「フリースタイルの楽しさは何ですか？」。「フリースタイルに人生を懸けている」ような、フリースタイラーたちに問いかけた。正直な答えの中に、それぞれの考え方が明確に表れていた。
ジェットスキーには、これほどまでに人生を変える力があります。魅力に満ち溢れた、フリースタイラーの「生の考え」をお楽しみください。
TECHNICAL全日本選手権大会参戦中の城 顕彰選手。WJS 城選手にとって、「フリースタイルの楽しさ」とは何ですか？
城 「できないことが、できるようになること」です。
WJS 軽量船体が全盛のこの時代に、ノーマルのスーパージェットで戦われています。失礼ですが、あのマシンで、あれほどの技ができることに、いつも驚かされます。
城 僕は、この路線で行くと決めています。それも、上を目指せば楽しいですよ。
WJS ノーマルのスーパージェットに、あといくらかければ、このマシンが造れるのですか？
城 ノーマル艇のエンジン排気量は700c。このマシンのエンジン排気量は850ccですが、100万円もかからない。100万円あれば、もっと良いエンジンができます。
WJS 城選手のような、キレイなバレルロールをしたいと思ったら、どうすればいいですか？ 何かコツがあるのですか？
城 そこは練習です。練習しかありません。できないことができるようになる「喜びと苦しみ」が、フリースタイルです。僕も、競技には出ていますが、単なる勝ち負けだけじゃない。「自分に勝つ」じゃないですが、ノーマルマシンでも、これだけできるというのを見てもらって、フリースタイル人口が増えれば嬉しいです。
TECHNICAL全日本選手権大会参戦中の高須武寿選手。WJS 高須選手にとって、「フリースタイルの楽しさ」とは何ですか？
高須 今は、ちょっと言えないですね。
WJS どうしたのですか？
高須 ここ2年大会に出られない状態が続いて……。購入したマシンの関係で今まで参戦できなかったけど、今年、3年目にして、ようやく出られるようになりました。
WJS 以前からフリースタイル大会で見かけていましたが、フリースタイルは、いつから始めたのですか？
高須 23歳から初めて、今、39歳になりました。最初はプロフリースタイラーになりたい一心で、がむしゃらにやってきて、いざプロになったら、「ハイパワーマシンに乗らないと勝てない時代」がやって来た。スランプも、たくさん経験しました。今、「自分にとってのフリースタイルの楽しさ」は、「勝つこと」です。勝ちたいです。
WJS 「楽しさ」のなかに、「できないトリックが、できるようになった」というのは、ないのですか？
高須 そういう時期は、もう通り過ぎました。今は、勝ちたい。最近は、練習でも乗るのが楽しいというより、「苦しい」と感じることのほうが多いです。真剣に競技と向き合ったら、「楽しい」と思うことはなくなると、僕は思います。今の苦しさの中にも、楽しいことがあるから続けているのだとは思いますが、言葉にできません……。
WJS では、フリースタイルの楽しさは、「苦しみが、楽しい」という感じですか？
高須 うーん……。真剣にやれば、その言葉しか出てこないです。
WJS 「これは、観客に見てほしい」というトリックはありますか？
高須 そうですね。ずっとバレルロール一筋でやって来たので、バレルロールを見て欲しいです。
WJS バレルロールは、そんなにも奥が深い技なのですか？
高須 正直なところ、「バックフリップ」は、マシンが良ければ、誰でもできます。でも、バレルロールは違います。
WJS ギャラリーは、バレルロールのどこを見れば良いのですか？
高須 今のショートハルのマシンでやるバレルロールは、「ヘリコプター」という技の動きに近い。そうではなく、昔と同じような「飛距離、形、動き」という部分にこだわっています。具体的に言うと、「逆さまになって回転しなければ、本来のバレルロールとは言えない」と思っています。横回転だけでも、細かく回って後部が上るので、なんとなくバレルロールに見えてしまう。だけど、キチンと逆さまになったバレルロールにこだわりたい。
WJS バレルロールの姿勢に、そんな違いがあることを知りませんでした。
高須 僕が言うのも生意気ですが、よく見ていると、今、キチンとしたバレルロールができる人って少ないです。今のマシン、でキチンとしたバレルロールをするのは、本当に難しいんです。
