シードゥ「RXP-X 300」は、2021年の目玉モデルのひとつである。3人乗りランナバウト全盛のこの時代に、わざわざ1人乗りを「ニューモデル」として造り上げてきたのだ。この水上バイク(以下、ジェット)を自ら所有する、世界チャンピオン・砂盃 肇プロの率直な感想を聞いた。
2021年モデルの「RXP-X 300」の最大のポイントは、『極限まで進化させた「T3-R」ハル』である。従来までの「T3ハル」を改良し、さらにパフォーマンスを上げてきたという。
今回のモデルチェンジでは、エンジン、ポンプといった運動性能を求めるためのパーツに変更はない。船体を始めとするハル関連の変更のみである。
今回、シードゥが行った「エンジン出力を上げず、ハル形状を進化させることでトータルで戦闘能力を上げる」のは、レースの世界では最もスタンダードな方法である。
エンジンと燃料タンクのレイアウトを見直すことで、重心を5cm前方に変更した。船底の中ほどに、サメのエラのような「シャークギル」という凹凸がある。普通、「レースで勝つための究極の船体形状」は、形状の複雑さや、求められる精度などから量産するのは難しい。しかしシードゥは、その複雑な形状の船体の量産に成功したのだ。
今回、1人乗り設定ということは、確実にレース志向のユーザーのためのジェットといえよう。
船体形状は、従来から抜群のコーナリング性能で定評のあるV型ハルの切れ込みをさらに鋭角にした「ディープV型」を採用。これにより、より正確なトラッキングができるようになった。
2段階形状となったV型ハルは、低速時には安定性を、高速時には波を切って走ってくれる。
何といっても特徴的なのが、船体の中ほどに作られた凹凸「シャークギル(サメのエラ)」である。これは、水ではなく「空気の整流」を行うものだという。
走行時、船底が少し浮くため、下に空気が流れるような状態で、ハルの脇に乱流が発生する。シャークギルがこの空気の流れを整え、コントロール性や高速での旋回時の安定性が向上するのだ。
これが最も「メーカーの快挙」と呼ぶべきものだろう。従来の船体にはないものだけに、どれくらいの効果が体感できるのか、試乗が楽しみな部分だ。
スポンソンの形状も変更し、予測可能なタイトなターンが可能となった。
全長 | 3,318mm |
---|---|
全幅 | 1,250mm |
全高 | 1,110mm |
エンジン | Rotax Engine 1630 ACE-300 Supercharged with external intercooler |
最大馬力 | 300hp |
排気量 | 1,630cc |
乾燥重量 | 354kg |
燃料容量 | 70 ℓ |
カラー | Midnight Purple(ミッドナイトパープル) Millenium Yellow(ミレニアムイエロー) |
定員 | 1名 (アクセサリーのタンデムシートを装着し、登録することで、定員を2名とすることが可能) |
価格 | 2,390,000円(ミッドナイトパープル) 2,360,000円(ミレニアムイエロー) |
砂盃肇(いさはい・はじめ)
【Profile】
1970年10月30日生まれ。群馬県出身。
【主な戦歴】
2003年 JJSFプロランナバウトクラス年間チャンピオン
2004年 JJSFプロランナバウトクラス年間チャンピオン
2005年 JJSFプロランナバウトクラス年間チャンピオン
2010年 JJSFプロランナバウトクラス年間チャンピオン
ワールドファイナル・GPランナバウトクラス 総合2位
2011年 JJSFプロランナバウトクラス年間チャンピオン
2013年 JJSFプロランナバウトクラス年間チャンピオン
2017年 JPBA AQUABIKE JAPAN CUP GPランナバウトクラス年間チャンピオン
2018年 JET SKI WORLD CUP GPランナバウトクラス世界チャンピオン
JJSFプロランナバウトクラス年間チャンピオン
JPBA AQUABIKE JAPAN CUP GPランナバウトクラス年間チャンピオン
2019年 JJSFプロランナバウトクラス年間チャンピオン
JPBA AQUABIKE JAPAN CUP GPランナバウトクラス年間チャンピオン
2020年 JJSFプロランナバウトGPクラス年間チャンピオン
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