2019年、BRPの三輪モーターサイクル「Can-Am(カンナム)」に、スポーティでリーズナブルなモデル「Ryker(ライカー)」が登場した。
ライカーとは「ライダー」と「バイカー」を組み合わせた造語。前2輪後ろ1輪のリバーストライクで、バイクともクルマとも違う、スポーティな走りが楽しめる。
同社が発売している「Can-Am SPYDER(カンナム スパイダー)」がラグジュアリー路線だとしたら、このライカーはアクティブ路線である。
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ライカーは、発売当初はスパイダーのエントリーモデルとされていた。外見はバイクのようだが、乗るとクルマのようだという部分は、スパイダーと同じだが、実際に走ってみるとスパイダーとは全く違う楽しさのあるモデルだった。
ライカーのサイズを軽自動車と比べると、軽自動車の規格は、長さ3.4m以下、幅1.48m以下、高さ2.0m以下に対し、ライカーは長さ2,352mm、幅1,509mm、高さ1,062mmである。幅が軽自動車よりも3cmほど広いだけで、かなりコンパクトな機種であることが分かるだろう。
ライカーの試乗記の前に、上位カテゴリーであるスパイダーについて簡単に説明する。ひと言で言えば、「ラグジュアリー感満載の乗り物」である。見た目も乗り味もスーパーカー。ラグジュアリー・スポーツの極みといえよう。
車重が軽く感じる。ブレンボやカヤバといったメジャーパーツと、電子デバイスで完全武装された足回りが、異様にスマートな走りを実現している。
最初はおとなしく普通に走り出す。オープンエアーなので開放感でワクワクするが、何も知らなくてイキナリ乗れば、走りそのものは退屈だと感じるかもしれない。理由はマシンポテンシャルの高さを引き出せていないから。スピードと足回りのバランスが、普通のクルマの比ではない。これに乗って「飛ばせ、無茶をしろ」と言うのではないので誤解しないように。足回りの限界値が異様に高いことを把握して走ってほしい。「おとなしい走り」の定義が変わるはずだ。
例えば、目の前を走っているクルマが急停止したとする。高性能なスポーツカーでも追突は免れないというような状況でも、スパイダーなら止まれるのだ。
何度も言うが、これには車両重量(スパイダーRT LIMITEDは464kg)が大きく影響している。4輪自動車では、500kgを切るスーパーカーなどないからだ。最高、最強な足回りなのである。
ちなみに、スパイダーRT LIMITEDは464kg、ライカーの最上位機種であるラリーエディションでも、車両重量は285kgだ。
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さて、本題である。スパイダーの試乗を踏まえたうえで、ライカーの感想だ。ライカーには、600ccエンジンの「ライカー600」、900ccエンジンの「ライカー900」、900ccモデルをベースに悪路走破性を高めた「ライカー ラリーエディション」の3種類がある。そのなかでも今回は、トップグレードに当たる「ラリーエディション」に試乗した。
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ライカー ラリーエディションには900ccの並列3気筒エンジンが搭載されている。最高出力は82hp(61.1kW)/8,000RPM。エンジンモードは「スポーツ」「ラリー」「エコ」の3パターンが用意されており、それらを切り替えることで出力特性とトラクションコントロールが変化する。ラリーモードにすれば、未舗装地でもスロットルを開けて走ることができる。
ハンドル位置とステップ位置は、前後にスライドさせることによって変更可能。体格によって、好みのポジションに合わせればいい。
ライカーの乗り味を、一言でいえば「ワイルド」。スパイダーのように高性能な電子機器に守られているという感じではない。むき出しのまま、ワイルドに荒野を走る感覚だ。アスファルトからの突き上げ感も強い。
外観のデザインとマッチして、あえて乗り味も武骨に仕上げられている。バイクやオープンカーのように体に当たる風も、ライカーの疾走感と爽快感にひと役買っている。
乗り味は、ワイルド。アスファルトからの突き上げ感も強い。大変楽しい乗りモノだ。
スパイダーが高額なスーパーカーなら、ライカーはカートやバギーに近い印象を受ける。だから、ドリフトもするしスピンもする。
それを支えるフロントのサスペンション形式は、ダブルウイッシュボーン。「ラリーエディション」には、KYB(カヤバ)製のプリロード調整機構付きのダンパーが採用されている。
パワーがあって、軽量コンパクト。だから、ドリフトもするしスピンもする。
カーブでは、バイクのように車体をバンクさせる必要はない。
代わりにハンドルを切るクルマ的な操作と、バイクのように体重移動やニーグリップを行う操作が求められる。決して楽なだけの乗り物ではない。スポーツ性も感じられるのだ。
決して、楽なだけの乗り味ではない。
しかし、都内を走るのならライカーは最高だ。クルマなら躊躇するような狭い道でも入って行けるし、時速50kmくらいでも十分楽しい。小回りが効くので、何かあったときにリカバリーも簡単にできる。さらにいえば、信号待ちなどで止まっても、バイクのように立ちゴケの心配は一切不要。走る楽しみに集中できる要因のひとつとなっている。
私見だが、ポルシェやGTRに乗って「本当に楽しい」と思える速度は150kmを超えてから。もちろんクルマの楽しさは、走ることだけではないので、文句を言うつもりもない。しかし、普通の街乗りで走りを楽しむなら、ライカーは最強で最高である。
風を切って都内を走る。ライカーは最高だ。時速50kmくらいでも十分楽しい。ワイルドなスピード感がたまらない。
BRPは、「機種ごとに乗り味を作る」ことに長けている。水上バイク(ジェット)でも、ライトウェイト感を前面に押し出すようなモデルもあれば、高級感を味わわせるために絶妙な重厚感を感じさせるモデルもある。そういう意味では、ライカーはBRPの真骨頂ともいえる乗り物だ。
スパイダーと比べて明らかに違うのは、ライカーの乗り味は、あえて「荒々しさ」を残していること。それが、乗っているときの楽しさを倍増させているのだから恐れ入る。
ライカーの乗り味は、あえて「荒々しさ」を残している。道行く人が振り返る。特に、子供には気を付けて、勝手に興奮する!
ライカーには、ジェットを彷彿とさせる楽しさがある。自由奔放なじゃじゃ馬感や、ワイルドさを強烈に感じさせてくれるのだ。
移動のための手段でも、荷物を運ぶための乗り物でもない。それなら、「何のために存在するの?」と聞かれれば、ファントゥライドのためにあるとしか言えない。
カンナムシリーズは、スパイダーとライカーの2種類あるが、「スパイダーは退屈だ」とか、「ライカーはしんどい」という声を聞くことがある。
スパイダーは、これだけ優れた足回りを持つ乗り物なのに、乗り手がその性能を理解できずに安全だと思える領域だけで走らせれば、当然、退屈な走りになる。逆に、ポテンシャルを発揮させれば「どこまで行けるの?」と驚かされ、退屈どころではないだろう。
ハンドルはかなりクイック。細かな動きでも敏感に反応する。楽しさの要因の一つだ。
ライカーに関しては、スパイダーよりも小ぶりで軽量なので、もっと強引な取り回しが可能となる。そういう意味においても、ライカーとジェットは似ている。
サイズがコンパクトで、ライダーと一体化して走れるところもジェットに似ている。コーナーで片側のタイヤが宙に浮きかけるほどの極端な走りもできる。四輪で片側のタイヤが浮くことなど滅多にない。限界が分からないほど、楽しい乗り味に夢中になる。
トライクは安定性に優れているので、普通に走らせるだけなら、非力な女性でも高齢者でも、簡単に乗ることができる。しかし、乗り手によって、走りに天と地ほどの差が出てくる。陸上の乗り物のなかで、私は「こんな楽しい」と思った乗り物は久しぶりだ。
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