一年を締めくくる国際レース「 JET SKI WORLD CUP 」が、2023年12月14日~17日の4日間、タイ・パタヤで開催された。
今大会、有名・無名を問わず、Pro Runabout GPクラスで「世界チャンピオン」を目指す多くの選手たちが、マリンメカニック製の「GA-CO(ガーコ)」に乗っていたことは、注目すべき点だった。
また、Pro SKI GPクラスで優勝したケヴィン・ライテラー選手は、長井 崇氏(ナガイデザイン)が、デザインとペイントを手掛けたヘルメットで参戦。
元プロランナバウトの世界チャンピオンのジェームズ・ブッシェル選手は、自らコンタクトを取り、ペイントを依頼した、ヒロキックス・デザインの佐々木宏樹氏のヘルメットを被っていた。
この大会で頑張っているのは、日本人ライダーだけでない。表に出ないところでも、各分野の日本人スペシャリストたちが活躍しているのだ。
ヤマハ製 スポーツ ボートの フラッグシップ「 275 SDX 」は、ハンドルを 握ったまま「 横移動 」できる 画期的な モデルである。
上級者にとっては “あれば便利”な 機能 かもしれない。
しかし、ボートに 慣れていない ビギナーには、「 救世主 」ともいえる 存在だ。
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一般的に、ボートは「 横移動 」が できない。
桟橋への 着岸を 見るだけで、操船しているのが 初心者か ベテランか が ひと目で 分かる。
普通、桟橋などに 着岸するとき、前進や バックを 駆使して、徐々に 近づいていく。
このとき、さっと 接岸できれば いいが、微妙に 桟橋から 遠かったり 行きすぎたりと、もたもた することも ある。
他に 待っている ボートが いれば、どこから ともなく「チッ」という 舌打ちが 聞こえてくる。
しかし、「 横移動 」できる というだけで、「 桟橋への着岸 」という ハードルが、ものすごく 低くなる。
「 275 SDX 」の 特筆すべき 点は、ステアリングから 手を 離さず、ボタンひとつで「 横移動 」できる「 DRiVEX( ドライブ エックス )制御システム 」の 存在である。
これは、2022年 モデルで 好評だった、ヤマハ独自の パドル コントロール システム「 DRiVE( ドライブ ) 」を 進化させたものだ。
第一世代では「 DRiVE 」の パドルでの 「前進 / 後進 機能 」 であった。
「 DRiVE X 」では「 横移動 」だけでなく、「 その場 回頭 」「 艇体を押し付け続け、桟橋から離れなくなる 」などが 可能となっている。
ステアリング スイッチの 左右に 設置された ボタンを 押すことで 作動する。
ボタンを 押している 間だけ、一定の 推力が 発生して 船が 動く。
シンプルで 直感的な 操作方法である。
ステアリングから 手を 放すことなく、親指だけで スイッチが 操作 できるので、安全性も 高い。
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さらに 操縦者を サポートする 機能として、「 桟橋 ホールド 機能( ドック ホールド ) 」を 装備。
桟橋側に 推進力を 掛けることで、ボートが 接岸した 状態のまま 動かない。
静止した 状態でも、船が 桟橋から 離れることが ないので、乗下船や 係留作業が 楽になる。
また、左右への 横移動だけでなく、「 ピボット ターン 」を使えば、「 その場 回頭 」が 可能である。
方法は簡単。「 ピボット ターン 」ボタンを 押して、左右 どちらかに ハンドルを 切れば、その 場で 旋回してくれるのだ。
前進・後進を 使うことなく、その場で 方向転換 できるので、狭い場所 でもまわりに 迷惑が かかることがない。
船で 一番大変なのが、離着岸や その場での方向転換である。
この「 DRiVE X 」機能のおかげで、初心者でも 難なく “ 苦手な操作 ”を 克服できるのだ。
ジェットなら 桟橋への 着岸も 慣れているが、ボートに 乗る 機会は めったにない。
当然、桟橋への 着岸は 不得手だ。
ヤマハの スタッフから、「 DRiVE X 」の 使い方を 教えてもらい、早速「 横移動 」に チャレンジしてみた。
◆
まず「 DRiVE Xモード 切り替え スイッチ 」を 押して、RUNNING モード から、DRiVE Xモードに 変える。
左側に 桟橋が あれば、左手の 親指で「 ポートサイド・横移動 」スイッチを 押す。
右側に 移動したければ、右手の 親指で「 スターボードサイド・横移動 」スイッチを 押す。
たったこれだけで、船が 平行に 移動し 始める。
例えば、前後に 船が 係留して おり、その間にしか 係留場所が なかったとしても、横移動を 使えば「 スルスル 」と 間に入って 行ける。
クルマの 縦列駐車よりも、 楽に 係留できるように なるのだろう。
ハンドルでの 微調整は 必要だが、今まで 何度も 切り返しながら 着岸していた 苦労に 比べたら、苦でも 何でもない。
思わず 私は、 にんまり してしまった。
「 これで もう、着岸で何度もや り直さなくてすむ 」と。
◆
ベテランのボート 乗りは、「 一発で 桟橋に 着岸が 出来なければ 下手くそ 」「 その場で 船の旋回ができない うちは 素人 」と自慢気に 言う。
しかし、「 DRiVE X 」が 登場した おかげで、その アドバンテージが なくなってしまった。
それにしても、「 ボートが 真横に 動かせる 時代 」が来るとは、とても 予想できなかった。
この「 DRiVE X 」システムが、これからの 船の スタンダードに なるのだろう。
全長 | 8.2m |
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全幅 | 2.76m |
完成質量 | 2,632kg |
定員 | 13名 |
搭載エンジン | 1,812cc Super Vortex High Output Engine×2基 |
エンジンタイプ | 4ストローク4気筒 |
搭載馬力 | 183.9 kW(250PS)×2 |
燃料タンク容量 | 340L |
使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
メーカー希望小売価格 (消費税別) |
3,196万5,956円 ( 税・法定安全備品類他価格を含む ) |
「 DRiVE X 」は、これからのボートのスタンダードになるだろう。
「 シーバードジャパン( 以下、シーバード ) 」という団体を ご存じだろうか。
簡単にいえば、『 「 ジェット 」を使って“社会貢献”を行いたい 』と 望んでいる 全国各地の 団体に 対し、ジェットを配備してあげる。
それを 活用するための 講習を行うなど、全国の 拠点を 統括している 組織のことである。
一般的に「 シーバード 」といえば、「 ジェットに 乗って、海で パトロールを している人 」「 水辺の イベントで レスキュー活動を している人 」と 思われがちであるが、実は、その活動は多岐にわたる。
隊員は、ジェットユーザーだけでなく、会社員、消防士、ライフセーバーなど、さまざまな職業・顔を持つ“普通の 人たち”で構成されている。
ジェットを使って、「 海を 自分の手で 守りたい 」「 安心して 遊べる 楽しめる 水辺にしていきたい 」という 願いを 持った「 人たち 」が、「 ボランティア 」で 活動している“心ある 人たち”の 集まりなのだ。
毎年、年1回・全国2カ所で、「 シーバード Japan カレッジ( 以下、シーバードカレッジ ) 」という、シーバード拠点に登録している 隊員の“勉強と 意見交換”の場が 持たれている。
『 「 シーバード隊員 」として、「 人 」として、気付き・学びと 成長と コミュニケーションの 場 』がテーマ である。
基本的な内容は、本年度の活動総括と 来年度の活動方針、講演会、拠点の活動発表だ。
今年は、11月9日( 木 )、10日( 金 )に「 西日本大会( 福岡県 福岡市 ) 」、同月16日( 木 )、17日(金)に「 東日本大会( 北海道札幌市 ) 」が 行われた。
最初に、会長の 竹長 潤 氏から「 シーバード ジャパンの2023年の 活動報告と 2024年の 活動方針 」が 報告された。
シーバードの活動の 柱の一つである 親水イベント「 シーバードデイ 」は、今年、全国29カ所の 拠点で44 回 行われており、4200人以上の 参加者を 迎えている。
◆
2013年に 活動を 開始した シーバードは、今年、10年目の 節目である。
現在、シーバードの 拠点は 全国で55カ所。
「 10年目の節目となり、今年は 隊員が60名近く 増えて 521名が 活動している 」。
「 一緒に 活動している 人が 増えているのは ありがたい 」と 竹長会長が 語っていたように、2023年は、高知県の 土佐と、兵庫県 明石市で 新たな シーバードの 拠点が 開所し、着実に 活動を 広げている。
10年間 活動してきた 中で、今、シーバードが“切実な 問題”と している事案がある。
それは、「 次世代の 人材確保 」だ。
各拠点の 隊員数で 一番多いのは 「 6~10 人 」 で 全体の 51%を 占める。
隊員数が 「 11人 以上 」になると 約30%、「 5人 以下 」が20% である。
年齢層は、30代~40代が6割と最も多く、最年少は17歳、最高齢は71歳だという。
このまま何もしなければ、高齢化が進むことは目に見えている。
「 若者の海離れ 」が 取り沙汰される現在、若手の 人材確保は 急務である。
そのための 対策の ひとつとして、特殊小型船舶免許の取得に 際し、10~30代の 取得 希望者には 4万円の サポートを 行っている。
さらに、レスキューに 関する 資格取得でも、費用の一部を サポートする 制度もある。
しかし、ジェットを持っているユーザー であっても、シーバードが こういった 活動を していることを 知らない 人が 多い。
一般の人なら なおさらだろう。
「 地域 社会にとって、なくてはならない 唯一無二のプレゼンス 」と 竹長氏が 語るように、今後は、「 シーバード 」の活動を、より広く 認知して もらうことも 重要だろう。
今回、「 シーバード カレッジ 」では、2日間で 5つの 講演が 行われた。
そのなかで 最も印象に 残ったのが、日本財団・野本 圭介氏 の「 水辺の 安全に 係る これまでと これから に ついて 」と いう 講演であった。
講演内で 語られたのが、『 海難事故の81%が「 ヒューマンエラー 」によるもの 』だ と いうこと。
見張りの 不十分や、不適切な 操船、機関故障など “船長”である ドライバーが 気を付けていれば“防げた” もの ばかりである。
野本氏の 話を聞いて、非常に 納得した。
今年の夏は3年ぶりに 移動制限が 解除されたこともあり、多くの人が、海や川、湖といった水辺に 出かけ、その結果、水難事故が 多発している。
我々ジェット関連でいえば、「 ジェットの 事故原因 」は、圧倒的に「 技量不足 」によるものであった。
友人同士による衝突 事故だけでなく、単独の“自滅”事故も多かった。
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ジェットは、「 俊敏さと機動力 」に 優れ、水辺の レスキューに 最も 適している 乗り物だ。
高いライディングスキルを持つ 操縦者が乗れば、船では 走れないような 荒波の中でも、自由自在に 行動できる。
本来であれば、「 同じ 水面に ジェットがいることが、人々の 安心に 繋がる 」乗り物の はずなのに、肝心のジェットに乗るユーザーが「 技量不足 」では困る。
技術は 進化しているが、それを 使う人が お粗末では 話にならないのだ。
「 人を 育てる 」ことが、水辺の安全を守るために 最も 必要であると 感じた。
これからの10年「 新しい シーバードの 歴史を 築く 楽しさ 」「 水辺で 楽しむ人たちを 幸せに できる 喜び 」「 子供たち、みんなの 憧れの 存在になる 」活動方針・報告の 最後に、竹長会長が 語ったこの 言葉が、シーバードの 役割を 端的に 表すものであった。
年1回、2つの会場で 行われる「 シーバードカレッジ 」は、会の 理念を 再確認する いい機会と なったのではないだろうか。
「 Hello!! 久しぶり。いつも インスタで 君のデザインを見ていたよ。ぜひ、僕の ヘルメットを 塗ってほしい 」。
ある日、突然、佐々木 宏樹 氏に、メールが 入ったという。
メールの 送り主は、「 ジェームズ・ブッシェル( James Bushell ) 」。
イギリス出身の 元ランナバウト 世界チャンピオンである。
◆
ジェームズ・ブッシェル選手は2011年の ワールドファイナルで 彗星のように現れ、ダスティン・ファージング 選手、クレッグ・ワーナー 選手といった 絶対的な速さを誇る ライバルたちを 抑えて 勝利を 飾った。
それまで、世界では 全く 無名だった ブッシェル選手が 乗っていたのが、“ 翌年に発売される ”「 RXP-X 」だったことにも 注目が 集まった。
翌年の2012年も ワールドファイナルで 勝利し、2014年、2015年は タイで 行われたKing’s Cupで タイトルを 獲得したことで、名実ともに世界的な トップライダーの仲間入りを果たしている。
ブッシェル選手からの リクエストは、「 イエロー、ブルー、グレー、の 3色を 使って ほしい 」。
それ以外のデザインは、全て「 お任せ 」と いうことだった。
そこで、ブッシェル選手の 出身地・イギリスの 国旗「 ユニオンジャック 」をデザインに 組み込んだ。
最も特徴的なのが、後部に書かれた「壱( 1 )・伍( 5 )・捌( 8 ) 」という 漢字 である。
これは ブッシェル 選手の チーム「 158 Performance 」から、ひらめいたものだ。
この「 1 5 8 」を デザインに入れるに あたり、漢字ではなく 別の 書体も 用意していた。
ブッシェル選手に、この「 壱・伍・捌 」という 漢字と、ローマ数字で 作った デザインを作り、「 どちらがいいか? 」と 聞いたところ、すぐに「漢字で」と返事が来た。
欧米では、日本の漢字が「 クール 」という “美意識”がある。
佐々木氏は このヘルメットを、「 WGP#1 WORLD CUP 」の 会場で、直接、ブッシェル選手に 手渡すそうだ。
この ヘルメットを 被って 走るブッシェル選手の 雄姿が、今から 楽しみである。
「 梅に ウグイス 」。
花札でも おなじみの 絵柄である。
梅は、春先に 最初に 花をつけ「 春を告げる 花の代表 」である。
ウグイスは、別名「 春告げ鳥 」ともいい、その鳴き声を 聞くだけでも 幸運が 訪れると 言われるほど 縁起の 良い鳥だ。
日本人にとって「 梅とウグイス 」は、昔から「 お似合いの 組み合わせ 」として 愛されてきた。
このヘルメットの オーナーが「 梅原 」選手と いうことで、縁起の いい ウグイスと かけているのだろう。
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