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「2021年の世界戦略艇は、どこまでポテンシャルが上がるか。マシン造りは始まっている」 コンストラクター・今﨑真幸氏が語るレースへの想い トップレーサーの熱い冬! ジェットスキー(水上バイク) 

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世界と戦うトップチームの現在

ワールドチャンピオンを目指すチームは、常に上を向き続けている

2020年は、新型コロナに翻弄された1年だった。ジェットスポーツ界も予定されていたレースが軒並み中止か延期となり、ライダーやコンストラクターも、モチベーションを保つのが大変だったことだろう。しかし、世界を狙うチームに休息はなかったようだ。

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茨木県の霞ヶ浦では、来年行われる予定の国際大会に向けて、コンストラクター・今﨑真幸氏を始め、ライダーの砂盃 肇プロなどチーム「マリンメカニック」が集合し、マシンのセッティングが行われた。
今回、世界チャンピオンマシンを生み出した世界的コンストラクター・今﨑真幸氏に、今年のこと、そして未来について語ってもらった。


2021年モデルSEA-DOO RXP-X 300。これをベースに、新しいマシンを造っていく。

世界的マシンコンストラクター・今﨑真幸氏が造り出す新しいマシン

「GAKO 3(ガーコスリー)」に次ぐ、2021年用のマシン製作に取り掛かるところです

WJS 今、2021年モデルのシードゥRXP-Xをベースにレース艇を造っているそうですが、もうバラバラになっているのですか?
今﨑 もうバラバラです。でも、今忙しくて、年明けくらいから着工の予定です。

WJS 船体形状は、マリンメカニックオリジナルの形にするのですか?
今﨑 一応、ハルは2種類作ろうと思って。GPクラス用のちょっと形状が変わってもいいやつと、オープンクラスで使うストックに近い軽量ハル。GPのほうは、アッパーデッキも形をちょっと変えて、ヤマハのエンジンが入るように考えています。

WJS わざわざ純正ハルと同じ形で、軽量ハルを造るのですか? オリジナルの形だけを作るわけではないのですね。
今﨑 メーカーの造るハルは、何度もテストを繰り返しているので、完成度は凄く高い。悪いところが見当たらないんです。だから、最初にノーマルと全く同じ形状のハルを作ります。それを走らせてバランスをみたり、ウェイトを積んでエンジンの位置を変えたりして、不満があれば変えていくといったようなことをします。
現在、「GAKO 3(ガーコスリー、今年の国内戦で使われた砂盃マシン)」っていう素材があるけど、それを超えなきゃいけないわけですよ。俺の判断じゃなく、砂盃さんとか他のライダーにそれを乗り比べてもらって、「じゃあ、どうする」って、来年の年末までに決めていく感じですね。

WJS ノーマルと同じ形状でテストをして、不具合があったら調整していくわけですか?
今﨑 そうそう。多分、軽量ハルをサンダーで削ったりして「形状を変えよう」って。でも、限界があるじゃないですか。軽量ハルって薄いんで。それをメイキングして、「もう少しこうしよう」っていう形状ができてきたら、型をまた改めて作る。

WJS 何度も手間をかけて造るのですね?
今﨑 すごい大変。

WJS ちなみに、ガーコ3の場合、何回くらいハルを造り換えているのですか?
今﨑 あれは2個目。

WJS 2回、形を変えているということですか?
今﨑 いや、重さを変えてる。

WJS 形を作って終わりっていうわけではないんですね。
今﨑 そうですね。

WJS 軽量ハルにすると、どれくらい軽くなるのですか?
今﨑 新しいRXP-Xのノーマルハルは、もともとちょっと軽い。2人でクイッと上がるくらいなんで、多分、140kgはないと思う。140 kgないものに対して、「どうする?」みたいな感じ。軽量ハルは、80kg後半~90kgくらいですね。

WJS それだけ軽くなれば、乗り味が全く変わりそうですね。
今﨑 全く変わる。それで良くなる場合と、悪くなる場合があるんで、それは見極めていかなきゃいけない。シードゥの純正ハルにヤマハのエンジンを載せる場合、素材がエポキシ系なんで、マウントがボンディングできない。くっつけられないんですよね。なんで、ウチではファイバーでこしらえて、メイキングしやすいように素材を作ってやっています。

WJS エンジンを載せる位置もすごく大切ですよね。
今﨑 新しいRXP-Xは、従来よりも少しライダーの位置が前になっている。アッパーデッキが変わるっていうことは、人間のポジションも違う。なので、それに合わせるような感じを考えてます。

「GAKO 3(ガーコスリー)」。コロナ禍でなければ、海外レースで活躍する姿が見られたはずだ。


新しく造る船体は、レース一発目から優勝したい

WJS 今年の国内戦を見ていると、「ガーコ3」はものすごく速くて、完成形のように思えますが?
今﨑 そうですか? まだ、ガーコ3は海外のレースで結果が出てないですからね。結果を出していないのに新型ハルに移るわけですから、ある意味、もったいない。もうひとつ考えているのは、ガーコ3の型が残っているんで、乗り比べて「やっぱりガーコ3のほうがいいね」ってなれば、それをくっつけられるような方法も考えています。

WJS ガーコ3のハルは、わざわざ船体を長くして、安定をよくしているので、新しい純正ハルよりも良さそうなイメージがありますが?
今﨑 でも、フロント側のボリュームは、純正のほうがある。で、ガーコ3って割とスリムじゃないですか。結構、操安で変わってくる。さらに新型RXP-Xだと、人間のポジションが前に行くのに対してフロントがシェイプだと、多分、ノーズが食いすぎたりとか、バランス的に崩れるんじゃないかなっていう懸念はあります。やってみないと分からない。全く読めない。

WJS それも楽しみですね。ハルの方向性は春先くらいには分かるのですか?
今﨑 いや、全日本では9月くらいのデビューで考えています。

WJS 国内の最終戦までに、完成形を作ればいいということですか?
今﨑 そうそう。レース一発目から優勝したい。2位とか3位くらいだったら、逆に走らせない。明らかに、今を超えるような素材であれば走らせますよ。オープンクラスは分からないけど、GPクラスのマシンは、多分、完成しないうちはレース会場には持って行かないでしょう。

WJS マシンを造るのは、果てしない作業ですね。
今﨑 多分、終わらないと思う。一生、完成形ってないよね。どこが完成で、どこが完成じゃないのか分かんない。結果が出れば、それが完成形なのかもしれないけど、またさらにいろんなやつが出てくるじゃないですか。

ガーコ3の走行テストをする砂盃 肇プロ。


今、一番大事にしていることは「完走」。国際大会では1ヒートも落とせない

WJS 昔の今﨑さんのマシンのイメージは「ホールショット」でした。
今﨑 ああ、そうですね。今でもそうですよ。

WJS でも、今は操安も大事にしてますよね。
今﨑 操安もそうだけど、やっぱりホールショットを常に考えてる。圧倒的にホールショット。

WJS 変な話ですが、仮に平水面で砂盃プロと同じマシンに乗せてもらい、よーいドンをしたら速さは同じだと思うのですが、でも、ホールショット争いで勝つのは砂盃プロですよね。それは、ライディングテクニックの差ですか?
今﨑 そりゃそうですよ。

WJS レースは、ライダーの技術とマシンが噛み合って初めて勝てると思うのですが、コンストラクターとしては、プラスでマシンのアドバンテージを付けてあげたいということですか?
今﨑 そうですね。

WJS 今、レースで一番大事にしているものは何ですか?
今﨑 「完走」。順位よりも完走。とりあえずタイのジェットスキーワールドカップは、1ヒートでも落としたら終わりなんで。今は、完走が重要だよね。完走っていうか、トラブらないこと。

WJS それが、ものすごく難しいことなんですね?
今﨑 難しい。そこしか考えてない、今。

WJS 問題は、エンジンの耐久性ですか?
今﨑 そうですね。電気系とかいろいろね。リークとか、電気系のトラブルは多かったよね。レースにならないと、そういうトラブルが出ないんですよ。練習では出ない。

WJS 今の話を伺っていると、次回のジェットスキーワールドカップは、いきなりフルブーストで来ないと思います。圧倒的なホールトゥフィニッシュで勝つというのは、なかなか難しいですよね。
今﨑 マシンが速ければレースに勝つわけじゃない。乗りやすさも大事。

WJS タイのレースはサバイバルレースで、壊れて当たり前のようなギリギリの仕様で走っているイメージです。
今﨑 昔はね。今はそんなことないんじゃない? まわりも止まらなくなってきた。皆、止まったら終わりだと思っているから。

WJS マシンは、500馬力は超えているんですよね?
今﨑 余裕で。

WJS 1800ccで500馬力超えること自体、ものすごくエンジンに負担がかかりそうですね。
今﨑 いいや、そんなことはないですよ。使っている燃料も違うし。


ホールショットはもちろん大事だが「今は完走」することを重要視している。国際大会では、1ヒートでも落とせば致命傷となる。


マリンメカニックってレース色が強いように思われがちですが、レジャーユーザーがメインです

WJS 今回のコロナ禍がなければ、今年は、トリプルクラウンから始まって、国際レースはほとんど出るつもりだったと聞いています。
今﨑 今年はね。ヨーロッパとかも行こうかって。

WJS 軒並み国際レースが中止になり、モチベーションが下がることはなかったのですか?
今﨑 いや、ちょっと安心してます。日本のレースがあって、トリプルクラウンがあって、ジェットスキーワールドカップもって、結構キツイですよね。

WJS 今﨑さんは、「マリンメカニック」というマリーナの社長さんでもあるので、レースばかりというわけにもいかないですよね?
今﨑 ウチの会社ってレース色が強いですけども、レジャーユーザーさんがメインなんです。

WJS 「マリンメカニック」という会社にとって、「レース」がメインではないのですね?
今﨑 一部です。ウチはチームっていうよりも、ウチで買ってくれたマシンをメンテナンスするって感じ。よそのチームでも見ます。

WJS マリーナでゲレンデを持っていて、レースもやっているというと、一般ユーザーからすれば、とても信頼できるお店ですよね。
今﨑 俺はね、マリンの商売やってて、試運転もせずに納品っていうのは考えてない。だから、試運転もしないでお客さんに渡すような店と一緒にされても困っちゃう。昨日だって、雪の中で試運転してますからね、レジャーさんの船ね。それは、ちゃんとやってます。

WJS お客さんにアピールするのは技術力ですね。
今﨑 そうですね、それも含めたサービスね。

WJS マリンメカニックのレジャーのお客さんは、今﨑さんがレースの世界で名のあるコンストラクターというのはご存じなのですか?
今﨑 普段、レジャーのお客さんを相手していて、俺は、レースの色っていうのを一切出していない。聞かれない限りは、レースの話も一切しないから。

砂盃プロの走ったデータを、すぐにパソコンで検証する。写真左:三上定裕プロ、中央:今﨑氏、右:砂盃プロ。


足まわりやエンジンの味付けを、的確にチューナーに伝えられるドライバーでないとレースも勝てない

WJS 昔から、ジェット以外でもレースはやられていたのですか?
今﨑 はい。乗るのも、エンジンを触るのも、両方好きです。今はもう自分が乗る方は引退しているけどね。引退して、コンストラクターをやっているっていうだけ。もともとレースが好きで、自分が乗って、チューニングしてっていうのが始まりなんで。

WJS 今はコンストラクターとして面白いですか?
今﨑 面白いですね。負けたら面白くないですけど。

WJS これまでにも、いろいろなレーサーを見ていると思いますが、マシンの開発に向いているライダーっていうのはどういう人ですか?
今﨑 ライディングテクニックももちろんですけど、的確に船の不具合だったり、足まわりだったりを、トータルで判断できる人。クルマでもそうですけど、プロのドライバーって、足まわりやエンジンの味付けなんかを、的確にチューナーに伝えられる。そういうドライバーじゃないとレースも勝てないし、チームも上手くいかない。乗るだけじゃダメです。

WJS そういった意味では、砂盃プロはそういう能力に長けているわけですね?
今﨑 はい、もちろん。昔、クルマのレースをやってるころ、HKSとか知ってて、ドライバーとかも知ってたんですよ。彼らは、インプレッションとか、めっちゃ、うるさいです。タイヤひとつ、空気圧ひとつにしても、「ちょっと変えろ」みたいな指令を出して、タイムを見て、みたいなね。クルマのレースはありますよ。

WJS ジェットの場合、そこまでうるさく言うライダーはいないのですか?
今﨑 コンストラクターに対して「こうしてください」「こうしたほうがいいですよ」っていうライダーがあまりいない。

WJS 砂盃プロは違うのですか?
今﨑 違うね。「こうしてほしい」「こうしたほうが速くなる」みたいなことは言われますね。それは、自信がないと言えないと思う。俺は、ドライバーじゃないですからね。

WJS 砂盃プロから、「今﨑さんはハルを造るのもエンジンも、全部1人でやるのがすごい」と、いつも聞きます。マシンの修理、メンテナンス、開発・製作と、全部1人でやっていますよね。普通は、船体ならハル屋、ターボならターボ屋と、専門の人がやると思うのですが?
今﨑 でも、俺一人でやってるわけじゃないですから。ウチの社員もやってくれている。ただ、方向性を決めるとかいうのは俺がやらないとだから。

WJS 今﨑さんは、マシン造りで何が一番得意なんですか? 普通、ここまでのハイパワーマシンになったら、専門分野が決まってくるじゃないですか。
今﨑 多分、特化しているものは、ないんだと思う。とりあえず何でも触れるんで。

WJS コンピュータも触れて、エンジンも触れる。さらに船体も一から造れるわけですよね。エンジンもハルも両方分かっているわけだから、美味しいとこ取りができるということですか?
今﨑 まあそうですね。例えば、今、こういうマシンを造ったとしても、次の段階の仕様みたいなのは、常に考えてる。次はこうしようみたいなのを、常に2つくらいは考えています。

WJS マリンメカニック完全オリジナルのマシンを造りたいとは思わないのですか?
今﨑 全く思わないです。レギュレーションがある限りね。メーカーが絡んでるんで。

WJS マリンメカニックはシードゥ、ヤマハ、カワサキの3メーカーの正規代理店ですからね。
今﨑 例えば、ザパタ(フランキー・ザパタ、フランスの元ランナバウトクラス世界チャンピオン)でも何でも、オリジナルのランナバウトを造って成功した人っていないじゃないですか。だからそこは考えてないです。ダメですね、大変だし。

WJS だったら、ファクトリーの色を出してあげたほうがいいといいうことですか?
今﨑 そうですね。リメイクしてね。ウチはメーカーじゃない。チューニング屋なんで、このままでいいと思います。


毎年、新しいマシンを造り出し、世界を相手に戦っている。


マシン造りは『経験、数、独自』

WJS よく、他の人から「今﨑さんは、1500SX-Rを造っても、きっと1番速いのを造るよ」と聞くことがあります。
今﨑 そうですか? でも、やってないですからね。まあ、できないことはないです。多分、速くするのはそんなに時間がかからないと思う。

WJS 本格的に造り始めたら、ものすごく速いのができそうですよね?
今﨑 エンジンを造るのって経験値があるんで、何でもやればいいってもんじゃないからね。

WJS 技術だけじゃなくて、知識もありますよね。どうやって勉強したのですか?
今﨑 経験、数、独自。もともとはエンジンの電装屋とかで働いていて勉強して。あとは、趣味でクルマのレースをやってたし、チューニングも仕事としてやってたから。

WJS どんなエンジンでも自信があるんですね?
今﨑 あります。ロータリーでも何でも。

WJS ターボでもスーパーチャージャーでもNAでも、エンジンだったら本領発揮できるということですね。
今﨑 エンジンだったらね。

WJS それだけエンジンは奥が深いんですね?
今﨑 そうですね。藤江(功一)さんは、カワサキをよくやってますよね。外から見てて、頑張ってんなって思うのは彼くらい。


2021年モデルのRXP-Xがどこまで速くなるのか、まだまだやることはいろいろあります。


5年も経ったら、エンジンがなくなっているかもしれませんね

WJS 5年後、ジェットのレース艇は、どのくらい変わると思っていますか?
今﨑 5年後? エンジンないんじゃないですか、もう。

WJS 世の中がEV化しているということですか。
今﨑 ぶっちゃけ言うと、電気になったら俺は、レースから手を引こうかなって思ってる。

WJS EVはダメですか?
今﨑 だって、モータースポーツって、やっぱり「エンジン」じゃないですか。電子はチューニングじゃない。それは、ライダーがもう勝手に遊んでって感じじゃないですか。今、電子のF1もあるんですけど、見ます、あれ? 見ないでしょ?

WJS 見ないです。
今﨑 興味ないですもん、俺。

WJS 内燃機っていうのが、醍醐味なんですか?
今﨑 そうですね。

WJS じゃあ、3年後だったらどうですか?
今﨑 3年だったら、さほど変わらないですよね。

WJS ここまでマシンが進化したら、この先、何が変わるのですか?
今﨑 それは、やってみないと分かんない。新しいRXP-Xを造ってみて、どこまでポテンシャルが上がるか。まだまだやることはある。とりあえず、エンジンとか馬力上げて、耐久性を見てるような状況だからね。


WJS 世界チャンピオンマシンを制作し完成しているのに、2021年モデルのRXP-Xをバラバラにして新たに制作するのは、もっと先を見ているからですね。
今﨑 メーカーが、レーシングタイプと発表したニューモデル。その良い部分を徹底的に取り入れる。いずれにせよ、チャレンジしなければ何も起こらない。良ければ、数年後にならなければ、完成しなかったはずのマシンが出来上がるのかもしれない。

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