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国内ランナバウトクラスの絶対王者 砂盃 肇 ジェットスキー(水上バイク)

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日本のランナバウトクラスの頂点に君臨する「砂盃 肇」

「乗れる限りレースに出る」という言葉に迷いはない

プロスポーツの世界で、トップアスリートと呼ばれる人たちは、体力の限界だけでなく、勝てなくなると引退するケースが多い。確かに野球やボクシングなどを見ていて、贔屓の選手が毎回三振だったり、ノックアウトされてばかりの姿は見たくない。

しかし、砂盃 肇プロは「年をとっても、自分は乗れる限りレースに出ますよ。何歳で走っても、勝てなくても構わない。レースは楽しいですから」と言う。
誰よりもストイックに勝利を追い求め、ベストを尽くしている。成績なんてどうでも良いといいながら、最後まで諦めない。

2003年に初めて全日本タイトルを獲得してから、昨年(2019年)までに、世界チャンピオンが1回と、11回の国内タイトルを手にしてきた。押しも押されもしない日本のプロランナバウトクラスの「絶対王者」として、その強さは衰えを知らない。



ロングインタビュー・世界戦に対する砂盃 肇プロの想い

超悔しい。そのために1年間戦ってきましたからね

WJS 昨シーズンは国内チャンピオンを獲得おめでとうございます。満を持して臨んだタイのワールドカップでは、他のライダーにぶつけられて、マシンが大破し、本人も無傷とはいえない状態でした。それで連覇を逃したのですよね。
砂盃 超悔しいです。ホールショットだったのに、後ろからノンストップで内側から真っすぐにぶつけられ、マシンも体も多大なダメージを負ってしまいました。

WJS このインタビューは、昨年の全日本チャンピオン獲得についてお伺いしようと思ったのですが、やはり、口から出る言葉は世界戦の悔しさですね。
砂盃 そのために1年間戦ってきましたからね。極端な言い方をすれば、国内戦は世界戦の練習という部分もありました。マシン開発をしてくれるマリンメカニックの今崎さんは、「本番艇に好きなだけ乗っていいよ」と言ってくれるのですが、やはり世界最速マシンを壊すのは嫌なので、本番艇での練習は少なめにしています。でも実戦のレースなら、さまざまなデータが入手できるので遠慮なく乗れますからね。

WJS 砂盃 肇というライダーは、日本国内では敵なしで、世界での評価は「ライディングの上手い堅実なライダー」と思われています。本当は、闘争心に溢れたアグレッシブなライダーだということを、世界に見せる良い機会だったのに残念でした。
砂盃 今回は、自信がありましたからね。数年前のアメリカのワールドファイナルで、ボッティ選手に抜かれたんです。ここ何年も、自分が人に抜かれた記憶はほとんどありません。抜かれても必ず抜き返してきました。それが抜かれた。今の自分は、あの時とは違います。マシンも自分も、全然、速くなっている。だから、今年はやれると思っていました。あのときの借りを返して、抜き返すくらいの自信があったんですよ。



第2ヒートで激しくぶつけられた後は、覚えていることと記憶が飛んでいる部分が混在しています

WJS 予選では、ホールトゥフィニッシュの断トツの1位で通過。しかし、モト1でシートが外れてしまいましたね。
砂盃 あれは、自分が1番驚きました。通常では考えられないくらいの負荷がシートにかかって、根元のストッパーがもげていました。よりによって世界戦の当日、本番でもげるか!? って思いました。

WJS レース内容について伺いたいのですが、第1ヒートのスタートは、砂盃プロもボッティ選手も置いてきぼりにされるくらい中東勢が速かった。しかし、彼らは序盤でマシンが壊れました。予選で2人と走ってみて、相当パワーを上げてきたんでしょうね。
砂盃 そうかもしれません。あまりにも早く壊れていましたからね。

WJS 決勝は3ヒート制ですが、第1ヒートは6位くらいまでに入れれば、十分に優勝争いに参加できたのですか?
砂盃 十分可能です。僕はシートが外れたせいで6位から11位に後退しましたが、何もトラブルがなければ、4位ぐらいでゴールできたかなって思いました。

WJS 第2ヒートで激しくぶつけられて、そのあとの記憶がないと聞きました。陸からは、水煙で何も見えなかったのですが、何があったのですか?
砂盃 アウトコースのホールショットを獲得して、左のカーブを走行中に後続艇に内側から真っすぐ激突されました。そいつが誰なのか、いまだに分かりません。ぶつけた本人は、絶対分かっているはずですが、誰も言いませんし……。レース中のことも、覚えていることと、記憶が飛んでいる部分が混在しています。

WJS 第3ヒートは、アウトコースのホールショットを獲得して、合流でボッティ選手に次いで2位。そのままの順位でフィニッシュ。ある意味、順当に終わった波乱のないレースでした。
砂盃 第3ヒートで覚えているのは、第2ヒートでぶつけられた足が痛くて、全く踏ん張りがきかなかったことだけ。絶対、ボッティ選手を抜いてやろうと思って走っていたのかも覚えていません。1年間、この大会のためにやってきたので、いつもの自分だったら、「よし、絶対に抜いてやる」と考えると思うんですが、それが記憶にない……。



ジェットスキーが「スコープゲートに水を吸わせて前に進む」。ライダーがマシンを操り、その姿勢を常に作り続ける必要があります

WJS 悔しい話をさせてすみません。次に、ライディングフォームについての考え方を教えてください。レース中、ボッティ選手のライディングフォームが強烈に記憶に残っています。タイトルを獲得したマーカス選手や、中東勢はずっとシートに座ったままですが、ボッティ選手は全く座っていませんでした。砂盃プロも立って乗っていますよね。
砂盃 レジャーで乗るときはもちろん座りますが、速く走るのなら、当然、立って下半身をサスペンションのように使います。

WJS ボッティ選手は、スタンドアップでレースに出場していて、世界チャンピオンにもなっています。でも、乗り方はランナバウトに乗っているときと同じフォームです。砂盃プロも、SX-Rに乗っているときと同じフォームでランナバウトに乗りますね。
砂盃 当然です。フォームは、ランナバウトでも550(1人乗りのスタンドアップ)でも変わりません。ジェットが走る原理が、「スコープゲートに水を吸わせて前に進む」というのである以上、ライダーがマシンを操作して、その姿勢を常に作り続ける必要があるからです。ボッティ選手のライディングの評価の高さも、その部分でしょう。

WJS 世界戦を戦うランナバウトは、推定600馬力を超えるモンスターパワーです。体を固定していないと、Gに耐え切れないのではないですか?
砂盃 どれだけパワーがあろうが、ジェットスキーに乗る姿勢は同じです。マシンを操らなければなりません。しがみついているだけでは、振り落とされはしませんが操れないです。

WJS 砂盃プロは、荒れた水面でのレースを得意としています。「水面が荒れたら、ノーマル艇でも勝てる」と言われるぐらい、他の選手と差が開きます。やはりそれも、ライディングフォームの影響もあるのですか?
砂盃 大ありです。波の中だと、パワーを上げても上に飛んでしまう。だから、自分で操作して、マシンを前に飛ばさなければならないですが、普通に走ると波がジャンプ台になって上に飛ぶんです。マシンの挙動を作れるライダーなら、「前に飛ぶ」いわゆる前方に進むようにできるので、速くゴールできます。大波の中では、「必要以上にマシンのノーズを上げなければならないとき」「逆に下げなければならないとき」「アクセルを握ってはいけないとき」と、あらゆる挙動をコントロールして乗る必要があります。行く場面と我慢する場面で、ライディングを適切に対処しなければ、速く走ることはできません。

WJS でも、レース中だと、大なり小なり波は立ちますよね。
砂盃 はい。大きな波だと大きな対処。小さな波だと小さな対処。同じミスをしても、結果の損害は大きい方が大。小さいほうがロスは少ないです。Gは下半身で受け止めながら、マシンの挙動をコントロールして走ります。

WJS ありがとうございました。今回のタイのワールドカップでは悔しい思いをされたと思いますが、実力というのは証明する機会が必ず来ると思います。世界中のトップライダーの誰に聞いても、砂盃プロは速いと言われます。でも、それが私の知っている「砂盃プロの速さ」まで達していない。「彼は上手い」とか「彼は強い」と言われている評価を、「彼はものすごく速い、ものすごく強い」と言われる時代がきたと思っています。今シーズンも、頑張ってください。
砂盃 ありがとうございます。もう一度、世界タイトルを獲れるように頑張ります。

2019年の国内戦・優勝戦績

開催日 大会名
4月6日、7日 JJSF 全日本選手権シリーズ 第1戦・優勝
6月8日 JJSF 全日本選手権シリーズ 第3戦・優勝
7月7日 JJSF 全日本選手権シリーズ 第6戦・優勝
9月14日、15日 JJSF 全日本選手権シリーズ 第7戦・優勝
5月19日 アクアバイク 第2戦・優勝
7月7日 アクアバイク 第4戦・優勝
9月15日 アクアバイク 第5戦・優勝

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