カテゴリ
タグ
  1. TOP
  2. LIFE
  3. ヘルメットペイントの第一人者 ナガイデザイン代表 長井崇氏 インタビュー 1/2 ジェットスキー(水上バイク)

ヘルメットペイントの第一人者 ナガイデザイン代表 長井崇氏 インタビュー 1/2 ジェットスキー(水上バイク)

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

NAGAI DESIGNS STORY

「己の美学」を追求し続ける孤高のペイントアーティスト

レース会場で、ひときわ目を惹く華やかなペイントが施されたヘルメットがある。ヘルメットいっぱいに、ドクロや羽根、チェーンやクロスなどが美しく描かれている。
それを手掛けるのが、Nagai Designs代表、長井崇氏である。「同じデザインは2度と使わない」と公言する長井氏は、常に新しいヘルメットペイントを模索し、進化を続けている。彼が考える、「ヘルメットペイントの美学」について語っていただいた。


長井氏が「黒一色だけで、どこまで自分の技術で塗れるか」に挑戦した艶消しブラックのペイント

ありえない配色にあえてチャレンジする。どこまで自分の技術で塗れるのか!?

WJS この黒い艶消しのヘルメットは、すごく素敵ですね。
長井 そういってもらえると嬉しいです。これは、「黒一色だけで、どこまで自分の技術で塗れるか」というのに挑戦しました。艶があると上手に見えるので、わざとマットブラック(艶消し黒)にしています。艶消しで1色のみという注文をされることがまずないので、あえてチャレンジたんです。

WJS 今までにないカラーなだけに、逆に、渋くて格好いいです。
長井 ありがとうございます。これ、実は展示用なんです。ペイントしたヘルメットは全て受注品なので、実物が自分の手元に1個もない。それだと人に見せられないから、あえて売れないモノを作っておかないと、いつまでたっても展示用のストックがないんです。


新品のトラックのままでは格好悪いと、買ってきたピックアップトラックにペイントしている。「車を裏返すと新品だってバレバレです」と、長井氏。

「この世界には、背中に羽根が生えているヤツがいる」と知ったとき、レースをやめました

WJS 長井さんは、いつからヘルメットのペイントを始めたのですか?
長井 塗り始めて30年近いですね。

WJS 失礼ですが、今、おいくつですか?
長井 昭和37年(1962年)3月生まれ、57歳です。

WJS もともとジェットスキーのレーサーだったと伺ったことがあります。いつごろまで出ていたんですか?
長井 1980年後半までレースに出ていたんです。当時は、まだNAクラスまでしかなかった。その最高峰クラスで、シングルゼッケンまでいきました。

WJS 44/55時代のトップレーサーですよね。どうしてレースをやめたのですか?
長井 俺の後に竹ちゃん(竹野下正治)が出てきたから。やめた理由は竹ちゃんです。

WJS 竹野下プロと、何かトラブルがあったのですか?
長井 そういうのは全然なくて、自分の心の中の話です。プララン(練習走行)で、竹ちゃんと一緒に走ったとき、「この世界には、背中に羽根が生えてるヤツがいるんだ」って、ものすごいショックでした。そのあと、同じスターティンググリッドに並んだとき、「あっ、このヒートでやめよう」って。私のレース人生が終わりました。30年も前なのに、不思議と今でもはっきり覚えています。

WJS シングルゼッケンまでいったのに、やめることに未練はなかったのですか?
長井 俺も、やるからにはトップを目指していました。でも竹ちゃんと走ったとき、ポテンシャルの違いというか、未来永劫勝てる気がしなかった。これから先のレースを、自分の分まで全て彼に託そうと真剣に思いました。自分の代わりに、世界一になってもらいたい。もちろん、ナガイデザインのヘルメットを被ってね。

WJS 同じ土俵で戦っていたからこそ、竹野下プロのすごさが理解できたのですね。
長井 それから竹ちゃんとは、家族ぐるみで付き合っています。俺の息子はもう社会人だけど、子供のころ、竹ちゃんに風呂に入れてもらっていましたよ。ヘルメットを被ってない今でも、彼はナガイデザインのステッカーを貼ってくれている。そういう付き合いなんです。

よく見ると、女性の足のストッキングが網状になっている。試行錯誤で、ここまで精密なペイントができるようになったという。

「ナガイデザイン」っていっても、デザインなどしていない。ただ好きな絵を描いてるだけ

WJS 長井さんのヘルメットのなかでも、バイザーの裏にセクシーな女性の足が描かれていたデザインが印象に残っています。
長井 あれは、自分がレーサー時代にやっていたものです。スタート前にすごく緊張したから、バイザーの裏に自分で書いたお姉ちゃんの足を見て、緊張しないようにしていました。そうしたら、他のライダーも「俺にも書いてくれ」って。最近の作品は、お姉ちゃんのストッキングが網状になって、より色っぽくなっている。昔はこの網状ができなかった。試行錯誤で、ここまできましたよ(笑)。

WJS 「ここまで精密さが必要か」と思うくらい精密ですよね。
長井 「ナガイデザイン」っていっても、デザインなどしていない。ただ好きな絵を描いてるだけ。ワンポイントで格好いい絵を入れて、そこにラインがあるデザインが好きなので。

WJS 普通、ヘルメットの絵柄は左右対称にすることが多い気がするのですが、長井さんのヘルメットは違いますよね?
長井 絵を描くのが好きなんで、いっぱい描きたい。いっぱい絵を描きたかったら非対称のほうがいい。右左違うほうがいっぱい描けるでしょ(笑)。それに、そっちのほうが面白いでしょ。

写真左:塗料を吸い込まないための完全防御。右:バッグやギターにもオリジナルペイントが施されている。

長井氏の原点ともいえる「ドクロ」。同じモチーフでも、ヘルメットによって全く違うドクロが描かれる。

ヘルメットには国境がない。良いモノは世界中どこでも評価される

WJS ドクロのモチーフをよく描かれていますが、思い入れやこだわりがあるんですか?
長井 好きっていうか、ドクロって単純にカッコイイと思う。小学校2年生くらいのとき、ドクロの絵を書いていたのを覚えているんですよ。40人のクラスで、40個紙にドクロを書いてハサミで切って全員に渡した記憶があります。

WJS 40個、全部違うドクロを描いたんですか?
長井 体まで入れてるから細部は違うんだけど、顔は一緒。でも、何でそれをやったか、よく覚えていないんですよ。多分、皆が上手だって誉めてくれたから調子に乗って書いたんだと思う。そのころから、ドクロは俺のキャラクターだった。

WJS ドクロはナガイデザインの原点なのですね。長井さんのヘルメットは、どこかアメリカの匂いを感じるのですが、「古き良きアメリカに憧れた世代」ですか?
長井 まさにソレです。それが基本じゃないですか。あえて言わせてもらえば、俺は日本人だからアジアのアートも日本の「わびさび」も分かる。アメリカへの憧れもあるし、今は、ヨーロッパのライダーのヘルメットも塗ってる。だから「何でもござれ」ですよ。ヘルメットには国境がないです。良いモノは、世界中どこでも評価される。それが最近になって、ようやく分かってきました。

WJS ここは素敵な仕事場ですね。1960年代のアメリカのようです。
長井 俺たちが、一番憧れた時代のアメリカですね。だから、友人が来ると帰らないから困ります。この部屋を作るのに、そいつらが協力してくれたから、あまり文句は言えませんけど(笑)。

続き、ヘルメットペイントの第一人者「長井崇氏 インタビュー2」はコチラをクリック

【ギャラリー】写真で見るNagai Designs ヘルメットセレクション

関連記事
格好いいヘルメットのデザインって何?
ジェットスキー(水上バイク)、ヘルメットはいるの?
花形のプロスキーGPクラス 2019年 ワールドファイナル
日本人ライダー「ジェットスキーワールドカップ 2019」ダイジェスト「Pro Ski Grand Prix」

ジェットスキー中古艇情報

月間アクセスランキング