皆さんも免許を取得するときには、絶対に「ロープワーク」を習っているはずです。
しかし、私も含めて「そんなものは、とうの昔に忘れてしまった」という方も多いと思います。
「ロープワーク」とは、苦労せずにほどける結び方の総称です。
今回、紹介する「もやい結び」だけは、絶対に知っておいたほうが良いです。マリーナの桟橋に一時係留することは、よくある話です。ロープワークができない人は、ひたすら何重にも固結びをします。
人の引き波でロープがほどけ、ジェットスキーが流されるという経験をしたことがある人はなおさらです。
最初は一重の固結びだったのが、ロープがほどけるのが嫌で、一度結び、二度結び……気が付いたら、5回ほど結んでいる自分がいます。
出発するときになって、涼しい顔をしながらも、心中、大汗をかきながら、時間をかけてロープをほどく自分がいます。自分がほどくならまだしも、他人にやらせるのは拷問です。ほとんどパズルの世界です。
「俺のも、結んどいて」。ロープワークができない人間にとって、これは最低の言葉です。
「私は結べません」と、断れるケースならOKです。昔話で盛り上がり、「今のレジャーの客は……」みたいな話のあとに、「俺は結べません」とは言えない場面に遭遇することがあります。
「得意の固結び」で結ぶと、他の人がほどけません。こんな結び方は迷惑です。
こんな悩みも、「もやい結び」だけ覚えていれば、一発解消なのです。「もやい結び」は、水辺のシーンで「公用語」のようなものです。ぜひとも覚えてください。
山村氏とツーリングに出かけ、彼のロープワークのすごさに何度も驚かされています。
例えば、荒れた場所での係留。大小さまざまな太さのロープを駆使して、取材艇とジェットスキー数台を、まるでクモの巣に絡まった獲物状態のように共に結び、しかも、各船体が絶対に傷つかない、芸術的ロープワークを見せられてきました。
穏やかな平水面での係留であれば、ロープ1本で事足ります。しかし、大荒れの水面に、一時係留しなければならない場面は必ずきます。