ドクロや羽根、チェーンやクロスなどが美しく描かれた、華やかなヘルメットをレース会場で見かける。他のどんなデザインとも似ていないが、確実にそれは「Nagai Designs(ナガイデザイン)」が手がけたものだと分かる。
同社代表の長井 崇氏のポリシーは、「同じデザインは2度と使わない」ことだ。常に新しいデザインを考え、進化している。
今回、ナガイデザインの2021年新作ヘルメットが完成した。
テーマは「メッキ」である。通常、メッキペイントは単なるアクセントとして使われることが多い。しかし長井氏は、時間と手間暇を惜しみなく注ぎ込み、デザインの核として使っている。
見たことがあるようで、実は斬新。シルバー一色だけのメッキで、個性豊かな表情を創り出している。
また、新たな試みとして、「ドライカーボン素材」を使ったペイントにもチャレンジしている。普通は、「カーボン柄を見せたい」という理由から、ペイントを控えめにする傾向がある。あえて今回、セオリーを無視して、ドライカーボン地に「メッキ」を使い、大胆なデザインを施した。
遠目からでは分からないが、近寄ったらカーボン目と斬新なデザインが、高い次元で調和していることが理解できる。
「誰もやらないことこそ、どんどんチャレンジしていく」という、ナガイデザインの基本理念がしっかりと現れた作品だ。
中世ヨーロッパの騎士を彷彿とさせる長井氏のデザインは、モータースポーツに気品を与えてくれる。氏のヘルメットを被ると、凛としたたたずまいを纏えるからだ。
長井氏は、常日ごろからこう言っている。それは、「僕のヘルメットを被るライダーは、“本物”だということ」。
長井氏自身が、かつてレースに出場していたレーサーだったからだろう。「偽物と本物が、分かってしまう」という。
「口先ばかりのイミテーションライダーには、自分のヘルメットを被ってほしくない」と、長井氏は思っている。「そう思うからこそ、自分自身が “本物” であり続ける必要があるのです。本物と偽物の違いは、どれだけ真剣に、その仕事と向き合ったかの質量です」と語ってくれた。
彼が認めた “本物” のレーサーのために、自分自身が “本物” であり続けるために、今日も骨身を削って新しいペイントを模索している。