シートに座った瞬間、目線の低さに驚いた。乗っているのは、3人乗りのフラッグシップ「RXT-X 300」なのに。17年モデルと比べて、ライディングポジションが圧倒的に低い。今まで、大型ベンツに乗っていたのを、フェラーリに乗り換えたくらいの感覚的な違いを感じる。
メーカーの発表では、シートの高さが1.4インチ(3.6cm)下がっているというが、体感的には10cm以上は低く感じる。これは、デッキの足を置く位置が下がっている(くぼみが深くなっている)からだ。このおかげで、ジェットスキーに立って乗ったとき、非常に低く感じるのだ。
「高級感」は同じでも、ベンツとフェラーリでは全く違うのと同じように、ライディングポジションが変わると、乗り物の印象が変わる。乗ってみると、船体が軽くなったのが分かる。軽量化し、レスポンスが良くなった。なのに、ピーキーさは全くない。ハルがワイドになったおかげで安定感が増し、動きが俊敏でも恐怖感は少ない。この直進安定性は間違いなく業界ナンバーワンだろう。
新開発のST3ハルは、極限まで直進安定性を高めた性能となっている。アンダーハルの両サイドの形状が平らになり、斜めに着水しても、船体が平らになるように設計されているのだ。水面が荒れていても、自動的に水平に補正してくれるので、安心してアクセルを握っていける。間違いなく世界最高の直進性能といえる。
モデルチェンジ前と比べて、小さく鋭く曲がれる。これは、RXP-Xの形状に似てきたことで、コーナリング性能が各段に向上したのだ。ただし、無理に船体をバンクさせて曲がろうとすると、ST3ハルが水平に戻そうとし、それによってハイサイドをくらって吹っ飛ばされることがある。私もアクセル全開で吹っ飛ばされて、かなりの距離を転がった経験がある。
RXT-X 300は、曲がるときにバンクさせなければ全く問題ない。RXP-Xはバンクさせて乗る船体形状だが、RXT-Xは船体を傾けずに曲がる。しかし、船体をバンクさせないで曲がるということは、全てのGを体で受け止め、耐えることになる。これは結構、苦しい。
私は、派手に吹っ飛んで痛い思いをいてからは、1度も吹っ飛んでいない。頭で意識するだけで、キツさはあるが、キチンと曲がれる。
エンジン出力自体は以前と同じだが、冷却システムの改良やプラグの変更により、全体で約40kgも軽量化。これにより、パフォーマンスが向上した。「すでに、最高速はユーザーの満足度を十分に満たしている」といえよう。スポーツ性能は極限まで高められ、耐久性や安心感も増していると感じられる。余計に、アクセル全開で走りたくなるのだ。
「走る楽しみ」は申し分ない。ワイド&ロー化された船体は、攻めようと思えば、まだまだイケる気にさせてくれる。ただし皆様、くれぐれもバンクさせてハイサイドにご注意を。1度吹っ飛ぶと、体と頭が学習するので大丈夫だ……。
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