今回、「日本ボート・オブ・ザ・イヤー(BOTY)」の2024年モデル試乗会で、大型艇部門ノミネート艇「PRINCESS Y85」に試乗する機会を得た。
「PRINCESS Y85」の製造元は英国のPrincess Yachts社、国内での販売はプリンセスヨットジャパンが担っている。
「PRINCESS Y85」は85フィートの船で、「メガヨット」とも呼ばれる、80フィートクラスの大型クルーザーだ。
その姿は、海上を移動する高級コンドミニアムのような風格がある。
横浜ベイサイドマリーナに停泊する「PRINCESS Y85」の第一印象は「大きくて、きれいな船だな」である。
近づくにつれて全長26.2mの船体に圧倒される。「これがメガヨットか」と、改めて実感する。
英国製の船体は、エレガントでありスタイリッシュ。
後部のスイミングプラットフォームから乗船するが、ジェットが余裕で積載できるほど広い。聞けば、5.7mの幅で2.1m後方に飛び出している。
こういった大型船には、水上バイクが積んであるケースがよくある。
沖に出てからのレクリエーションのひとつとして、ジェットは非常に人気があるのだ。
室内に入ると、広々としたラウンジスペースが迎えてくれた。室内には光が溢れ、最高級の素材で仕上げられた贅沢な空間が広がっている。
ソファとローテーブルが置かれ、その前方にはカウンターギャレーとダイニングがある。 そのさらに前方がコックピットだ。
階段を降りると、船底には4つのキャビンがあり、どの部屋も十分な広さのベッドやシャワールーム、トイレなどが設置されている。
停泊時のわずかな揺れがなければ、どこか高級ホテルの部屋にいるのだと錯覚しそうになるほど、快適な空間だ。
バウの先端はVIPキャビンとなっており、中央には幅1,800mm、長さ2,000mmのキングサイズベッドが置かれている。
外に出て、フライブリッジ(キャビンの上にある操船スペース)に上がると、そこにもソファやテーブルが置かれ、風を感じながらくつろげる空間となっている。 コックピットは2つのシートがあり、ディスプレイには海図やレーダー、ナビゲーションシステムなどがスイッチひとつで切り替わる。どれを取っても、最高級な装備に囲まれている。
今回、1階のコックピットではなく、2階のフライブリッジで操縦をさせてもらった。 MAN製V12エンジンを2基搭載し、最高速度は30ノット(時速55.56km)に達する。
しかし、こういう船は「最高速を出すものではない」。あくまで「船を楽しむ」ものである。
スタッフの方に、「この船にとって、一番快適な速度は時速何キロですか?」と聞いたところ、「エンジン回転数が1900回転」と言われた。
その回転数で走ることが一番楽しいのだという。
普段、クルマに乗っている身としては回転数で言われたことに驚いたが、言われた通り1900回転前後で調整しながら走らせると、揺れもないし気持ちがいい。
この日の横浜沿岸は波が少ないとはいえ、全く揺れを感じない。船が横揺れしないのは、「スタビライザーが付いているからだ」と言う。
「今、22ノット(時速約40キロ)くらいのスピードが出ていますが、そんなに速く感じないですよね?」とスタッフの方に言われて、初めてそんなにスピードが出ていることを知った。自分では「徐行速度より少し速いかな」と思うスピードで走っているつもりだった。
船が大きく安定し、横揺れもないから、スピードが出ていることにすら気が付かなかった。それほど、“よくできた船”なのだ。
「PRINCESS Y85」の価格は約16億円だという。
海外では、ある程度の大きさの船になると「キャプテン」と「クルー」が付くと、以前、船遊びのスペシャリストの方に聞いていたが、まさにこの船はそういう人がいる船だ。
この船も、オーナーが来るときは3人のクルーが船の全ての面倒を見ているという話だった。
今回、85フィートという大型のクルーザーに試乗したが、この船は自分で操縦するのではなく、プロのキャプテンに操縦してもらうものだと思う。
オーナー自身はゲストを呼んで、「時間を楽しむ」ための乗り物だと感じた。
「日本ボート・オブ・ザ・イヤー(略称・BOTY)」とは、国産、輸入を問わず国内で販売された全てのボート、PWC(水上バイク)のなかで、最も優れた艇に贈られる名誉ある賞である。
BOTYには「小型艇」「中型艇」「大型艇」「PWC(水上バイク)」「BEST VALUE」「BEST FUN」「BEST FISHING」の7つの部門がある。
区分として、「小型艇・28フィート未満」「中型艇・28~40フィート未満」「大型艇・40フィート以上」となっている。
船の大きさは、メートルではなくフィートで表記される。1フィートは30.48cmなので、「約30cm」で計算すると分かりやすいだろう。
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