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SEA-DOO RXP-Xの強さの秘密を検証する ジェットスキー(水上バイク)

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SEA-DOO RXP-Xの強さとは

SEA-DOO RXP-Xは、2011年のワールドファイナルで勝利して以来、現在まで、国際大会で勝ち続けている。日々進化するレース業界で、実に8年間、1度も負けていないのだ。 今回、そのRXP-Xの強さの秘密を検証する。

この写真は、2012年の発売当時のメーカー画像。コーナリング性能を、強烈にアピールしている。



画期的な「T3ハル」

RXP-Xの特徴は、世界最高峰のコーナリング性能を誇る「T3ハル」にある。「T3ハル」は、他の機種と比べて、どこが優れ、何がそこまで違うのだろうか?

2012年のデビュー以来、レースシーンにおいて、この形状を超えるアンダーハルは、開発されていない。


「T3ハル(図上)」と、RXT-X300で採用されている「S3ハル(図下)」

船体形状の違い。「RXP-X」の最大の特徴は、下ハルの全てが丸みを帯びていること。下図「RXT-X」のような形状だと、バンクさせたとき丸印の部分が、キールラインになりコーナリングのきっかけとなる。

上の図のように、T3ハルはキールラインが丸く、エッジが立っていない。これがコーナリングの秘密

今までのランナバウトの下ハルは、RXT-Xのように「V字」のキールラインを、コーナリングのきっかけにしていた。しかし、T3ハルはキールラインが丸く、エッジが立っていない。この丸さが「スゴさ」の理由なのだ。

従来のエッジの立った、「V字」のキールラインは、どベタの水面では素晴らしいコーナリング性能を果たしてくれる。しかし、ラフウォーターになると、無秩序な波に引っかかって、コントロール機能を失う。RXP-Xのように、丸太のようにキールラインが丸いと、波の影響を受けにくい。

船体を10等分したときの「前から7番目」の断面図。壁と接している断面を見れば一目瞭然。尖ったところがない。

逆転の発想。画期的な「丸い」形状

コーナリングのきっかけを作るため、従来のジェットスキーのキールラインは尖っていた。しかし、このRXP-XのT3ハルは、上の図のように、どこもかしこも全て丸い。これが、画期的な出来事なのだ。例えるなら、水面に映った月を、真上から垂直に叩き切ろうとした場合、日本刀のような鋭角なものだと、少しでも入射角がズレたら、真っ直ぐに切れず、よじれてしまう。しかし、野球のバットのような丸い形状なら、真っ直ぐに、月を叩き割ることができる。

ジェットの歴史のなかで、これほど丸いハルは過去にない。理屈では、ラフウォーターに強いと分かっていても、「四角く尖っているもの」を「丸く」することは、簡単にできることではなかった。

ハル全体が丸くなると、ラフウォーターでのコーナリング性能は上がるが、マシンが浮き上がりにくくなり、水の抵抗が増えると考えられていたからだ。

しかし、その定説を覆して、「T3ハル」はキチンと浮き上がる。結果、最高速を落とすことなく、コーナリング性能も良い。両方の良い部分を手に入れたのだ。

上の図を見れば分かる通り、T3ハルのすごさは、コーナリングで接する部分は丸く、直線走行で接する部分は「最高速仕様の形状」に仕上げてあることだ。ものすごく割り切っている。これが、現在も世界最高のレーシングハルと言われるゆえんである。

RXP-X 300とRXT-X 300の、最高速度時の水に接している部分のイラスト化

2年前(2016年モデル)に、両艇の最高速を計測したことがあるが、数値は同じであった。これは、「水に接している形状は違うが、接している面積は同じ」という証拠である。この「水に接している形状の違い」が、乗り味に大きく影響する。

最高時速における「予想接水面形状」

同じ馬力で同じ速度=水面抵抗が同じ。ハル形状は違っても、接水面積は同じということ。色が付いている部分の面積は同じ。

図上のT3ハルが接水している部分の形状は、「底辺が短く、高さがある二等辺三角形」である。例えるなら「2輪バイク」だ。モトクロスバイクのように、オフロードでも、アスファルトでも威力を発揮する。

図下のS3ハルは、「底辺が長く、高さがない二等辺三角形」だ。例えるなら「3輪車」である。荷物を多く積んでも、快適な走行が可能。両者を比較すると、T3ハルよりもS3ハルのほうが安定性があると推測できる。




番外編 レーシングマシン試乗記

このマシンは、推定600馬力の「RXP-X ターボチャージャー」です

マリンメカニック製オールカーボンボディに、推定600馬力の「RXP-X ターボチャージャー」を装着したモデルである。今回、このモンスターマシンに、試乗させていただけることになった。

このマシンは、中野崇寛プロ(NSP Racing)の新しいレース艇である。



機能美。余分なものは、何ひとつない。

インタークーラーは水が入ると、かなりの重量になる。マシン全体の重量バランスを考えて、フロントハッチの中に設置されている。

ほぼノーマルエンジンにも関わらず、600馬力のパワーをたたき出す。


ボルクワーナー製ターボを使用。マリンメカニックにより、水冷ターボチャージャーにカスタマイズされている。

編集部A「何か、注意することはありますか?」。中野プロ「パワーに注意してくださいね」。私は、過去に何度かマリンメカニック製のレースマシンに乗せていただいたことがある。トータルの感想は、「どのマシンも非常に乗りやすい」だった。 だから、中野プロに「パワーに注意して」と言われても、あまり気にしなかった。 ところが……。

過去に経験したことがないパワーを感じた。下からのトルクがすごい。マシンが小さく、軽く感じる。 コースを1周走るだけなら自分史上ベストタイムが出せるかも……。

しかし、体力が持たない。本当にモンスターマシンだ。

やっぱりプロってハンパない。これで12周走るなんて……。

RXP-Xなのに、コーナーでマシンをバンクさせないって!?

中野プロから、面白いライディング理論を聞いた。「コーナーでマシンをバンクさせない」と言うのだ。RXP-Xが「世界最強のコーナリングマシン」と言われるゆえんは、船体を倒せるからなのに!?

曲がるときに船体をバンクさせることで、ビギナーでも「G」を受け止められる。だから、世界チャンピオンのようなコーナリングが、誰でもできると言われている。

中野プロ曰く「こんなにハイパワーなマシンでバンクさせれば、水にめり込んでいく」と言う。巨大な「G」がかかるので、当然の話だ。それが、タイムロスになるという。確かに、話を聞けば理解はできるが、このモンスターマシンをバンクさせずに曲がるのは、体力的にとても辛い。

しかし、中野プロのライディングを見ると、傾けないで曲がっているのがよく分かる。不謹慎にも、面白いと思ってしまった。バンクさせられることが、RXP-Xの強さの秘訣だったはずなのに……。


マシンを傾けないで高速で曲がる、中野プロのライディングフォーム。

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