遥か昔、今よりも頻繁に乗らなかったころのことだ。ドライスーツ代をケチって買わず、天気予報の「明日の最高気温は▲×℃です」という情報を頼りに、ウェットスーツで仲間とジェットに乗りに行っていた。朝は寒くても、最高気温になれば……と、自分に言い聞かせながら。寒くても暑くても、ジェットに乗ってしまえば楽しいのだが、今、思い起せば寒かった記憶しか残っていない。
初めてドライスーツで乗ったときは、あまりの快適さに「何でもっと早く買わなかったんだろう」と、本気で後悔した。「私は寒いのが大嫌いだ」と自覚したのも、ドライスーツを買ってから。人間は、ないものねだりはしない。自分が所有しているもののなかで、快適さを見つけるものなのだ。
しかし、1度使ってしまったら、もう2度とウェットスーツには戻れない。「ウェットスーツでも、寒いけど楽しい」が、ドライスーツを知ってしまった今は、「冬のウェットスーツは、寒いだけの罰ゲーム」に変わってしまった。私の中で”楽しさ“が消えてしまったのだ。 ドライスーツは年々進化する。数年前とは、暖かさも段違いだ。もっと金銭的に余裕ができたら買おうと思っていたが、誘惑に目がくらみ、気が付いたら新しいドライスーツを衝動買いしていた。
これからの季節のマストアイテム「ドライスーツ」。私は、冬でもジェットに乗る。11月、12月は、1年で最も快適にジェットに乗れる季節でもある。水温は夏の温もりを残しているし、晴れた日中は、驚くほど気温も上がる。寒い日は、じっと家にいるのも選択のひとつかもしれないが、ドライスーツ1枚で世界が変わる。