サップの師匠もジェットの沈没経験があるそうで「笑うしかないね!」と落ち込んだ私を励ましてくれました。

怪我もなく、パルアップまで帰って来れましたが、やはりかなりヘコみます。
明日の日曜日も乗ろうと思っていたのになぁ、あーあ(ため息)。

今回の経験で最も良かったことは、ケガもせずに帰って来られたことだ。

へこむ↓↓↓私。気を取り直して、保険会社に連絡します

突然終了してしまった2020年のジェットシーズン。打ちひしがれながら家路につきます。
そう言えば、以前、沈没した経験のある方が、保険で直したと言っていたのを思い出し、連絡を取ってみました。すると「約款をよく読んで、該当するなら保険金が出る」とのことでした。

保険代理店に連絡すると、「詳しいことは週明けの月曜日に連絡します」と言われました。斉藤鉄人にも、保険の件を連絡してから帰宅しました。

自宅で船体保険の証書と約款を探し出して確認します。約款によると、『「沈没」は支払い対象です。台風等の被害はマリーナに預けている場合支払対象で、消耗品の劣化等による沈没等は支払い対象外』と記載がありました。

翌日曜日、斉藤鉄人に保険の件を相談に行きました。鉄人の見解は、「カーボンリングなど、消耗品の劣化はない。PEラインが起こした穴あき事故」とのことです。証拠に、シャフトに絡まった糸が船内まで入ってきている初めての事例だという話でした。

その後、保険会社の方が船体の確認をして、支払い可否の判断をします。残念ながら、エンジンは損傷がひどくて使用不可。その他の補器類も、損傷で要交換とのことでした。

このような経緯があった後、保険代理店から「船体保険の支払い可能」の連絡をいただきました。よかったです。
保険金では新艇の購入費用を全てカバーできませんが、新しくジェットを購入することに決めました。新艇選びについては、後日また報告いたします。

趣味である以上、失敗や痛い思いをすることは、多かれ少なかれあります。しかし、「釣り糸」で、これ程の大きな被害に遭うことは、本当にレアなケースだと斉藤鉄人に言われました。
近年、釣り糸が進化していることで、ジェットユーザーに甚大な被害を及ぼすケースは増えそうです。「釣りをしている人の近くを走るのはやめよう」と鉄人は言いますが、まさにその通りだと思いました。

今回、パルアップの斉藤鉄人ならびにスタッフの皆様に感謝申し上げます。私は単独ツーリングも多いため、ショップのバックアップあってのジェット遊びだと、いつも感謝しております。ありがとうございます。

最近の釣り糸は強度が上がっていて、切れにくくなっている。反面、ジェットに絡んだら、甚大な被害を被る可能性も増えたということだ。

ツーリングの鉄人・斉藤さんからのアドバイス
「最近の釣り糸は、本当にヤバいです!」

今回、釣り糸が絡んだことで、ダーさんのジェットが沈没してしまいました。ここまでダメージを負うことは少ないと思いますが、絶対にないわけではありません。
覚えておいてほしいのは、「最近の釣り糸は強度が上がっていて、切れにくくなっている」ことです。

以前の釣り糸なら、途中で切れてしまったりで、ここまで絡みつくことはありませんでした。しかし、今回のダーさんのケースでは、カーボンリングが押されて、船内からも釣り糸が見えるくらい長い糸が絡まっていました。

ルアーフィッシングなどでは、50m以上、釣り糸を飛ばしている釣り人も多くいます。ウチのお客さんのなかには、首に釣り糸が巻き付いた人もいます。下手をしたら、首が切れますから、本当に気を付けてください。

釣り人がいるところでは、十分に距離を空けることが大切です。私たちが思っているよりも、釣り糸を遠くまで飛ばしているものです。トラブルのリスクはできるだけなくして、安全なジェットライフを送ってください。

 

協力/スズキマリン(千葉県富津市)、55HEAVEN(神奈川県平塚市)

 

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