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2020年のフリースタイルボート「Wabuzun ZR UFO(ワブズン・ゼットアール・ユーフォー)」誕生 ジェットスキー(水上バイク)

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2020年ニューモデル「Wabuzun ZR UFO(ワブズン・ゼットアール・ユーフォー)」

マシンコンストラクター・渡部文一氏インタビュー

昨年12月、タイ国パタヤで行われた「ジェットスキーワールドカップ」で、BUN FREESTYLE所属の山本汰司選手が世界チャンピオンを獲得しました。彼が乗っていたのが、世界的なフリースタイル艇メーカー「BUN FREESTYLE」のマシン「Wabuzun Z UFO(ワブズン・ゼット・ユーフォー、以下 “Z UFO”)」です。
そして今年、BUN FREESTYLEより新しいフリースタイルマシン「Wabuzun ZR UFO(ワブズン・ゼットアール・ユーフォー、以下 “ZR”)」が発表されました。
昨年モデルよりもさらに進化した「ZR」とは、どのような機種なのか。製作者である渡部文一氏(BUN FREESTYLE代表)に話を聞きました。


渡部文一氏が語る「Wabuzun ZR UFO」が造る新しいフリースタイルの世界

より進化したマシンを「完成させたい」「先に行きたい」「やってみたい」という気持ちで開発しています

WJS このマシンが2020年のBUN FREESTYLEのニューモデルですか?
渡部 はい。「Wabuzun ZR UFO(ワブズン・ゼットアール・ユーフォー)」です。

WJS 昨年は、「Wabuzun Z UFO(ワブズン・ゼット・ユーフォー)」を発表し、そのマシンで山本汰司選手が世界チャンピオンを獲得しました。世界ナンバーワンのフリースタイルマシンだと証明したのですから、これで十分だとは考えないのですか?
渡部 私は、お客様に販売をするという目的だけでマシンを造っているわけではありません。自分が、より進化したマシンを「完成させたい」「先に行きたい」「やってみたい」という気持ちで開発しています。
「新しいモデルができた」ということは、次の新しい課題が見えたということでもあります。だから、立ち止まることは全く考えていません。常に先だけを見ています。私自身が「マシンを、より進化させる」ということが習慣になっています。

WJS 昨年、世界チャンピオンを獲得したZ UFOは、「世界ナンバーワンクオリティ」と、誰もが認めるところです。でも、こういっては失礼かもしれませんが、そのマシンのポテンシャルを全て引き出せている選手がいるのか? という面から考えると、いかがなのですか?
渡部 確かに今のフリースタイルは、マシンのほうが先行していると思います。だからといって、それと「開発を止める」ことは、全く別です。極端な話、BUN FREESTYLEのマシンを、全ての人に褒めてもらおうとは思っていません。自分で自分の造ったマシンを褒めたいのです。


「ボートを開発する」という発想ではなく、「もっと良くしたい」と思うから、どこに行っても新しいモノを探しています

WJS 毎年、新しいフリースタイルマシンを開発し、最先端を走っている渡部氏が、マシンを造るうえで参考にしているものは何ですか?
渡部 そうですね。「新しいものを見つけたい」というアンテナを立てて、毎日探しています。PWC(ジェットスキー)ばかり見ていても、新しいアイデアは浮かびません。それとは全く違う、例えば「素敵な服」や「食事」などが私に影響を与えてくれます。
クルマやバイクは同じモータースポーツなので、それほど斬新な考えには至らない。むしろ、アパレル業界や飲食業界、建築業界のように、我々と全く違う業界の中に、長年培ってきた「ココ」っていうポイントがあるんです。
モノを作るという行為自体は、私たちと同じじゃないですか。アパレル業界がもがき苦しんで、「素敵で快適に過ごせる服」を作り上げるという過程の中に、私のマシンをブラッシュアップするためのヒントやアイデアを見つけることができるのです。

WJS 自動車やバイク、新幹線、飛行機など、飛んだり動いたりするものに関しては考えつくしてきたので、全く違うジャンルからアイデアを吸収しているということですね?
渡部 はい。単純に「ボートを開発する」という発想ではなく、「もっと良くしたい」と思うから、どこに行っても、どんなものからでも新しいモノを探しています。そうしていると、必ず新しい発見があるんです。新たな発見があるからこそ、「新しいマシン」を造りたい。

WJS 具体的に、昨年のチャンピオン艇「Wabuzun Z UFO」と、新たに開発された「Wabuzun ZR UFO」の違いは何ですか?
渡部 ひと言でいうと、「水と接する部分のマッチングとバランス」です。私は、今までの「定説」や「常識」と言われていることを信じていません。「それは良くない」といわれることでも、実際にテストしてみなければ気がすまない。
今まで、ずい分無駄なテストもしてきましたが、それと同じぐらい、世間で言われていることと、実際にやってみたことが違ったという体験をしてきています。そういう新たな事実の積み重ねが、より良いマシン造りに必要不可欠です。これは、マシン開発だけでなく、事業の成功でも何でも、サクセスストーリーの本の中には必ず入ることなんです。マシン開発とは何か? ビジネスとは何か? 生きていくとはどういうことか? と同じようなことだと思います。私のマシンは、あくまでも「私が乗って良いマシン」です。

WJS 「誰が乗っても良いマシン」を造るのではないのですか?
渡部 それは理想のように聞こえますが、実は違います。「私が乗って良いマシン」が答えです。理由は自信が持てるから。究極を言うなら、「良いマシン」とはオーダーメイドでしょう。体重も身長も、皆、違います。各人に合わせたマシンが良いのでしょうが……。
私以外の人の感想は、私には分かりません。自分が乗って素晴らしいと感じるモノが、最も良いマシンだと思っています。

WJS 質問を戻しますが、以前のZ UFOより、ZRのほうが勝っていることは何ですか?
渡部 新しくなったことです。過去のモデルで、自分が気に入らなかった部分を修正してできたのが新しいモデルだからです。着水時の安定性を上げたり、引き波が飛びやすくなっています。そのおかげで、走行特性が全く変わりました。

WJS ちなみに、Z UFOはどこが気に入らなかったのですか?
渡部 「バランス」「浮力」「引き波を作ったときのノーズとのマッチング」。どういうことかというと、ウチのチームの(山本)汰司もそうなんですけど、フリースタイラーのなかには、自分で引き波を作って、その引き波に合わせて乗るのが下手な選手が多い。それなら、「引き波に合わせやすいマシン」を造ってあげようという意図から始まりました。
もともと「引き波に合わせる」のが上手いライダーは、ZRに乗ることで、引き波に合わせるのがさらに簡単になる。全てのフリースタイラーにとって良いことばかり。そう考えたので、これは進むべき道、やるべき改良と決めて開発を進めました。

WJS 選手の苦手な部分を、マシンで克服させてあげるのですね?
渡部 はい。もうひとつの大きな改良が、「マシンの進化が早すぎて、みんなが振り回されている」ことです。誤解のないように、「振り回されている」というのは、文字通り「マシンの回転力が強すぎて、着地のときにフラついている」ということです。着地で転ぶ選手が多いでしょう。だから転ばないようにしてあげようと考えました。
でも、少し前だったら違います。例えば、ダブルバックフリップをするために、回転力を重要視してきた。そのおかげで2回転が可能になりました。その弊害が、回転力のせいで着水時にフラついてコケることだったのです。


過去には大まかな形状ですら見せたくないという時期もありました。でも今は問題ありません

WJS 具体的に、どのように変わったのですか?
渡部 ZRは、着水時にZ UFOほど沈みません。常にもっと浮いている。だから水離れが早い。水と船体が接しているバランスが、非常に良くなりました。例えば、着水時でも走行時でも、沈み気味だと、もっさりと重たい感じがするんです。でもZRはキレが全然違うように見えますよ。

WJS 飛んで着水して、次に飛ぶときに深く沈むと「よっこらしょ」という感じになりますが、ZRのように船体が浮き気味だとスパッスパッと動く。それがキレの良い演技に見える要因ですか?
渡部 はい。先ほども言いましたが、その最大の理由が「水とマシンの接している部分のマッチングとバランス」です。新しいマシンを作る。どうも着水時にバランスを崩す選手が多い。
では次の開発で改善し、やさしく着水できるようにしてあげようとなる。この選手は、引き波に合わせるのが下手だな。では優しく引き波を使えるように改善してあげようという具合に改良していくなかで、マシンが良い意味で浮き気味に変わり、乗り味も見た目も変わりました。

WJS 新しいマシンができたので、変わったわけですね。
渡部 ずっと、「ダブル、ダブル」ってやってきて、回転力に関しては良くなったからこその着水時のバランスであり、引き波のやさしさなんです。目標のひとつをクリアしたからこその、次のステージなんです。

WJS 先ほどから聞いていると、Z UFOに対して、非常に辛口なコメントが多いですよね。
渡部 どうしても、新しいZRの動きが頭に焼き付いているから比べてしまうんです。「ああーっ」てなっちゃうんですよ。

WJS 先ほどZRの撮影しているとき、撮ってはいけない部分はない。全部好きに写してかまわないとおっしゃいましたが、他のマシンビルダーに知られても大丈夫なのですか?
渡部 はい。「世界との戦い」という部分において、過去には大まかな形状ですら見せたくないという時期もありました。でも今は、分かりにくい変更も、大きな違いに変わるというふうに変化してきたので問題ありません。成熟度が上がったのかもしれませんね。


新しいモデルが出来上がって走らせた瞬間に「次はこうしなければ!」みたいなビジョンは見えています

WJS 渡部さんの話を伺っていると、選手の問題解決の答えをマシン開発に取り入れている。むしろそれが、ニューモデルの革新的改良部分の要諦になっているような気がします。ダブルバックフリップをしたいのなら、回転力とパワーを上げて、それができるマシンにする。そのせいでフラつくようなら、着水時に安定するマシンという感じですね。
渡部 マシンを手に入れたら、ライダーは1年間でマシンに追いつく必要があります。早く乗って、早く追いつく。そのサイクルが、世界タイトルに繋がると思います。

WJS 大変な話ですね。本気でないと世界チャンピオンにはなれないことが良く分かります。渡部さんも、毎年、新しいモデルを開発し続けるのは、ものすごく大変だと思います。
渡部 そうですね。資金も掛かりますし、そういう意味では大変です。でも、新しいモデルが出来上がって走らせた瞬間に「次はこうしなければ!」みたいなビジョンは見えています。そうやっていかないと、世界は獲れませんから。

WJS 何年もの間、そういった開発サイクルで過ごされていると思いますが、飽きることはないのですか?
渡部 飽きないですね。

WJS 今後、フリースタイル艇はどう変わっていくのでしょうか?
渡部 開発というと、将来的にウチのマシンは、今のPWC(ジェットスキー)とは全く違う形になるかもしれませんね。

WJS どういうことですか? 形が変わるのですか?
渡部 現代のフリースタイルマシンというのは、「飛ぶ」ためにある。だけど、現在のフリースタイル艇のベースとなっているのは、ヤマハのスーパージェットです。スーパージェットは飛ぶためではなく、「走るため」のマシンです。
今すぐに「全く違う形」というのは冒険なんで、少しずつ改良してきましたが、フリースタイルマシンを突き詰めていくと、いつか全く違う形になっていると思います。

2020年のフリースタイルボート「Wabuzun ZR UFO(ワブズン・ゼットアール・ユーフォー)」の写真は、こちらの『ギャラリー』へ(写真7枚)


 

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