出発点のマリンウェーヴ竹原から尾道まで、ジェットスキーなら1時間もかからない。基本的に瀬戸内海は高波が出ることが少ないが、昔、水軍がこの辺りに城を構えていたことからも分かるように、潮の流れは速くて複雑だ。だから、潮流を知り尽くした人に水先案内を頼むのが一番安心である。
ジェットスキーのツーリングで一番困るのが上陸する場所だ。しかしこれも、地元のジェットショップに聞けば、最もいい方法を教えてくれるはずである。
今回のツーリングで係留地として教えてもらったのは、「おのみち海の駅」。対岸の向島に面しているほうは流れが速く、ジェットスキーの係留に不向きだ。少し入江になっている場所に泊めさせてもらうことにした。
この海の駅から上陸して、少し歩くと尾道のメインストリートになる。散策にも便利だ。到着したのがちょうどランチタイム時だった。頭の中が「尾道ラーメン」でいっぱいの私は、早速、ラーメン屋に向かいたい。しかし、連れがこう言ったのだ。
「せっかくだから、お好み焼きを食べよう」
もちろん、両方とも美味しく完食した。ジェットツーリングは、非常にお腹が減るのだ!
水先案内人の中田さんは、地元・尾道で働いている人だ。だから、このあたりの地理にとても詳しい。「写真を撮るなら、どこが一番いいですか?」と尋ねると、観光マップには載っていない特別な場所を教えてくれた。
尾道は坂の町。撮影スポットで教えてもらった小学校は、長い坂道と階段を登った先にある。展望台でも観光地でもない。本当に、地元の人しか行かない場所である。
階段を上がりきって、ひと息ついた。さすがに学校の敷地には入れないので、ここが終点だ。今、登ってきたばかりの階段を振り返ると、目の前に甍の波が広がる。遠くには尾道水道と向島。
ここは決して「風光明媚」ではない。しかし、「懐かしい風景」だ。ヘルメットを被っているので、実際に風が頬に当たるはずはないのに、確かに海からの風を感じた。
時にはノスタルジックな旅に出る。いくら美味しくても、毎日、カラフルなフランス料理では飽きる。焼き魚や卵焼き、味噌汁に白米。淡いパステルカラーの日本食が、無性に恋しくなるときもある。つまり、そういうことなのだ。
我々、日本人に脈々と流れる血が、「尾道」の景色を欲するのだろう。自分の故郷でもないのに、尾道に来ると、やけにホッとする。
ぐねぐねと続く細い小路に、尾道が「引っ越し屋泣かせの町」といわれているのを思い出した。道幅が狭く、車が通れない。坂の上の家でも全て手作業で運ぶのだ。そりゃ大変だろうなあ。町を歩いていて、つくづく感じるのは、ここに住む人は、こよなくこの町を愛しているということ。だから、皆が優しい。
時計を見ると、お昼にはまだ少し早いが、小腹が減った。この日は休日。普段でも、土日には多くの観光客で賑わうのに、県外車やレンタカーのナンバープレートを付けた車で、道路は大渋滞だ。目当てはもちろん「尾道ラーメン」。事前に、マリンウェーヴ竹原の山村オーナーにおススメのお店を聞いておいた。
向かったのは「つたふじ」というラーメン店。開店直後にも関わらず、長蛇の列ができていた。皆、考えることは一緒である。列の最後尾に並んでいると、前に並んでいたオバチャンが、「何をしているの?」と話しかけてくる。「竹原からジェットスキーで来た」というと、すごく驚いた顔をされた。
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