「サクセススピード&グラフィックス」は、神奈川県相模原市のジェットショップである。シードゥの正規ディーラーで、一見、普通のジェットショップだ。お客さんは普通に来店して「新艇を購入」したり、修理をお願いしている。
しかし、普通のショップとは違うところがある。それは「人気の裏メニュー」が存在していること。さらに、その仕事のレベルが高い。例えるなら、美味い食事を食べさせてくれる「ビストロ」のような存在だ。
気取らない店は、小さいけれど実はミシュランの3つ星だった! という感覚に近い店である。
※「ビストロ」とは、フランスの小さなカフェやレストランのこと。「定食屋」「居酒屋」などと訳される。
船体のグラフィックデザインを考え、自社でデカールを製作している。オーナーの佐瀬 崇氏は、グラフィックデザインの専門学校に入学し、自身のデザインに磨きをかけた。
ショップ内には、グラフィックデカールを製作する部屋があり、そこで高額なパソコンやプリンターなどの専用機械を導入している。素材にこだわり抜いた、「何度も貼り直しができる」フルグラフィック・デカールキットは、外注に出さず、デザインから製作まで、全工程を佐瀬氏が手がけている。そのおかげで、高いクオリティが保たれている。
上の写真は、世界チャンピオン・砂盃肇選手が乗る「マリンメカニック製・2022年世界戦略モデル(通称・GA-CO)」だ。
このマシンも含め、歴代モデル(GA-CO 1~5まで)の全てを「サクセススピード&グラフィックス」が請け負っている。(このマシンの詳細は、次月以降に公開予定)
2022年モデルの特徴は、ベースカラーのイエローが、2021年「GA-CO」と比べて薄いこと。この「薄いイエロー」は、2021年モデルの市販艇「RXP-X 300」の「ミッドナイトパープル」に使用されている「少し紫がかった薄い黄色」と同じ色だ。
今年のPWC業界は、世界的にこの薄い黄色がトレンドだそうだ。
奥の2021年「GA-CO」は、原色のイエローを使い、より濃くハッキリさせている。
両方とも「チーム・マリンメカニックの砂盃 肇モデル」なので、ひと目で区別がつかなければならない。そのため、手を抜くことなく、毎年「カラー&デザイン」を変更している。こうして2台を並べると、その違いは一目瞭然である。
マリンメカニック製マシン自体が、毎年、強烈に進化しているので、デザインもそれに合わせて進化させる必要があると、佐瀬氏は考えている。
今回、クエーキーセンスとのコラボレーションモデルで一番苦労した点は、「クエーキーセンスからの精密なデザイン画を、いかにジェットに再現するか」ということだった。
グラフィックデカールキットは、ラッピングのような1枚モノではなく、いくつかのパーツに分かれたデカールを貼っていく。そのため、曲面や途中でグラフィックが途切れる部分の違和感をいかになくすか。また、真横から見たら、サイドのデッキとシートの下のグラフィックが繋がっているように見えなければならない。
自動車と違って、ジェットは曲線が多く、熟練の技がないとキレイにデカールを貼れない。その部分に、一番、苦労したそうだ。
佐瀬氏曰く、「自分の強みは、設備一式を自社で持っていること。気に入らなければ“何度でも作り直せる”ことだ」という。
サクセススピード&グラフィックスの代表である佐瀬氏は、『「普通のジェット屋さん」だけに徹しても良いが、「武器は多い方が良い」』という考え方の持ち主だ。
ショップの代名詞のひとつでもある「フルグラフィック・デカールキット」ですら、「武器の一つだ」という。
また、自宅の1階が店舗のため、深夜でも、「引き取り」や「納品」に対応できるのも「武器」としている。
佐瀬氏曰く「“武器”と言うからには、性能が伴っていないといけない」。だから、ユーザーからの「あったら良いな」を提供しないと話にならないという考えである。
さらに、個人で仕事をしているので、対応できる仕事量には限界がある。しかし、「人を増やすことで、仕事の質が下がるぐらいなら、今の体制で納得できる製品を提供して喜んでもらいたい」という。
ある意味、『頑固』。常に「お客さんの満足いくものを提供したい」と考えている。まさに、『頑固おやじのいる美味い店』なのだ。
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