① 信頼のおけるジェットスキー専門店で整備済みのものを購入する方法。安心度高し。
② 信頼のおけるジェットスキー専門店で、現状渡しのものを購入する方法。問題点は全て自分で直す覚悟が必要かも。
③ 取り扱い方法の確かな友人などから購入する方法。
④ 知人などから、メンテナンス状態が不明なものを購入する方法。
⑤ インターネットオークションなどを通じて、どこの誰かも分からない人から、状態の分からない船を購入する方法。
選択肢はいろいろあるが、①に近いほど安全で、買った後に故障やトラブルが起きる確率が低い。逆に⑤に近いほど、何かしら問題が発生する可能性が高いだろう。程度のよくない船をレストアするのが大好きな人なら、どこで買ってきても大丈夫かもしれない。しかし、程度がよくて故障しない船を買いたいなら、なるべく①に近い選択肢を選んだほうが安全だ。
インターネットのオークションなどを通じて、見ず知らずの人から買った場合にトラブルが起きやすいのには、それなりの理由がある。つまり、実物を見てしまうと誰も買わないような程度の悪い船を売っているというケースが多いということ。売り側にとって、都合の悪いことは書かれていない。
もちろん、インターネット経由で売られているジェットが全て粗悪品だと言い切ることはできない。しかし、売り主の身近にいる人などが買ってくれない船だから、インターネットで売りとばしてしまう場合があるということは、心得ておく必要がある。
第1のポイントは、信頼のおけるジェット専門店で、実際に現物を見て、相談して買うこと。自分で見ても本当の現状は分からない。だからこそプロの意見を聞いておくことが重要。自分が行動できる範囲にあるショップであれば、なおよい。遠ければ遠いだけ、何かトラブルがあったときに、やりとりをするために時間とお金がかかるからだ。
オークションなどでの個人売買や、遠隔地からの購入は絶対に避けたほうがいい。現物を見ずに買うのには大きなリスクを伴うし、購入後に売り主と連絡が取れなくなり、名義変更ができなくなったというトラブル例もある。どんな故障をして、どんな修理をしたのかも分からない。
各部を細かく見る前に、どこの誰が、どういう場所で乗っていたのか、そして、どのような改造やメンテナンスが行われた船なのかという、「船の素性」を知ることが大切だ。素性が分かれば、船の現状が分かってくる。例えば、ずっと海で乗っていた船だと分かれば、「海の塩で、傷んでいる箇所が多いかもしれない」と容易に想像できる。
ジェットショップがユーザーからジェットスキーを買い取る場合は、素性について、きちんと調査することが多い。また、買い取り後にショップで修理やメンテナンスをした場合には、その内容を把握しているはずなので、聞いてみるとよいだろう。
もしその船を買うことになった場合は、メンテナンス内容を記録した書類があればもらっておく。後でその船を手放すことになった場合には、「この船は○年に○○のメンテナンスをしていますよ」という証明になるので、買い取り査定額のアップが期待できる。
程度の良し悪しの最初の目安は、「プラグを外す」こと。少しでも外れないと思えば、それ以上はやらない。錆びたプラグは簡単に折れるので、そのあとの処理が大変だからだ。キチンと手入れされている程度の良いものなら、プラグは簡単に外れる。メンテナンスが年に1回程度でも、グリスアップがキチンとできていれば、問題なく外れるはずだ。プラグは、エンジンがきちんとメンテナンスされていたかどうかの、非常に大きな目安になる。
エンジンルーム内が埃まみれだったり、油や錆び水が溜まっていたら、エンジン内部も同じ程度のコンディションだと判断してもいい。エンジン自体が錆びているものも同様だ。展示している販売店が、雑に扱っていると推測できるので、なるべく避けたいところだ。
またエンジン周辺のネジやボルトに、回した跡が残っていたら要注意。ネジを回すと、ネジ山の角が少し変形していたり、ネジの塗装が剥げるなど、何かしら跡が残るので、注意深く見れば発見できるはずだ。ショップでエンジンを開けるのは「何か特別な理由があった」からで、その理由はきちんと確認しておいたほうがいい。オーバーホールのために開けたのかもしれないし、焼き付きなどの修理のためだったのかもしれない。優良ショップであれば、店でのメンテナンスの内容は全部記録している。前オーナーがエンジンを開けたのであれば、店がジェットを買い取るときに、その理由を聞いているはずなので、遠慮なく店員にたずねてみよう。
まずは船体の外観をチェックする。ジェットの船体は強化プラスチック類なので、衝撃に弱く、ぶつかると割れたり欠けたり破損したりしやすい。ハルは側面だけでなく、船体の下に潜ってチェックする。その際に懐中電灯があれば、暗いところまで見られるので便利だ。船底を見る際には、スコープゲートやライドプレート周辺も、傷や破損箇所がないか確認しておく。スコープゲートから中を覗けばインペラーが見えるので、もし大きな損傷や錆びつきがあれば発見できるはずだ。同様に、ステアリングノズルからもポンプの中を覗いてみる。
ハルは、クラックがないかを確かめるだけでなく、修理した跡がないかを見ておく。大きい修理をしている船は左右のバランスが崩れている場合があるので、なるべく避けたほうがよい。ただし、補修跡はパテで埋めてきれいに塗装をしてしまえば、外からの見分けがつきにくくなってしまうので、注意が必要だ。エンジンルームなど、船を内側からチェックするときに、ハルの内側に補修跡がないかも念入りに見ておく。船体内部の発泡体を切って外した跡があれば、その奥の船体を補修した可能性がある。
塗装やデカールやデッキマットが剥がれていたり、色あせしている場合、後になって塗装や貼り直しをすれば、それなりの費用がかかる。外観があまりきれいではない船は、外観の補修費用も上乗せして考えておいたほうがよい。
「故障しないで走ることが重要だから、見た目の汚れは気にしない」と割り切って買ったつもりでも、人間の心理として、乗っているうちに船に愛着がわいてくるので、結局は直したくなるということもありうるからだ。
だが、見た目のよさを優先しすぎるのも考えものだ。いくら年式が新しくて外見がきれいでも、エンジンの調子が悪ければ使い物にならないからだ。
シート、デッキマット、ハンドルグリップは、グリップして体を支える大切な部分なので、傷んでいたら交換するつもりで考えておく。また、各部とも使用時間に比例して傷みが進んでいくので、その傷み具合から使用時間を推測することもできる。逆に高年式のモデルでアワーメーターも少なく、外観も綺麗なのに、著しく安いものにも理由があるかもしれない。ハルに大きなクラックが入っていても簡単な補修で見た目だけキレイにすることは出来るのだ。しかし、時間の経過とともに必ず割れる。
海水で使っている場合は、淡水よりも各部が傷みやすいので、その差は一目瞭然だ。特にインペラーやポンプまわりなど、海水に直接触れる金属の部分が最も顕著に傷みが出やすい。塩にやられるとインペラーとハウジングの間に隙間ができてしまうなど、性能劣化の原因となる。塩はどれだけ洗ってもポンプまわりやネジなどに多少は残るので、海で乗っていた船の場合はどれくらい塩がついているかを確かめておく。
しかし、淡水でしか使われていないからよいというわけではなく、淡水でも砂地で乗った船であれば、砂や砂利を吸ってインペラーなどが傷んでいる可能性がある。
次にハンドルまわり。各部に錆びやガタツキがないか、各レバーやスイッチがスムーズに動作するかをチェックする。燃料系などのメーター類は、見た目がきれいでも故障していて動かないことがあるので、エンジンをかけてもらったり、試乗をしたときにはメーター類がきちんと作動するかどうかのチェックを忘れないようにしたい。
購入前には、できるかぎり試乗をして、不具合がないかを確認したほうがよい。陸上では調子よくエンジンがかかっても、水上では走らないというのはよくある話。陸では何の負荷もかからないが、水に浮かべてみると排気ガスや水など、いろいろな圧力がかかり、コンディションが変わるからだ。
前述のハルの損傷による船体バランスの崩れも、水に浮かべてみないと判断できないので、やはり試乗は欠かすことができない。たいていのショップでは快く試乗に応じてくれるので、遠慮せずに相談してみるとよい。「今はバッテリーを外してあるから」といった理由で試乗に応じてくれなかったり、エンジンすらかけてくれないようなショップは、商品に自信がないのだろう。売り物として整備してあるはずなのだから、特別な事情がないかぎり、エンジン始動くらいは簡単にできるはずだ。
ただし豪雪地域にあったり、店の近くにゲレンデがないなど、すぐに試乗できないショップもあるし、船検が切れているために河川や海では乗れない船もある。また、夏場などの店が一番忙しくなる時期に、予約もせずにいきなり試乗をするというのは難しいので、できれば平日などに予約をして、余裕を持ってゆっくり乗ったほうがよい。本当に故障がないかチェックするには、急いでパパッと乗ってみても分かりづらいので、できれば納得のいくまで乗るのが理想的だ。
もし、買いたいモデルと同型のジェットを持っている知り合いがいれば、ショップで試乗をする前に一度乗らせてもらってもよい。故障していないジェットのエンジン音や乗り心地を体で覚えておけば、試乗をしてみて不具合があった場合に異変に気づきやすい。免許を取って初めて乗ったのが調子の悪い試乗艇では、試乗の意味がなくなってしまう。壊れていたところに気づかなかった場合は、悪質なショップでは「試乗して壊れてないことを確かめたじゃないですか」なんて言われて、つらい思いをする可能性もあるかもしれない。
加速が鈍かったり、エンジンがよくないと感じたら、遠慮しないでその場でどんどん聞いてみよう。自費でエンジンやインペラーまわりを修理すると高額な修理代がかかる可能性があるので、試乗の段階で慎重に判断したいところだ。