
自分が買った「最愛の1台のクルマ」を大切に維持する。これを実現させる最大の困難は、「税金」であると私は考えている。
世界中で「モノを大切にすることは良いこと」「サスティナブルな社会」「環境に優しい」という考え方が称賛される中で、日本だけが“違う考え”を持っているとは思っていない。 しかしながら、ことクルマに関しては、実際に行われている政策や制度に首を傾げざるを得ない。
ドイツには、古いクルマを優遇する「Hナンバー制度」というものがある。旧車を守る文化として、一定の条件を満たしたクルマにはナンバープレートの最後に「H」が付く。
ドイツ語で「歴史的な」という意味の「historisch」の頭文字を取って「Hナンバー」と呼ばれ、さまざまな優遇措置を得られるという。
「車両が製造されて30年以上経っている」、「オリジナルの状態が保たれている」、「無理なく走れる」といったいくつかの条件はあるが、このナンバーが付与されると、自動車税や自動車保険が優遇される。
Hナンバーを取得すれば、車税が優遇されるうえに、有害ガス排気量の多さで走行が制限される「環境ゾーン」の走行も免除される。
古いクルマほど税金が重くなる日本とは真逆の考え方だ。
現在、新車を購入する際に利用できる補助金には、主に「国のCEV補助金」と「各地方自治体が支給している補助金」の2種類がある。これらはともに、「環境性能に優れた車」の普及に向けて整えられている。
CEV(クリーンエネルギー自動車)補助金では、条件を満たせば、電気自動車(EV)には上限85万円、プラグインハイブリッド自動車(PHV)には上限55万円、燃料電池自動車(FCV)には上限255万円が補助される。
EVが最良なのか、ハイブリッドカーはどうなるのか、古いクルマは悪なのか? その答えはまだ出ていないのに、補助金だけは無秩序に支給されている。
人類にとって何が最良なのか明確な答えを出してから、その考え方に基づいた政策をしてほしいものである。
クルマの所有者にとって、税負担が少ないほうがいいに決まっている。
目指すべきは、適正かつ公平な課税だ。
「税金を安くする」ことだけが目的ではなく、世界的な基準値になるような税負担の見直しを望みたい。
日本のクルマに関連する税金は、世界的にも突出して高額だと言われている。それも「取得時」、「保有時」、「使用(走行)時」と、さまざまなシーンで、複雑かつ過重にかかる。
欧米では、日本のように自家用車に自動車重量税のような税金を課している国はない。
日本は「場当たり的な税制改正」で、クルマの税金が決められてきた。
「道路を作る」という名目で、自動車オーナーに建設財源の一部を負担させる「自動車取得税」「自動車重量税」と「揮発油税(いわゆるガソリン税)」だが、日本中の道路の整備が進み、平成19年には道路建設費が黒字になったにも関わらず、相変わらず徴収され続けている。
日本の自動車ユーザーは、世界的に最も“高額な税金”を支払わされているのだ。
クルマには、「文化」がある。
お金がないから買い替えないのではなく、自分のクルマを愛し、大切に乗っているから買い替えないという人も多い。
今、日本の税制では、13年以上経過したクルマは税率が上がり、18年を経過するともっと重税になる。これでは、「名車」と呼ばれる“古いクルマ”「クルマ文化」を自ら手放せと国から言われているようなものだ。
愛着もあるし、普通に走る。廃車にも売却もしたくない。令和3年の乗用車の平均使用年数は「13.87年」で、国民の“ほとんど”が「13年以上」乗っている計算になる。
メンテナンスしながら、1台を長く乗っているほうが、次々と新しいクルマを作って資源を使いまくるよりも「エコ」ではないのだろうか。
日本が世界に誇る「もったいない」の心には、「環境の3R(Reduce・Reuse・Recycle)」はもちろん、モノに感謝し大切にする尊敬の気持ち、「リスペクト(Respect)」も含んでいる。
何十年経っても、色あせないクルマというのは存在する。いつかは手に入れたいと思っている往年の名車もある。それなのに、今の税制のままだと乗り続けることをためらう。
このような理由も含め、さまざまな要因から、日本のメーカーが作った「名車」の大半が、海外に流失しているのも事実だ。
古い「名車」をずっと乗り続けることが、日本において最も税負担率が高く、費用対効果が悪い。
ちなみに、本誌は水上バイクの専門誌だが、水上バイク自体に税金はかからない。
そのため、30年以上前の水上バイクを大切に乗っている人が、日本中に数多くいる。
レースでも「ヴィンテージクラス」と呼ばれる「カワサキ JS550」を使ったクラスが一番盛り上がっている。
SDGsを推奨するはずの現代において、モノを大切にする行為に対する罰則規定のような税制に疑問を感じざる得ない。
いつも書いているが、このような自動車ユーザーの不利になる税制に、日本の自動車メーカーが文句を言わない理由が分からない。こういう記事を作ると決まってコメントで、「消費税の還付金をメーカーが貰っているから」と書かれる。
ほかにも、「古いクルマの税率が上がると、新車のハイブリッド車が売れて買い替えが促進されるので、大手自動車メーカーが潤う」と書き込まれる。
多くのコメントで書かれることだが、現在の税制のままでは、若者のクルマ離れはますます深刻化する。結果的に国内の販売が落ち込み、自動車メーカーが自らの首を絞めることになるのではないだろうか。
大手の自動車メーカーは、政治に対しても強い影響力を持つはずだ。日本の自動車ユーザーを苦しめるような制度を変更する働きかけをしてほしい。
私の友人は、30年以上前に発売された古いクルマを大切に乗り続け、カーライフを楽しんでいる。
彼は、普段は仕事に使う軽自動車に乗っているが、休日はお気に入りの旧車で近場へのドライブを楽しんでいる。私の顔を見るたびに「年間走行距離が100キロにも満たないこのクルマに、こんな高額な税が課せられる。ワケが分からない」と嘆いている。
自動車税は13年経過すると約15%アップする。
自動車重量税は、13年経つと約39%、18年経つと約53%上昇する仕組みなので、彼の重量税は約53%もアップしている。
自動車税と自動車重量税の2つの税金が、重くのしかかっている。
これでは、「古い日本車の文化」なんて育つわけがない。
高市早苗総理のクルマ好きは有名だ。若い頃の愛車は1991年式の「トヨタ・スープラ(A70型)」で、22年間にわたって乗り続けたというエピソードがあるくらいだから、もう少し旧車に対して柔軟な考え方を持ってもらえると嬉しいものだ。
クルマを維持するために、日本独自のさまざまな“負担”をユーザーに強いている。そろそろ真剣に検討すべきではないだろうか。

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