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かつて 日本は「 フリースタイル大国 」と いわれ、世界的にも トップレベルの 選手が たくさんいた。
しかし、あれほど たくさんいた フリースタイラーも 年々 減少し、今年は ついに 国内の 公式戦が 消滅。
それほど、競技人口が 減ってしまったのだ。
「このままでは、フリースタイルが終わってしまう」。それを危惧して立ち上がった選手がいる。
フリースタイラー・岡本 輝正選手が 言う。
「 自分は、世界チャンピオンになることを 夢見て フリースタイルを 始めました 」と。
きっかけは、2012年に 坂井田 和明選手が 世界一を 獲得した ことだという。
それ以来、「夢を 叶えるため 」、真っ直ぐに フリースタイルに 取り組んできた。
世の中は、パワーフリースタイルの全盛期で モンスターパワーの ハイスペック・マシンが 必要不可欠であった。
気がついたら、家が 何軒も 買えるほどの 金額を、フリースタイルに つぎ込んできた という。
そこまで 人生を懸けた フリースタイル競技 なのに、人口は 減り続け、ついには国内大会すら なくなって しまった。
この 現象は、日本だけに 限らない。
世界でも、同じだ。
◆
今年の ワールドファイナルでは、フリースタイル競技の エントリーは10名しか いなかった。
15歳の 若き 世界チャンピオンが 誕生したが、“スーパースター”と 呼ばれていた 選手は 引退していた。
これも 全て、フリースタイル競技が “ 画一化”したことに 起因する。
フィギュアスケート の ように、皆が 同じ技で 競い合うように なったせいだ。
同じ演技なら、「 一番 上手な選手しか 見たくない 」。
それが 人情と いうものだ。
今から20年ほど前までは、国内大会でも “寝技”だけで 優勝する選手が いた。
華麗なエアリアル・トリックを 抑えて 勝つのだから、 相当な 熟練の“業師”である。
そのころのフリースタイル競技は、 寝技や エアリアル・トリックが 入り混じって、 バラエティーに 富んでいた。
バレルロールが できなくても、十分に 観客を 沸かせることが できたのだ。
◆
それが 変わったのは、レギュレーションの変更で、 排気量が 上がったことだ。
マシンの パワーが上がり、技も 大技になった。
採点方法も、フィギュアスケートのように、 難易度の 高い技に 点が 入るようになった。
エアリアル・トリックが できなければ、勝てなく なったのだ。
しかし、本来のフリースタイルは、 「 観客を 楽しませる ためのもの 」 で あった はずだ。
いつからか それが、高く 飛ぶことが “すごい ”という 風潮に 変わってきた。
◆
フィギュアスケートの羽生 結弦 選手のように、ストイックで 完璧な 演技で 魅了するのも アリだが、 コントの ように、コミカルな 演技で 楽しませるのも アリだ。
オーディエンスが わいたら “ 勝ち ”で 良いのでは ないだろうか。
そのためにも、審査基準を 変えるのも ひとつの 方法かも しれない。
フリースタイルの 原点に戻って、 「 観客の 盛り上がりが 勝敗を 決める 」 。
技を極めた“業師たち”の 「 キラー・トリック 」が 正当に リスペクトされ、 それらを“見たい”と 思われなければ、 フリースタイル人口が 増える 未来が見えない。
「 このまま、競技人口が 減り続けて、 人々の 関心が なくなってから、 世界チャンピオンの 夢を 掴んでも 虚しいだけ 」と、 岡本選手は言う。
もう一度、“光り輝く フリースタイルの 時代”を 復活させるため、ボート & ジェットスポーツ 業界の 「Top of Top 」である、日本パワーボート協会・小嶋 松久 会長と、クエーキーセンス代表の 紅矢 俊栄 氏に、 フリースタイル競技の 今後について、相談することに したのだ。
パワーボート協会会長の小嶋 松久 氏は、 日本の モータースポーツ 黎明期から 現在まで、第一線で活躍している 伝説的な 人物である。
ある一定の 年齢以上で、 モータースポーツ好きなら 「 コジマ エンジニアリング 」と 聞けば、ピンと 来るだろう。
1976年、富士スピードウェイで、 日本で 初めてF1が開催されたとき、 「 国産初の F1 マシン KE 007 」で 出場し 完走。
日本のモータースポーツ史上に、さん然と その名を残した 「 コジマ エンジニアリング 」の オーナーが 小嶋氏だ。
◆
現在は、パワーボート協会 会長としての仕事が 主だが、 ジェットスポーツに ついても、並々ならぬ 尽力を してくれている。
現在、国内で行われているAqua bikeのレース および レース団体・JJSAは、パワーボート協会の 傘下である。
その 小嶋氏が、ジェットスポーツに対して、危惧を 抱えている。 それは、世間一般的に、 「 ジェットの イメージが あまりにも悪い 」ことだ。
パワーボートの大会で、ジェットが走る Aqua bikeのレースも 一緒に 開催しようとすると、 「 パワーボートは 歓迎だが、ジェットは 勘弁してくれ 」と 言われる ことが 多いという。
そのたびに 「 選手を含め、レース関係者は、 世間で言われるような 悪質な ユーザーはいない。 私が 責任を 負うので、開催させて 欲しい 」と説得をする。そのうえで、「 何か 迷惑を かけるような ことが あれば、二度と ジェットを参加させる ことはしない 」と、 頭を下げて 会場を確保してくれているのだ。
今のように ジェットのイメージが 悪化すれば、 ユーザー数が 減るのは当然だ。
それに伴い、競技人口も減り 人々の関心も 薄れていく。 そんなスポーツに“未来”はない。
◆
ジェットのイメージ回復の“キーワード”は、「 スポーツ 」だ。 “ヤカラの 乗りもの”ではなく、 「爽やかな マリンスポーツ 」という イメージが 定着すれば、世間の 評価は変わる。
そのためにも、フリースタイルのような “スポーツ”の 火を消す行為は、 断固として 阻止しなければならない。
どんなに 寒い日であろうと、一生懸命 練習する姿に、 悪い イメージを 持つ人は いないはずだ。
1980年代、まだ 世の中に440と550しか なかったころ、 フリースタイル は トップレーサーたちによる ファンサービスの 一環だった。
ジャックナイフや サブマリンといった 技を披露し、 それを見て ギャラリーが 楽しんでいたのだ。
それが、“本職”の フリースタイラーの 登場により、 技が 飛躍的に 進化したことで、 “昼休みの余興”では、なくなった。
「 レース 」と「 フリースタイル 」は、 “別の競技”として扱われるように なっていった。
しかし、「 人を 楽しませる ために 始まった 」 という 歴史は 変えようがない。
「 フリースタイルは 何のために 行うのか 」。
今だから、原点の精神を 思い出す 必要が あるだろう。
人の できない 技をする。
人が 喜ぶ 演技をする。 フリースタイルは、 「 どれだけ 人を 楽しませるか 」に 尽きると 思っている。
2000年代 前半、全日本選手権に 「進藤 邦裕」選手と いう フリースタイラーがいた。
彼の技で、私が 今でも 覚えているのが 「 ボディ・スピン・ターン 」 という トリックだ。
エアリアル・トリック でもなければ、 大きな 水しぶきが 上がるような 派手な技でもない。
走るジェットの上で、“自分だけが”クルリと一回転するというものだ。
フィギュアスケートの“1回転ジャンプ”を 想像してくれれば 当たっている。
私は、この技を 見るのが 大好きだった。
他の選手は、バレルロールのように、ジェットと一緒に 自分も回転する。
彼だけは、自分が その場で回るのだ。
始めて見たときは、何が起きたか分からず、「???」と 混乱したものだ。
2023年の今、「 この「 ボディ・スピン・ターン 」が 見たい? 」 と 聞かれたら、即答で「 はい 」と答える。
フリースタイル技のなかで、私が 今でも見たいと思うのは、 現在の主流である 超絶 エアリアル・トリック だけ ではない。
須藤 克也選手の「 モンキー・ジャンプ 」であり、 大塚 裕之選手の「 バック・ピョンピョン 」なのだ。
吉本新喜劇の ギャグのように、“何度でも見たい”と 思わせてくれる。
そういう技こそ、永遠のワンパターンで オーディエンスを 楽しませて くれるはずだ。
今のまま「 フリースタイル 」に 興味の ある人が 減り続けると どうなるのか? その答えは、「 勝手に やっとけ 」となる。
例えば、現在の 世界チャンピオンの レベルは “超”高い。
アクロバティックな 動きも 高さも、 命の 危険を 伴う 技ばかりだ。
しかし、命がけの 技に対する“対価”はどうか? と 聞かれれば、盛況だった時代と比べて、見る影もなく 廃れている。
◆
2003年に 藤澤 正雄選手 が フリースタイルの 世界チャンピオンを獲得したときは、 ゴールデンタイムの 高視聴率 テレビ番組に 出演していた。
今なら、BSテレビでも お呼びが かからない。
今年の世界チャンピオンは、間違いなく史上最強だ。
その分、かけた費用も 史上最高額だろう。しかし、それが報われていると思うかどうかは、本人でなければ分からない。
◆
すでに岡本選手は、家を 数軒 買えるほどの 資金をつぎ込み、全ての 情熱を フリースタイルに 注いでいる。
そんな彼に、「世界チャンピオン」以外の 目標はない。
だからこそ、「 フリースタイル 」が しぼむことは 許されない。
もう一度、輝きを 取り戻すことが 重要となる。
それは、本誌も 同じ気持ち だ。
過去に 輝いた「 フリースタイラーたち 」の演技は、決して 忘れていない。
今回は、ジェットの「 フード 」の 話だ。
先月号(12月号)で、クレイジーハウス の「 レーシング・フード 」 を紹介した。
同社では、他のアフター パーツ メーカーOEMを 製作しているほど、優れた 製品を 作っている。
マシンビルダーとして 高い評価を得ている 山本 陽平選手に、「 良い レーシング・フード 」とは 何かを 聞いてみた。
最も大切なことは、
●“ 水が 入らない ”こと
●“ 空気 ”が “ たくさん 入る ”こと
ジェットでは、上記の2つは 相反する 事柄なので、両立は難しいという。
そして、大切なのは
● 重量が “ 軽い ”
● 空力を考えた “ 形状 ”である。
山本選手の造る「INTERCEPTOR JP-1( インターセプター・ジェイピーワン、以下 JP-1 ) 」の フードは、彼の 理想を叶える 形状となっている。
「 レーシング・フード 」は、不思議な パーツである。
ノーマルの 純正フードしか 使ったことがない 人なら、その 素晴らしさ に驚くだろう。
交換するだけで、乗り味が 大きく変わるし、スピードも増す。
何より、見栄えがいい。
最も リスクが少なく 効果が上がる「 チューンナップ & ドレスアップパーツ 」といえる。
「 JP-1 」の レーシング・フードについて 山本選手は、「 とにかく 薄くしたかった。形や空力の 問題と、いうよりは、フードの 面積を 最小にしたかった 」と言う。
構造的な問題で、フードは重量が 増すからだ。
小さくすることで、軽くできる。
レースでは、“軽さ”はアドバンテージとなる。
果たして「 フード 」を 交換するだけで、本当に スピードが 上がるのか。
検証に使ったのは、山本選手が 実際に レースで 使っていた「 クレイジーハウス製 レーシング・フード 」と、私の「 純正 ドノーマル・フード 」である。
まず、見た目からして 全く違う。
山本選手の フードは、いかにも“ 本物 ”の 風格が 漂っている。
持ってみると 「 軽い 」。
聞けば クレイジーハウス製 フードの 重量は4kgだという。
純正フードは 約12kgだから、交換するだけで 約8kg も 軽くなる。
それぞれの フードを 装着して、最高速を 計測してみた。
この日の 水面は ドベタの 平水。
風もなく、計測には ベストな コンディションだ。
同じマシンなのに、編集部と 山本選手では 最高速度が 違った!
プロって スゴい!
予想通りというには、あまりにも“ できすぎ ”な 結果に驚いた。
純正ノーマル・フードのときは、山本選手が101km/h、私が100 km/hであった。
レーシング・フードに 交換しただけで、山本選手が102km/h、私が101 km/hと、時速1kmアップした。
エンジンも足まわりも何も交換していない。
“たかがフード”で、簡単にスピードが上がった。
フードは、船体の 一番 高い部分に 取り付けられる パーツだ。
これが 軽くなると、バランスも 変わってくる。
フードが 軽くなると、船体重量が 軽く感じられる。
“ 軽さ ”と“ 空気が たくさん入ること ”が、これほど スピードと 乗り味に 影響するとは 思わなかった。
レーサーの大半が、レーシング・フードを 装着する 理由が 良く分かった。
純正のフードは、重いうえに、空気の 取り入れ口が ない。
メーカーが 作るものである 以上、“エンジンに水が入る”という トラブルを、極力 なくすための 手段だろう。
船体と フードの“ わずかな隙間 ”から入る空気だけで、十分、走れるようになっているのが「 純正ノーマル艇 」だ。
国内外で 高い評価を 得ている マシン グラフィック デザイナー・佐瀬 崇氏( サクセススピード & グラフィックス代表 )が、このJP-1のグラフィックを 手掛けるという。
佐瀬氏は、自身がデザインした 図案を 型に 起こし、「 グラフィック デカール 」として 船体に 貼っていく。
数えきれないほどの レース艇や ノーマル艇に、デカールを 貼っている 佐瀬氏からすれば、『 アフターパーツメーカーの船体は、ほとんどの レーシング ハル が「 左右対称ではない 」 』と言う。
その佐瀬氏が、このJP-1は「 キレイな 左右対称形 」と 感心する。
これについて 山本選手は「 設計にCADを使い、それで型を 造っているので“ ゆがむ ”ことは ありません 」と 語る。
「 型 」の設計が キレイだから、FRPを張っても キッチリとした キレイな製品が できるのだ。
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