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10年前のポストカード 17歳の世界王者から届いた、一葉のハガキ コラム (水上バイク)ジェットスキー

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古い整理箱から出てきたクリスマスカード

10 years ago

「オーストリア」という国をご存じですか? 恥ずかしながら私、結構長い間、映画「クロコダイルダンディ」でお馴染みの「オーストラリア」と勘違いしていました。
だから10年前、オーストリアから1枚のクリスマスカードが届いたとき、大変驚きました。
「ワニが住んでいる乾いた国のはずなのに、氷山で囲まれた湖でジェットに乗っている!?」と。
無知とは本当に恐ろしい……。

世界地図で見ると、オーストリアはヨーロッパの真ん中に位置し、スイス、チェコ、ハンガリー、ドイツ、イタリアなど、8つの国と接しています。緯度だけでいえば、北海道よりもまだ北です。そりゃ、雪も降るし、氷も張ります。

2010年にケヴィン・レイタラー選手から届いたクリスマスカード。

2009年に初めて世界チャンピオンを獲得。当時17歳だったケヴィン選手。


17歳の世界チャンピオン

グリーティングカードの差出人は、ケヴィン・レイタラー。言わずと知れた世界のトップライダーです。2010年当時、若干17歳という若さで、プロスキー、GPスキーをはじめ、3クラスを制した世界チャンピオンからのクリスマスカードでした。

ケヴィン選手が乗っていたレースマシンは「ハイドロスペース」です。初めての4ストロークスタンドアップとして、2005年に世界のレースシーンに初めて登場しました。ケヴィン選手は、「ハイドロスペースの申し子」と呼ばれていました。
その彼が、ワールドファイナルで優勝したのが2009年です。

当時、プロスキークラスはフランス人のスティーヴン・ドーリアック選手の全盛期。彼は、チームカワサキのエースライダーとして2003年、2004年と2年連続で世界チャンピオンに輝いています。ケヴィン選手が初優勝を飾った前年の2008年、ドーリアック選手は2位でしたが、このときも、マシントラブルがなければ優勝間違いなしという状態での2位。脂の乗り切った時期でした。

2009年のワールドファイナルでの、ドーリアック選手との激しいバトルは、今でも鮮明に覚えています。ハイドロスペースに乗る17歳のケヴィン選手は「速いが、脆い」という印象がありました。体も今と比べて華奢で、「大人のドーリアック選手 vs 少年のケヴィン選手」といった図式でした。


決勝のMOTO 1。ケヴィン選手がホールショットを獲得。若さと勢いのある走りで、そのままホールトゥフィニッシュで逃げ切るかと思っていたレース終盤、ドーリアック選手がケヴィン選手を抜いてゴール。それを見て、「ケヴィン選手が勝つには、あと1年必要かもしれない」と思いました。

続くMOTO 2。またもやケヴィン選手がホールショットを獲得します。そして、やはり途中でドーリアックに追い抜かれますが、MOTO 1と違って抜かれても離されず、ずっと彼の後ろでチャンスを伺っています。最後にドーリアック選手を抜き返してフィニッシュ。劇的な初優勝を飾ったのです。

2009年のワールドフィナル。ゴール直後、快哉を叫ぶケヴィン選手。最愛の父と、喜びを分かち合う。

ホルダーでスポンサーでコーチと、ケヴィン選手のレース活動の全てを支えた彼の実父(写真左)。


氷上のレッグターン

2009年、激戦のプロスキークラスを制した17歳の若き王者は、このポストカードで見事なレッグターンを披露しています。背景は、雪で覆われた雄大な山々。水面に浮かぶのは、無数の氷のかけら。
右上端には、月桂樹の葉に囲まれた「1」が誇らしげに添えられています。

美しい。何もかも。
景色も、そしてこのレッグターンも。

デッキの中央左端に右足を置き、左足を外側に出して、甲を水面につけるフォーム。頭の位置、体の角度、脇の締まり具合、ヒザと足首の角度。パーフェクトです。

言ってみれば、何も今ここで、ハイドロスペースでレッグターンをする必要はありません。
レッグターンは、44/55の時代、ジェットを思いきり傾けてコーナリングしていた頃の乗り方だから、今のマシンはそこまで傾けて旋回する必要ありません。もちろんハイドロスペースも、そんなふうに乗る機種ではないのです。

押しも押されもせぬ世界チャンピオンが、雪景色の湖でレッグターンをしている写真を撮影し、ポストカードとして全世界に発信する。それが、ケヴィン・レイタラーという選手なのです。

当時、17歳という年齢から考えて、44/55時代のことは、人に聞くか、雑誌でも見て知ったに違いありません。
想像するに、彼はジェットの歴史を作ってきた先輩たちに、憧れや、尊敬の気持ちがあるのです。そうでなければ、彼が活躍する「今のレースシーン」で、使う必要のないこのターンを、わざわざポストカードにするはずがありません。

「自分はレッグターンを編み出した先輩たちを誇らしく思っているし、何よりジェットが大好きなのだ」。このクリスマスカードからは、世界王者のそんな声が聞こえてきそうです。

ヘルメットに隠れて表情までは分かりませんが、このカードのケヴィン選手はとても楽しそうに見えます。

2009年のワールドファイナル。さすがにレース中にレッグターンは披露しない。


「冬とケヴィン」 氷の湖で、ウェットスーツで練習していた世界王者

そういえば、こんな話を聞きました。オーストリアの冬は寒いので、ケヴィン選手が行く湖には氷が張る。そして、彼はそれを割ってジェットの練習をしているそうです。

これを、当時、ケヴィン選手をサポートしていたウェットスーツメーカー・クエーキーセンスの担当者が耳にして、「何を着て乗っているの?」と聞きました。ケヴィン選手に、ウェットスーツしか渡していないからです。
するとケヴィン選手は、「もらったウェットで」と答えました。驚いた担当者は、それでは寒いだろうと、すぐにセミドライスーツを彼のもとに送り届けたといいます。

ケヴィン選手はとても喜んで、それをクエーキーセンスの担当者に伝えたそうですが、彼の言葉に担当者は再び驚きました。
「世の中に、こんな良いモノがあったとは知りませんでした」。

一般のユーザーよりも、はるかに多くの時間をジェットと過ごしているワールドチャンピオンにして、このセリフです。

我が国では、ドライスーツもセミドライスーツも簡単に手に入ります。そのうえ、種類やサイズも豊富。おそらく日本は、世界で一番、ジェット用品が充実している国なのです。

雪山を背に、氷の湖でウエットスーツでジェットに乗る若者のカードを見ながら、「ドライスーツがあるのは、なんて幸運なことだ」と、しみじみ感じた次第です。

氷が張るような湖で真冬でも練習したからこそ、世界チャンピオンを手に入れることができたのだ。タイトル獲得の瞬間、ずっとケヴィンを見守り続けた父と喜びの抱擁。

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