9月16日(土)~17日(日)の2日間、愛知県蒲郡市のラグーナビーチにおいて、「ALL JAPAN JET SPORTS SERIES 2023 FINAL STAGE」と「AQUA BIKE 全日本選手権シリーズ(国土交通大臣杯)」の2カテゴリーのレースが開催された。
「秋」とは名ばかりのうだるような暑さのなかでのレースとなった。水面コンディションは、小さな波はあったものの大きく荒れることはなかった。
今大会は、2023年のJJSA最終レース。すでにタイトル獲得を決めた選手もいるが、この大会で勝負が決まる選手もいる。各クラスで熱いレースが繰り広げられた。
ここでは、スキークラスのうちの「Pro Ski GP」「Expert Ski GP」「A SKI SLTD」「A SKI-X SLTD」の結果を紹介する。
※年間タイトル・【 シリーズ・チャンピオン 】については、近日中に公開予定。
今大会は2023年度のシリーズ最終戦であり、年間チャンピオンが決定する。
Pro Ski GP クラスのタイトル争いは、倉橋 秀幸選手、平阪 勇助選手、海老原 祥吾選手の3人に絞られていた。
別格の走りを見せていた小原 聡将は、第1戦と第2戦を欠場しているためシリーズチャンピオン争いからは脱落している。
今、この「Pro Ski GP クラス」で戦うマシンは倉橋選手、海老原選手が乗る「FAST POWER SPORTS(KOMMANDER GP1)」が主流である。小原選手は「プロフォース3.0」を駆り、山本 陽平選手は自身が開発したオリジナルマシン「INTERCETPOR・JP1」に乗っている。
今回、小原選手は自身が開発に関わっている世界戦略艇「プロフォース3.0」のプロモーションも兼ねている。走りで「オーディエンスを魅了」する必要があった。
さらに山本選手も、「INTERCETPOR・JP1」で速さを証明しなければならなかった。この最高峰クラスには、山本選手以外にこのマシンに乗る選手はいない。それぞれが、「マシンの証明」という使命を背負って走っている。
下のクラスで勝っても、マシンのポテンシャルが優れているとは証明できない。
理由は、「最高峰クラスで勝てるマシンが、下のクラスでも勝てるマシン」だからだ。最高峰のPro Ski GPクラスで勝ってこそ、マシンの秀逸性を証明できる。
ここ数年、勝てるマシンは「KOMMANDER(現在はFAST POWER SPORTSに名称変更)」か「プロフォース」だと決まっていた。
2年前の2021年が、当時KOMMANDER GP1に乗った佐々木宏樹選手。昨年は「プロフォース2.0」に乗った平阪選手がタイトルを獲得している。
そのなかで、「INTERCETPOR・JP1」という新しいマシンで勝利した山本選手は、このクラスの歴史に新たな1ページを刻んだといえよう。
今大会、トップ争いを繰り広げたライダーたちは、皆、それぞれに「背負う」ものがあり、一歩も引けない戦いとなった。そういった内情を知る人からすれば、一瞬も目を離したくないレースであったといえよう。
日本のレースは、国際大会のような高額な賞金は出ない。だからといって、選手のモチベーションが低いわけではない。
賞金がないからこそ、「実力の証明」という"お金では買えない"もののために、心血を注いで戦うのだ。
今大会、オーディエンスの感想は「やっぱり小原選手は速い」だった。
小原選手は、予選とMOTO1で完璧なホールトゥフィニッシュと、今大会も圧倒的な速さを見せつけていた。
MOTO2もホールショット争いこそ僅差で山本選手に負けたが、2周目には追い抜いて、後続を大きく引き離してのトップフィニッシュ。
しかし、このレースの終盤でまさかのミスコースとなり、結果は残せなかった。だがその走りは「さすが世界レベル」というものであった。
順位 | ライダー名(チーム名) |
---|---|
1位 | 山本 陽平(Team YRF) |
2位 | 倉橋 秀幸 |
3位 | 桜井 直樹(#1 POUND ONE) |
4位 | 佐藤 颯志(#1 POUND ONE) |
5位 | 海老原 祥吾(CLEVER WCT) |
6位 | 平阪 勇助(KILLER Racing) |
7位 | 小原 聡将(SKU46H Racing) |
8位 | 日高 瑞夫 |
9位 | 斉藤 貴彦(UNLIMITED) |
10位 | 釘崎 勇真(Team Shindy) |
11位 | 片山 司(ZERO) |
12位 | 前澤 貴仁(AUTO SWAP.F.R) |
13位 | 山﨑 友裕(超Ponkan Racing) |
14位 | NIPATCHAROEN AKIN(UNLIMITED) |
15位 | 松浦 章人(KHKレーシング) |
16位 | 服部 和生(UNLIMITED) |
予選が3位、MOTO1が3位、MOTO2が1位で総合優勝の山本選手。
昨年のシーズンオフに新しく造ったオリジナルマシン「INTERCETPOR・JP1」で、今シーズン本格参戦した山本選手。
なぜ新しいマシンを開発したのか理由を聞くと、「昨年に作ったマシンが“コピー”と言われ、それが嫌だった」という。
本誌は昔から山本選手を見てきたが、ライディングスキルはスキークラスの中でもピカイチだと思っている。
彼の場合、「どんなマシンで戦うか?」「どういうモチベーションで戦うか?」という部分が、成績に大きく左右するように感じる。
今シーズンについては、純粋に「結果を出すことだけ」を考えていたのだろう。いろいろと悪意のある言葉をかけられていても、やれることはひとつ「勝つ」だけである。
しかし、「勝つ」と簡単に言っても、このクラスは日本最高峰のライダーが集まっている。一筋縄ではいかない猛者揃いである。
第1戦・山口大会 | 9位 |
---|---|
第2戦・琵琶湖大会 | 12位 |
第3戦・猪苗代湖大会 | 不参加 |
第4戦・千里浜大会 | 5位 |
第5戦・蒲郡大会 | 優勝 |
ニューマシンを投入した開幕戦は9位と振るわず、第2戦の走りも印象が薄い。
第4戦の千里浜大会で5位に入賞したころから、目立つ走りをしていた。
そして、今回の最終戦では見事に優勝を勝ち取った。開幕前は「INTERCETPOR・JP1は発展途上で、まだまだ完成には時間がかかる」と話していたが、戦うたびにマシンが完成形に近づいていった。
しかも今大会、全ヒートで3位以内に入っており、トータルで戦闘能力が高まっていることが実感できるものであった。
山本選手が練習をしている中部のゲレンデでは誰に聞いても「山本選手ほどテストを重ねるレーサーはいない」と口を揃えて言うほど、マシンの開発に労力と時間をかけている。
そういった努力が報われた最終戦の勝利であった。
今シーズンのPro Ski GPクラスは全5戦で、そのうちの成績が良かった4戦分のポイントでチャンピオンが決まる。シリーズチャンピオンの最有力候補であった小原聡将選手は、第1戦、第2戦を欠場しているためタイトル争いからは脱落していた。
第4戦が終わった段階で、倉橋選手、平阪勇助選手、海老原祥吾選手にタイトル獲得の可能性があった。
倉橋選手は第3戦を欠場しているので、最終戦では必ず上位に入賞しなければならない。こういうプレッシャーのかかる戦いで強さを発揮できるライダーである。
倉橋選手は予選とMOTO1で共に2位だったが、1位はいずれも小原選手であった。シリーズチャンピオンがかかっていないいない小原選手を、無理に追いかける必要もない。むしろ、確実に上位にいるほうが重要だ。
勝負が決まるMOTO2も、山本陽平選手、桜井直樹選手に続いて3位でゴール。総合2位となった。
レース全体を完璧に把握しており、ライバルがどの順位にいるかを常に確認しながら戦っている。
冷静沈着な走りで、シリーズチャンピオンを獲得したのである。
若いころから「速い」と言われ、ベテランの域に達している今でも、倉橋選手の闘争心は衰えることがない。
冷静なレース展開で、確実にタイトルを掴んだ。
まさか、予選で桜井直樹選手が敗退するとは思わなかった。しかし、ベテランで実力者の貫禄を見せつけ、敗者復活戦はトップでゴール。決勝への切符を掴んだ
MOTO1が6位、MOTO2が2位となり、総合3位の成績である。最後まで諦めない桜井選手らしいレースであった。
小原 聡将選手は、今大会も群を抜いて速くて強かった。
予選とMOTO1で勝利し、MOTO 2もトップでゴールした。しかしこのMOTO2で、「ミスコース」という痛恨のペナルティで失格となった。結果は総合7位。
圧倒的に速かっただけに残念な結末となってしまった。
小原 聡将選手は、第1戦と第2戦で欠場し、今シーズンは第3戦からのスタートである。マシンも昨年までのプロフォース2.0から「プロフォース3.0」に乗り換えた。
第3戦の猪苗代湖大会では、圧倒的な速さで勝利し世界レベルの実力を見せつけた。新しい「プロフォース3.0」も絶好調である。
前回大会の千里浜大会は、レースを中止にしても良いぐらいの大波が出たが、最終ヒートの最終ラップまでは抜きんでた速さでトップを走っていた。その小原選手を最終ラップの最終コーナーで抜き去ったのが倉橋選手である。
当の小原選手は「2位の倉橋選手に、全く気が付かなかった」と、レース終了後に語っている。
そして、今大会はミスコースで7位に沈み、総合ランキングでも7位に終わった。
小原選手にしたら想定外の結果である。12月にタイで行われる世界選手権大会の出場権すら危うくなってきた。
10月初旬にアメリカで行われる国際大会に出場するため、このレースが終わってすぐに渡米する予定だというが、いずれにしても、彼の目標はあくまでも「世界チャンピオン」である。12月にならないと今年の良し悪しは語れないが、今現在、当初の目論見とは大きく異なっていることは間違いない。
一番のジレンマが「マシンもライダーも絶好調」であるということだ。それなのに結果が伴っていない。
世界チャンピオンになる素質は十分だ。あと少し「何か」が足りない。それが満たされれば、“欲しいもの”は手に入るはずだ。
最近のトシ(小原選手)は、「走りとマシン」に関しては何の心配もありません。僕自身、世界で勝てる可能性は非常に高いと思っています。
アメリカにもタイにもメカニックとして同行するつもりですが、今からワクワクしています。
しかし、レースに関しては、「最後まで気を抜くな」と言いたい。
前回の千里浜大会では、最後に秀(倉橋選手)にやられた。今回も、ラスト2周のところでミスコースです。独走ペースで走っているので、レースが終わっていないのに「勝った」と無意識に思い込んでいるのが問題です。
イージーミスを修正して、今年は世界で勝ち切りたいですね。
惜しくも2年連続でのタイトル獲得は出来なかった。
最終戦で平阪勇助選手が優勝し、倉橋選手が3位以下なら平阪選手が2年連続シリーズチャンピオンとなっていた。
今大会の平阪選手は、予選2位、MOTO1が7位、MOTO2が6位で総合6位と残念な結果となった。これにより、年間総合ランキングも2位に終わった。
今年もホールショットにこだわり、マシンの完成度の高さを見せつけてくれた平阪選手。卓越したライディングスキルを持ち、Pro Ski GPクラスを盛り上げてくれたことは間違いない。
海老原祥吾選手にも、シリーズチャンピオンの芽はあった。ただその条件は厳しく、海老原選手が優勝して、なおかつ倉橋選手が6位以下、平阪選手が3位以下というものであった。
今大会、予選4位、MOTO1が5位、MOTO2も5位で、総合5位。総合ランキング3位に終わった。
もし、22歳の海老原選手がタイトルを獲得するようなことがあれば、このクラスの勢力図も変わったかもしれない。
桜井選手、倉橋選手、平阪選手、片山選手といったレース歴30年以上のベテラン勢が第一線で勝ち続けている以上、若手のライダーは、彼らの数倍の努力をしないと世代交代は難しいだろう。
今年は、その可能性を見せてくれただけでも感謝したいし、次世代を引っ張るライダーとして期待したい。
22歳の海老原選手が、次世代を牽引してほしい。
足元の素敵なマットは、それぞれの名前とゼッケンが入ったオリジナル。
新しい船体「ハイペリオン」を製造するタイ企業の若きリーダー、アキンニ・パチョレル選手(写真左)。今シーズン、日本のレースにスポット参戦した。小原選手(右)の走りが「憧れ」と話してくれた。
カメラマンの大村仁さん(写真左)と、倉橋選手の父・正人氏(右)。2人とも元レーサーである。
良い走りを見せてくれた服部和生選手。マシンの完成度が高まる来シーズンが楽しみだ。
予選1位、MOTO1、MOTO2が2位と、来シーズンが楽しみだ。
ベテランの塩田選手がMOTO1、MOTO2が3位で総合3位。
MOTO1が4位、MOTO2が5位。総合4位の増子選手。
MOTO1が5位、MOTO2が5位。総合7位の陣川選手。
順位 | ライダー名(チーム名) |
---|---|
1位 | 佐藤 舞旺(TEAM SPEEDMAGIC) |
2位 | 増子 隆二(UNLIMITED) |
3位 | 塩田 智晴(TEAM T5R) |
4位 | 増子 隆吉(UNLIMITED) |
5位 | 陣川 雄大(RACING TEAM JSPT) |
6位 | 志水 秀行(マリンメカニック) |
7位 | 田中 エミ(55HEAVEN) |
8位 | 上田 真利奈(Team武蔵) |
9位 | 平 晃一(F51) |
10位 | 金子 真珠(CLEVER WCT) |
11位 | 東宮 香苗(DO SPEED FR) |
12位 | 上坂 和成(TEAM seaZracing) |
予選、MOTO1が3位、MOTO2で1位。逆転優勝の三宅選手。
MOTO1が1位、MOTO2が7位。総合2位の平選手。
MOTO1、MOTO2、4位。総合3位の戸賀瀬選手。
MOTO1、MOTO2、5位。総合4位の杉森選手。
MOTO1が2位、MOTO2が9位。総合5位の鎌田選手。
順位 | ライダー名(チーム名) |
---|---|
1位 | 三宅 貴之(Racing MOTOINE) |
2位 | 平 晃一(F51) |
3位 | 戸賀瀬 満(TEAM T5R) |
4位 | 杉森 守(Racing MOTOINE) |
5位 | 鎌田 六花(SKU46H Racing) |
6位 | 鳳山 世紀(5tec) |
7位 | 佐藤 和輔(SKU46H Racing) |
8位 | 阿部 文樹(Team EAST JAPAN) |
9位 | 齋藤 恵利子(Team EAST JAPAN) |
10位 | 中島 正晴(FORCE Racing) |
11位 | 横山 亜土夢(AUTO SWAP.F.R) |
12位 | 湯島 楓(Team Shindy) |
MOTO1が2位、MOTO2が1位で今シーズン初勝利を飾った。
今大会、優勝した山中選手。
キレのある山中選手の走り。
MOTO1が4位、MOTO2が3位。総合2位の井上選手。
MOTO1が1位、MOTO2が7位。悔しい総合3位の竹内選手。
順位 | ライダー名(チーム名) |
---|---|
1位 | 山中 幸一(超 Ponkan Racing) |
2位 | 井上 祥子(Racing MOTOINE) |
3位 | 竹内 武年(Team EAST JAPAN) |
4位 | 堀口 康男(マリンメカニック) |
5位 | 新井 剛(マリンメカニック) |
6位 | 原口 正之(Team EAST JAPAN) |
7位 | 小原 奨二(TEAM M.P.S) |
8位 | 松下 哲也 |
9位 | 伊藤 寛昭 |
開幕4連勝でシリーズチャンピオンを決めた束村智史選手(写真中央)。井上雅也選手(右)と杉森 守選手(左)。
束村選手の奥様。家族の協力と応援があるから、選手たちはレースに専念できる。
暑いけど、みんな頑張って!!
チームテントが並ぶビーチ。レースの風物詩だ。
裏方でご尽力いただいているスタッフの皆さん。彼らのおかげで安全にレースができるのだ。
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