ジェットの上級者は、9月になった今から遊ぶ。もう秋、誰もいない海だ。高性能ジェットで、思う存分走り回れる。これからが、本当のジェット乗りの季節と言えよう。
何が良いかと聞かれれば、今から海水浴場に行ってもビキニのお姉さんなどはいない。マナーの悪い水上バイクと間違えられることはない。
人は見た目で判断する。第一印象は大事なのである。考えてみたら、過去の映像を探しても、「フル・ドライスーツ」を着た”悪質水上バイク乗り”の映像などは見たことがない。悪者は「ハーフパンツにラッシュガード」が定番ファッションなのだ。
9月に入って、めっきり涼しくなった。先月までの暑さが嘘のようだ。 秋からの必需品は、「ドライスーツ」と「ツアーコート」。
「寒さ」は、せっかくの楽しさを「ツラさ」に変えてしまう。だからこそ、快適な防寒アイテムを揃えることが大切なのだ。
「ドライスーツは冬のもの」という考えは間違いだ。
私は職業がら、一年中ジェットに乗っているが、本当に暑い夏の2~3カ月以外は、必ずドライスーツを準備して持って行く。
特に、秋は要注意だ。1日の中で、気温の変化が激しい。午前中は真夏のような気温でも、昼過ぎから急に寒くなったりすることもある。ウェットスーツだけでは、心もとない。
暑いときは、ウェットスーツのファスナーを降ろして体温を下げたり、汗をかいた分、水分をこまめに補給するなど、対処法はいろいろある。 しかし、寒さはどうしようもない。
以前、あまりに寒くて「具合が悪くなる」という経験をしているので、そのツラさは身をもって体験している。 暑くても死にはしないが、寒いのは、確実に体調を崩す。
ウェットスーツに比べ、ドライスーツは値段が高い。それは確かにそうである。値段を見て、購入を躊躇する人も多いと思う。
しかし、これほど費用対効果の高いアイテムはないと思っている。何しろ、一年のうちの8割はドライスーツを着ているのだ。私からすれば、ウェットスーツのほうが、費用対効果が悪い……。
ドライスーツを買うときのアドバイスとして、「ジェット専用の一流ブランドの商品を買う」。これに尽きる。
理由は、ドライスーツを買う最大の理由が寒さ対策だからだ。サーフィンブランドからもドライスーツは出ているが、ジェットに乗ることを想定した原型ではないので、必要な部分の補強がなかったりする。だから、他のスポーツのドライスーツは買わない方がいい。
気を付けたいのが、今からの季節に多い「ジェットショップの格安セール」だ。夏のシーズンが終わり、来年度モデルを仕入れる前の在庫一掃セールだと、「前から欲しかったドライスーツ」が「半額」で売られていたりする。もちろん、自分に合うサイズがあれば「即買い」だ。
問題は、「自分の体にはぎりぎり入るか入らないか……」という微妙なサイズの場合。「もうちょっと痩せれば入る」という、希望的観測のうえでの衝動買い。あとで後悔する「典型的なパターン」となる。
編集部でも、この「誘惑」に負けて、高い授業料を支払ってきた者が何人もいる。値段に負けて、ついつい買ってしまう。絵に描いたような「安物買いの銭失い」である。
「寒いのは許せない」と冒頭で書いたが、「キツい」のも許せない。
いくら寒い日でも、キツいドライスーツは途中で脱ぎたくなる。そして、脱いだ瞬間、ものすごく「自由で幸せ」を感じる。そして、こう思うのだ。「もう2度と、このドライスーツは着たくない……」。
不快な記憶は忘れない。結局、体の小さ友人や後輩にあげておしまいなのである。それなら、はなから、自分のサイズのドライスーツを購入したほうがよっぽど安くすむ。
例えは悪いが、「ドライスーツは素材が命。パソコンやスマホと同じで、最新モデルが一番いい」。ドライスーツは、化学繊維で出来ている。コットンやシルクのような天然素材なら、それほど大きな違いはないが、化繊は年々、驚くほど進化している。
スマホを思い浮かべて欲しい。10年前に10万円だった「当時の高性能モデル」より、現行の1万円で買える「普及モデル」のほうが性能がいい。それと同じで、最先端のドライスーツ素材の快適さは、10年前とは比べようもないくらい、動きやすくて温かい。
よくある質問が、「ドライスーツを購入するとき、どのサイズを選べばいいか悩む」と言われる。
体にジャストフィットするほうがいいのか、ルーズフィットのほうがいいのか?
私の意見からすれば、あまりにキツすぎて動けないのは論外だが、最新モデルなら、「ルーズフィットでも十分に快適」である。極端な話をすれば、「ガバガバ」でも、不都合はない。というか、十分に温かい。
なぜかといえば、生地と皮膚の間で温度が保たれるようになっているからだ。ドライスーツのイメージから考えると、「体に密着していなければならない」と考えてしまうが、実は、ブカブカでもさほど温かさは変わらない。「小さめのサイズのほうがフィットして温かいのでは……」と考えて、後悔しているビギナーをたくさん見て来た。むしろ、ルーズフィットで動きやすい、少し大きめを購入した方が、後悔はない。
ドライスーツを着ると、「バットマン」になった気分になる。いきなりそう言われても、何のことか分からないかもしれないが、まさにそんな気分になるのだ。
誰もいない、寒風吹きすさぶ朝一番のマリーナの駐車場で、「このクソ寒い中、何が嬉しくて、俺はわざわざ水に入るんだ?」と自問自答する。「やってられない」と、ビギナーのころはよく思っていた。
しかし、今は違う。これから、自分の身に起こることが分かっているからだ。
クルマから降りて「寒い!!」と感じたら、考えることはただひとつ「とっととドライスーツに着替えよう!」である。
人間も動物も、寒いと動きが鈍くなる。「猫はコタツで丸くなる」だけでなく、寒い冬の朝なら、人間も布団で丸くなりたい。
その怠惰な気分を、一発で吹き飛ばしてくれるのが、「ドライスーツ」なのだ。
寒さが消えると、とたんに私は動き出したくなる。これは、個性か本能か……? 「ドライスーツを着るだけで、俺は強くなった!」。まさにバットスーツを着たバットマン状態。これでもう、落水しようが、雪の上を転げまわろうが怖いものはない。寒さから解放された自分は、たまらなく自由になった気分。体が温かいだけで、何でもできる気になってくるのだ。
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