今年の夏、世間から非難を浴び続けた「悪質な水上バイク」の問題は、ここ数年にわたり、社会問題化しています。夏になるとワンパターンのように、縦横無尽な振る舞いをする「危険水上バイク」の映像がニュースで流されます。このまま「水上バイクの問題」が放置されることは許されない時期にきています。
現在、水上バイクに関する法律は、大型船など「船の法律」が適用されています。しかし、自動車の”あおり運転”のように、水上バイクに対する新たな法律ができて「水上バイクでの危険走行は“無期懲役”」となり、それを多くの国民が「知っている状況」になれば、「無法者」は激減するでしょう。 しかし、いくら厳しい罰則規定が定められても、国民がこの「法律の存在」を知らなければ、「変化や改善」は起こりません。
「明石市長・泉 房穂氏」に聞いた、究極の「問題、解決方法」とは、数多くの「国民が”知る”新たな”法律”を作る」ことでした。
9月15日午後、兵庫県淡路市の海上(この場所)で水上バイクによる痛ましい事故があり、男女3人の死亡が確認された。
今回、悪質水上バイクに対し「殺人未遂」で刑事告発を行った兵庫県明石市・泉 房穂市長に「危険な水上バイクの撲滅。その解決方法は?」 というテーマで話を聞きました。 泉市長は、現在、市長3期目で、さまざまな結果を出し続けています。市民からの信頼も厚く、実務の人という印象を受けました。
編集部は現在、「明石市長が水上バイクの免許取得にチャレンジしている」という情報を独自に得ていた。理由を聞いたら、この問題を扱うのに「何も知らない」で話を進めるのは「自分の流儀ではない」と答えてくれた。
この夏、数多くのマスコミが”水上バイク”の話題を取り上げた。水上バイクに乗ったことも触ったこともないような記者が、事故現場の前に立ち「危険です」「法整備もない」「免許が緩い」「最高速の規制がない!」というトンチンカンな「非難や罵声」を浴びせ続けた。
そんな状況の中で、明石市長の泉房穂氏は”お忍び”で免許教室に通っているのだ。彼が信頼に足る人であることの理由のひとつであろう。
1日時間を頂き、沢山の話を聞かせて頂いた。非常に聡明な方で、明石市民が彼を選ぶ理由が良く理解できた。人間的にも、素晴らしい人物だと思いました。
明石市民を守ることが、「最大の使命」と話す、明石市長・泉 房穂氏
声を上げて、世論が高まると、国は非常に”迅速”に法整備を始める。
法律を作ることは当然だが、その内容を国民が”知る”ことが本当に大事!
明石市民を危険な水上バイクから守るためには、国に新たな「法律」を作らせ、その”罰則規定”を多くの国民に「知って」もらう必要がある!
新たなる法律が出来ることを願うのではないのです。「あおり運転」の法律ように、「悪質水上バイクは”厳しく”罰せられる」という、皆が理解する”法律”が必要なのです。
冒頭で書いた「水上バイクでの危険走行は“無期懲役”」となったら、インパクトは強く、効果も“絶大”です。しかし、皆が「この内容」を知っていなければ、影響力は低いはずです。
「あおり運転は罰せられる」と、皆が理解していることが大切で、ドライブレコーダーやスマホで映像を録画することで、「自分が理不尽な行為から守ってもらえる」と意識した瞬間に、“法律が機能”すると思っています。
「あおり運転」の法律が出来る前、危険走行の罰則規定だけの頃は効果が低かった。「あおり運転」の法律が出来たことより、社会問題化して多くのマスコミが報道し、この法律の存在を国民が知ったことで、効力が現れたのだ。
あおり運転のケースは非常に参考に出来る。
各都道府県に「水上バイクの条例や規則」があっても、知っている人はごく少数です。”知らないし、誰も捕まらない”。だからこそ、誰かが声を上げることで、「知らしめる」必要があります。
我々国民が声をあげることで、マスコミに取り上げられ、さらに大きくなった声で“国”を動かす。あおり運転のように、水上バイクもきちんとした法律を作り、皆が周知徹底することで、「暴走行為をする“おかしな連中”」に対する抑止力になります。
今、必要なことは、みんなが納得できる「新たな法律」を制定して、水上バイクで危険な運転をすれば、“こんな罰を受ける”ということを皆に理解してもらうことなのです。
水上バイクに関しての「条例」や「ローカルルール」は日本全国に存在している。しかし、認知度は低い。罰則規定があっても、誰にも”取り締まられて”いない。解決策は「ゲレンデ閉鎖」そればかり!
「明石市長・泉 房穂氏」は会って話を聞くまで、”水上バイクの撲滅運動”の代表格で、「水上バイクの排除」を主張する人だと思っていました。しかし、事実は違いました。水上バイクと市民の双方が、「安全に楽しく共存できることがベスト」という”考え”でおられました。
皆が知る”機能する”ルールの作成、整備です。
泉 房穂市長 『以前から一貫して変わっていないのですが、「全面的に禁止する」というのは、私のスタンスではない。「人間は自由であり、それぞれの楽しみごと」というものを、「過度に規制すべきではない」という考えです。
まして明石は海の町ですから、「海の楽しみを全面禁止」とか、規制を過度にすることによって、自分の首を絞めるのはよくない。その代わり「迷惑」といわれるような人がいれば、「ルール化を図る」という問題意識です。解決策というほど専門性の高いものではありませんが、繰り返しになりますが、大切なのは”皆が知る”「海のルール化」だと思います。
「(水上バイクは)新しいテーマ」なので、極端に走りがちになる。端端になる議論は良くない。
今、「海」については、その“議論の手前”だと思うんですよ。なので、両端に行ってしまっている。 「ルールがないから構わない」という一部の方がいて、逆にだったら「全部やめろ」という。
車の運転についても、交通事故が多いからと言って、「車に乗るな」とは言いませんし、バイクの事故が多いからといって「オートバイ全面禁止」とはなりません。
暴走族がうるさいからといって、「バイクを全部やめろ」とは誰も言わない。 にもかかわらず、「水上バイクの全滅だ」というのは“おかしな議論”です。 そこはちゃんとしたルールを作って、守っていただく方向にすればいいと思いますね。
「(水上バイクは)新しいテーマ」なので、極端に走りがちになる。端端になる議論は良くない。
特に、コロナなどで愛好者が増えてると聞きますけど、最近乗り始めて、ちょっと目立つ行為をしてしまってて、それをもって全体を語るのは違う。そこをちゃんと分ける議論を始めないと、非常に間違った方向に行きかねないかなとは思います。
私としては、「禁止」じゃなくて、ちゃんと皆さんから応援をいただけるようなマリンレジャー・マリンスポーツにもっていくことが大事であって、そのためにも心ない方については、そこはちょっと考えていかないとというスタンスです。
何度も話しているように、海の楽しみの”ルール化”がこれからなので、そこをしっかりとルール化を図っていく。その際に大事なのは、できるだけ関係者、みなさんが納得するルール作りです。
市長に就任した当初から、市民から「何とかして!」と言われていた水上バイク問題、明石市長・泉 房穂氏
私も勉強の途中ですけども、大型船的な部分とか遠洋部分のルールは施行・整備はされています。 けれど、水上バイクを前提としたようなプレジャーボートで、「こんなに速いスピードが出て」という部分は、あまり法律が想定していなかったと私は思う。
ある意味、想定されていなかった「さらなる楽しみ」が生まれたにも関わらず、法律やルールが追い付いていない。やっと遅まきながら、それをどう整備するかという議論がこれから始まるのかなという思いです。
その際に大事なのは、できるだけ関係者、みなさんが納得するルール作り。 だから明石市でも、協議会を立ち上げました。
国土交通省や海上保安庁、警察も入ってもらってますが、行政だけじゃなくて、今回は主要3社のメーカー(ヤマハ、カワサキ、BRP)や、水上バイクを取り扱っているマリーナさんも入っていただいている。
私としては、「ちゃんとしたルールを、みんなの合意のもとに作りたい」というのが基本です。
私の整理としては、国がどういったルールにするかについては、まさにこれからしっかりと議論していただいて、水上バイクが安全に運転できるような「住み分け」のルールにしていただきたいという要望をあげていきたいと思います。
当初、条例化も検討しましたが、結局、これも権限の問題も大きい。おかしいでしょうけど、「海は基本的に国」なんですよね。で、海岸沿岸は都府県です。そういう意味では、市というのは、直接、権限をもっていない。
おかしな話だが「海は国」の管轄。「海岸沿岸は都府県」です。
都道府県については、危険行為についての条例はありますけれど、適応があまりされていない。
そこを、うち(明石市)が監視カメラを付けて映像を提供したら、本当に危険であれば、ちゃんと都道府県で取り締まっていただかないといけない。
「スピード違反」系のことは、国のルールなので、基本的には国がどうなさるか。
別に「スピードの上限の問題」ではなくて、「危険の問題」ですから。あとは無免許とかも国の問題です。 「無免許」「スピード違反」あたりは国の問題ではないでしょうか。
繰り返しになりますが、明石市長として考えているのは、「海水浴場で遊んでいる子どもたちが、被害を受けることはやめてください」「明石の海水浴場で遊ぶ市民を危険から守りたい」という形です。
明石市は、過去に2つの事故(明石花火大会歩道橋事故と、大蔵海岸砂浜陥没事故)によって、尊い命をいくつも失ってしまった。その教訓というのは「危ないと思ったら、できるだけベストを尽くすんだ」「危ないんだったら対策を取ろうよ」ということです。(明石市長・泉 房穂氏)』
明石の海岸に設置された監視カメラ。取り締まって貰わなければ意味を成さない。
水上バイク業界も、これまでただ手をこまねいて見ていたわけでありません。「過去に問題化した地域」では、個別のルールを作り“さまざまな対策”をたててきました。 具体的には、都道府県ごとに「水上バイクに対する規制・条例」が制定されてきました。
例えば、琵琶湖では“水上バイクの免許”を持っているだけでは乗ることができず、「特別な講習(通称:琵琶湖講習)」を受け、ライセンス(「琵琶湖水上オートバイ安全講習終了証」)が必要となります。 この講習では、琵琶湖の「基礎知識」「水上安全条例」「琵琶湖に適した乗り方」などを習います。
さらに、水上バイクに「適合証(ナンバープレートの役割も担うシール)」を貼る必要があると県の条例で決められています。 悪質な走行をする水上バイクを見かけたら、この番号を警察に通報すれば、「誰の持ち物か」が明確になるというわけです。
また東京にも、「東京都水上安全条例」というものがあります。 例えば、「酒酔い運転は、懲役または50万円以下の罰金」というように、行為に応じた罰則がキメ細かに決められています。
また、水上バイク販売店やマリーナ、水上レスキュー団体などで作られた団体「東京港・湾・河川水上オートバイ安全航行推進プロジェクト(TPSP)」も作られました。ここでは、当該水域における「水上バイク航行マップ」や「自主ルールの作成」に加え、一般ユーザーを対象とした「安全講習会」を開催しています。
これ以外にも、全国各地でその土地に即した条例やローカルルールが決められています。 それにも関わらず、水上バイクの「評価」が上がったという話は聞きません。 毎年、「悪質水上バイク」の傍若無人な行為が報道され続け、「イメージの悪化」だけが浸透し続けています。
水上バイク業界も、泉市長と同じく「悪質水上バイクをなくしたい」という立場は同じ。この問題の解決に関しては、一刻の猶予もない、「待ったなしの状況である」と考えております。
ジェットは爽やかなスポーツだ。
※今回の泉 房穂明石市長の記事全文は、「ワールドジェットスポーツマガジン 12月号」に掲載しています。
【独自取材】明石市長・泉 房穂氏に聞く、「なぜ悪質水上バイク犯人は逮捕されないのか?」
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